台湾人学校の歴史教科書禁止 「主権主張」 中国が圧力

http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070226/chn070226002.htm


内政干渉」政治論議

 【香港=長谷川周人】台湾企業が多く進出する中国広東省の東莞市内にある「台商子弟学校(台湾人学校)」で、台湾から取り寄せた改訂版・高校歴史教科書が、中国当局から使用を禁止されたことが分かった。台湾の主体性を強調し独立色がにじむ新教科書は、「一つの中国」を原則とする中国は受け入れられないとの判断とみられる。だが、「事実上の主権」を主張する台湾は、「内政」である教科書問題への干渉は容認できない立場にあり、今後、中台間で政治論議を呼ぶ可能性もある。

 台湾では昨年9月に始まった新学年から、高校1年生が学ぶ歴史教科書を大幅に刷新。中国大陸の「中国史」と「台湾史」を切り離し、今年2月までの前編では日本による台湾統治のプラスの側面にも言及した「台湾史」を学び、春節旧正月)休暇明けの26日に始まった後期では「中国史」を取り扱う。

 その後編では、「わが国」「本国」といった表現は「中国」に統一され、「中華民国の父」という意味で使われた孫文の「国父孫中山」という表記については敬称の「国父」が削除された。南京大虐殺」に関する記述も圧縮され、一部教科書では完全に消えた。辛亥革命の発端となった武昌での「武昌起義(蜂起)」は「武昌起事(一揆)」と改め、政治色を排して、より独立志向を強める内容となった。

 だが、学校関係者の話を総合すると、広東省当局は検閲の結果、同校が取り寄せた龍騰文化が出版した教科書は「記述の立場が偏重しており、台湾の独立思想が大幅に増えた」と判断。台湾の主権問題が微妙に絡む記述を問題視し、今年1月、他の教科書に替えるよう通告してきたという。