北京で立ち退き拒否の住宅破壊、謎の集団が次々と

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070513i202.htm

 【北京=杉山祐之】2008年の五輪開催を前に市街地再開発が急速に進む中国の首都・北京で、最近、立ち退き拒否者の住宅が、正体不明の男たちに襲われ、破壊される事件が相次いでいる。

 名前を名乗らない集団の犯行で、暴力的な立ち退き強要を厳禁する政府の規定など関係ないかのように、家を壊し、住民の生活を奪う。北京の再開発の「暗部」を象徴する事件と言えそうだ。

 8日午前2時過ぎ、開発予定の更地の中に島のように残る北京市街北部の集落が襲われた。「1平方メートルあたり3500元(約5万3000円)」の補償金に同意せず、2003年から立ち退きを拒み続けていた住民と、長屋式の平屋住宅を間借りする出稼ぎ農民(民工)の計数十人が住んでいた。名乗らぬ男たちが、6世帯分の部屋から寝ていた人々を引きずり出すと、ショベルカーがでてきて家財道具ごと家をつぶした。

 翌9日午前3時ごろ、今度は「20歳代くらいの男60、70人と重機5台」(住民)が侵入。残っていた26世帯分の家屋数棟を5分ほどで壊して立ち去った。

 居間だけが残る家屋は、もはや家ではない。ベッドも服も食器用洗剤も、がれきの下にあった。「高校の寮にいる娘はまだ、このことを知らない。帰ってきたら泣くだろう」。失業中の元国有企業従業員(46)は肩を落とし、「これからどうしよう。雨が心配だ」と話した。民工たちは野宿していた。

 開発業者、立ち退きを受け持つ業者は、中国報道機関に対し、事件への関与を全面的に否定している。

 「新京報」紙は12日、警察が家屋破壊にかかわった黒竜江省籍の無職の男1人を拘束したと報じた。「何者かに事前に金を渡された」と話しているというが、事件の真相は依然不明のままだ。

 一方、市中心部でも4月、開発が予定される更地の中で立ち退きを拒んでいた家が壊された。夫(80)を介護しながら、1930年代から一家が住むという古い家屋を守る女性(52)は、「名乗らず、何の文書も示さず、壊し始めた。本当に恐ろしい」と話した。

 住めるだけの部分はかろうじて残ったが、これからどうなるか分からない。女性は「うちは文化大革命で何もかも失った。そして今度はこれです。主人は中国革命に参加し、朝鮮戦争にも行ったのに……」と言うと、こらえきれずに泣いた。

 別の地区のアパートでは、住民が「夜中に外で大声を上げて脅す男たち」におびえている。

 中国では、市街地再開発事業の多くは、土地を提供する地元当局と金を出す開発業者の共同作業で行われ、両者が癒着しているケースも多い。このため、こうした事件を目にする多くの市民は、「当局への不信」も募らせている。

(2007年5月13日10時29分 読売新聞)

中国で地上げ屋ですか。なんか末期症状のような…