「イラン核開発計画中断」 米報告書「03年秋に」 

http://www.asahi.com/international/update/1204/TKY200712040042.html

 イランの核兵器開発疑惑に関して、米中央情報局(CIA)など米政府の情報機関が3日、「イランは03年秋から核兵器計画を停止しているとみられる」などとした機密報告書の結論部分を公表した。ブッシュ政権が主張してきたイラン核計画の脅威の緊急性とはかけ離れた内容で、05年に米情報機関が出した同様の分析報告よりも表現が後退している。

 イラン核問題でブッシュ政権は、外交解決をめざすと繰り返しつつ、10月には大統領自身が「第3次世界大戦を防ぐにはイランの核開発を許してはならない」と発言するなど、将来の軍事作戦に含みをもたせてきた。今回、イランの核は危急の脅威ではないとの判断が示されたことで、武力行使への傾斜には当面、歯止めがかかるとみられる。国連安保理での対イラン制裁論議にも影響を及ぼしそうだ。

 報告書は米政府の各省庁にまたがる16情報機関が、外交安全保障の主要課題について総意をまとめる「国家情報評価」(NIE)として11月に作成。「高い信頼性」つきで、イランは03年秋から核開発を停止している、と結論づけた。現在も核開発の意図があるかは「不明」としつつ、07年半ばの段階で計画は再開されていない見込みは「中程度の信頼性がある」と分析した。

 一方で報告書は、原料となる核分裂物質を入手するためのウラン濃縮計画について、イランが核弾頭1個分を生産できる技術水準に達するのは「最速で09年末」としつつ「それも非常に考えにくい」と指摘。中信頼度で「10年から15年にかけて」と予測した。
 05年の報告書では、2000年代の終わりまでに核弾頭1個分に必要なだけの核分裂物質を生産する可能性がある、と警告していた。

 また、イラン政府の核開発に向けた決意は、米情報機関が05年以来推定してきた水準よりも弱い、とした。イランが核開発を遅らせた背景としては「政治、経済、軍事的コストを無視して核兵器入手を急ぐ姿勢ではなく、損得勘定に基づく決定がある」と推察した。

 ハドリー大統領補佐官(国家安全保障担当)はこれを受けて記者会見し「全体的に見れば我々にとってよい知らせだ。我々がイランの核開発に懸念を抱き、外交圧力を高めてきたのが正しい戦略だったことを示している」などと反論した。

これは今までのアメリカの主張を否定するような結果ですね。時事通信でも同様の報道あります。
イラン、03年に核兵器開発停止=ウラン濃縮に問題も−米国家情報評価http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071204-00000030-jij-int

 【ワシントン3日時事】米中央情報局(CIA)など16の情報機関は3日、国家情報長官室を通じてイラン核問題に関する国家情報評価(NIE)を公表し、イランは2003年秋に核兵器開発計画を停止し、それ以降、再開していないもようだとの分析を明らかにした。ブッシュ大統領は、イラン核武装の恐れを警告し続けてきたが、NIEの分析により、大統領が必要以上に危機をあおっていたのではないかとの疑念が高まりそうだ

 今年10月末の時点で収集した情報を基に分析したもので、イランに関する包括的な評価は05年以来。カー国家情報副長官は声明で、「イランの核兵器製造能力に関する理解が変わった」と述べ、評価に修正を加えたことを明確にした。

 今回のNIEは、兵器開発の停止中にイランが核兵器用物質を輸入したとは考えにくく、核兵器製造に十分な量の物質を取得した可能性も低いと判断した。

 国連安全保障理事会の決議を無視してイランが継続するウラン濃縮計画について、NIEは「イランは07年に中部ナタンツの施設に遠心分離機を設置する重要な前進を見せたが、本格稼働までにはなお技術的問題に直面している」とし、濃縮ウランの大量生産は差し迫ってはいないとの分析を示した。 

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ロイターのヘッドラインにもありますね。
ウォールストリート・ジャーナル紙ヘッドライン(4日付)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071204-00000919-reu-int

★イランが2003年に核兵器開発を中止したと結論付ける報告書が出されたことで、ブッシュ政権内の対イラン強硬派の主張の根拠が薄れる。

しかしこの国はあいかわらずなようで、
イランの脅威は不変…イスラエル国防相、米評価受け
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20071204id21.htm

