ライス国務長官がキルクークに飛んだと読んで、ちょっと調べてみました。

2007/12/14にこんな↓記事があったんですよね。
イラク・シリアの絆が「復活」 パイプライン再開へ
http://www.asahi.com/international/update/1214/TKY200712130344.html

 03年のイラク戦争で破壊され、運用停止中のイラクとシリア間の石油パイプラインが、再開に向けて動き始めた。両国の外相が12日、シリアの首都ダマスカスで運用再開に合意した。復興資金の確保に向けて石油輸出ルートの開拓を急ぐイラクと、石油確保や国際的孤立からの脱却をめざすシリアの思惑が一致した形だ。経済的な「絆(きずな)」が復活する背景には、シリアを敵視してきた米ブッシュ政権の「方針転換」もささやかれる。

 再開するのは、イラクの産油地キルクークとシリアの都市バニヤスを結ぶ石油パイプライン。米軍の攻撃でイラク側部分が破壊されていた。

 イラクのジバリ外相は12日、訪問先のダマスカスでシリアのムアレム外相と共同会見し、「両国間に肯定的な雰囲気と進展がみられる。シリアの国境管理強化により、イラクへの武装勢力流入が大幅に減り、イラクの治安改善につながっている」とシリア側に謝意を表明。再開への作業を加速させる考えを示した。

 具体的日程は示さなかったが、ロシア系企業が再開に向けた調査を請け負っているという。

 関係者によると、キルクークとバニヤスを結ぶ石油パイプラインは50年代に建設。両国の断交後も、国連の経済制裁下にあったイラクの旧フセイン政権が日量10万〜20万バレルを同パイプラインを通じて輸出していた。

 現在、イラク全土で日量約250万バレルを産出し、その大半を南部バスラ沖の石油施設を通じて輸出しているが、石油価格高騰を追い風に新たな輸出ルート確保を急ぎたい事情がある。

 一方、米国に「テロ支援国家」と名指しされ、国際的孤立に悩むシリアにとっても、同パイプラインは年間約10億ドルを稼ぎ出す「生命線」。同国の石油産出自体も減少しており、世界有数の産油国である隣国イラクからの石油調達は急務だ。イラクの治安改善への協力や150万人以上とも言われるイラク難民受け入れなどで、イラク側に「秋波」を送ってきた。

 イラクとシリアは昨年末、四半世紀ぶりに国交を回復。今年1月にイラクのタラバニ大統領、8月にはマリキ首相がダマスカスを相次いで訪問した。だが、「シリア側が石油パイプライン再開などの具体的な経済協力を求めても、米国とシリアの対立の板挟みとなるイラク側が踏み込まなかった」(外交筋)という。

 シリアは近年、核問題をめぐって米国と対決姿勢を続けるイランとの連携を強めており、アラブ諸国の中でも孤立する立場にあった。

 しかし、ブッシュ米大統領の提唱で11月末に米国のアナポリスで開かれた中東和平国際会議に、シリアはアラブ連盟の一員として参加。メクダド副外相がライス米国務長官と握手するなど「雪解け」の気配もみられる。

 ジバリ外相による運用再開の表明については、「イラク安定化や中東和平にシリアを関与させたい米ブッシュ政権が、シリアのアナポリス会議参加を機に、イラクに対してシリアとの具体的な経済協力にゴーサインを出したのでは」(同筋)との観測が、シリア側で広まっている。

外相がパイプライン再開に合意と言うことですが、イラク外相はジバリ外相でクルド系ですね。クルド人キルクークについては、
イラク>「一刻も早く国外退去を」クルド組織に要請
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20071021/1192981806
あたりからたどれます。

2007/12/18の記事
クルド首相>キルクーク帰属問う住民投票を半年延長
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071218-00000113-mai-int

 【カイロ高橋宗男】イラク北部・クルド地域政府のネチルバン・バルザニ首相は17日、年内に予定されていた石油都市キルクークの帰属を問う住民投票を半年延長することを容認した。首相は「技術的な問題」を理由に挙げたが、早期の住民投票実施がクルド人とアラブ人の民族対立を悪化させかねないとの懸念があるとみられる。AFP通信が伝えた。

 キルクークは世界第3位とされるイラクの石油埋蔵量の多くが確認されている大油田地帯。クルド人は歴史的にキルクークを同胞の中心都市ととらえており、クルド地域への編入を求めてきた。

 イラク憲法キルクークをめぐる住民投票を年末までに実施すると規定し、マスード・バルザニ地域政府議長も今年4月の毎日新聞との会見で「延期は憲法違反」と強調するなど、年内の実施を強く主張していた。

 03年のイラク戦争後、クルド地域政府はキルクークヘの住民の帰還を奨励し、旧フセイン政権がアラブ人を移住させた「アラブ化政策」の是正を図ってきた。イラク中央政府も今年に入り、アラブ人に対し、キルクークから別の土地への再移住補助金を打ち出したが、アラブ人の間には反発が根強く残っている。

 キルクーク問題はイラクの国民融和を巡る試金石の一つとなっている。米国のライス国務長官は18日、同市を電撃訪問し、「政治的解決」の重要性を呼びかけた。

正直イラク憲法が2007年中のキルクークをめぐる住民投票を定めていたと知りませんでした。あんなに気にしていたのに何を見ていたのやらです。
ちょっと調べたら、
極東ブログさん
キルクークを併合してクルディスタンが独立するまであと二歩くらい
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2007/09/post_733c.html
に色々書いてありますね。ちょっと時間が時間なんで、ゆっくり読んでられませんが。

って自分で書いてたよwバルザニ氏の4月の毎日新聞の会見ってこれ↓ですね。
イラク>バルザニ・クルド地域政府議長、本紙と単独会見
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070407/1175902416

隣国トルコのグル外相は2月、キルクーククルドに帰属すれば、最悪のシナリオはイラクの分断だ」と述べ、住民投票中止を訴えた。

辺りに目が行っていて全然読んでなかったようです。ここら辺は

クルド労働者党封じ込めへ、トルコ・イラクが反テロ協定