 【エルサレム=三井美奈】米政府の国家情報評価(NIE)を受け、イスラエルのバラク防相は4日、国軍ラジオで「イランは核兵器計画を一時停止したが、再び着手したはずだ」と述べ、脅威は不変であると主張した。イスラエル軍情報部は11月、「イランは09年にも核兵器を完成する」との見方を示しており、米国の分析とのズレに戸惑いが広がっている。

 国防相は、米国によるイラン攻撃の可能性は低くなったと認めた上で、「言葉だけでミサイルは止められない」と述べ、イランに対する軍事攻撃を選択肢から排除すべきではないとの立場を示した。ただ、イランは同国から1000キロ以上離れている上、核施設は数十か所に散在していると推察されるため、「攻撃には米国との協力が不可欠」(軍事筋)との見方が一般的。米国で強硬論が沈静化すれば、攻撃は事実上、不可能になるとの見方が強い。

 また、イスラエルは米国とともにイランの脅威を強調し、アラブ諸国を含めた「包囲網」作りを目指してきた。今後もイスラエルが同じ路線をとれば、「信用が損なわれ、オオカミ少年のように映る」(同国紙イディオト・アハロノト紙)との懸念も出ている
(2007年12月4日20時27分 読売新聞)

なんつーか、もう
IAEA事務局長は交代すべき」イスラエル副首相、イラン核問題で圧力
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20071114/1195043849
の時点であきれてるんですけどね。イランの脅威は不変で、イスラエルの脅威は増してるって事なんでしょうか。

2003年秋ということですが、
2003/11産経新聞の記事
IAEA報告書の要旨
http://www.sankei.co.jp/news/morning/15int002.htm

 IAEAが二十日からの定例理事会で協議するエルバラダイ事務局長の報告書の要旨は次の通り。

 【ウラン転換】

 イランはウラン転換実験に必要な物質を一九八一年から九三年の間、テヘラン核研究センターとイスファハン核技術センターでキロ単位で製造していたことを認めた。

 【再処理実験】

 イランは八八年から九二年の間、テヘランの研究炉で七キロの劣化二酸化ウランに放射能を照射、テヘラン核研究センターでそのうち三キロからプルトニウムを分離。実験装置は九二年に解体され、イスファハン核技術センターの倉庫に保管された。プルトニウムはジャブル・イブン・ハヤン多目的研究所に保管され、残った四キロの劣化二酸化ウランはテヘラン核研究センターに保管された。

 【ウラン濃縮】

 イランは九九年と二〇〇二年に、カライ電気商会で輸入した一・九キロの六フッ化ウランを使ってガス遠心分離法の濃縮実験を実施した。ラシュカール・アバードの研究施設に〇〇年に、レーザー工場を建設、レーザー法によるウラン濃縮実験を〇二年十月から〇三年一月にかけて行った。装置は〇三年五月に解体され、金属ウランと一緒にカラジの倉庫に保管された。

 【調査結果】

 イランの核開発計画は核燃料サイクルを完成させるところにきている。イランは十八年間、ウラン濃縮計画を進め、十二年間、レーザー法による濃縮計画を進めながら、大半を申告していなかった。イランが長い間、保障措置協定の義務を履行していなかったのは明らかだ。しかも隠蔽(いんぺい)によって協力を怠っていた。

 【評価と今後の対応】

 イランの隠蔽は先月まで続けられていた。明らかになった多くの違反は限られた量の核物質についてだが、核燃料サイクルの最重要部分にかかわる。核兵器に利用されるにはさらなる過程が必要だが、保障措置協定違反の疑惑が出ている中での報告不履行は重大な関心を引き起こしている。

 IAEAはさらにイランが提示した情報が正確で完全かどうか検証する。これまでのところ、未申告だった核物質や作業が核兵器開発と関係があるとの証拠はないが、過去の隠蔽ゆえに、核開発計画が完全に平和利用目的だったと結論づけるにはなお時間を要する。

 事務局長は〇四年三月の定例理事会かその前に検討できるよう理事会に進展状況を報告する。(蔭山実)

判断は皆さんに任せます。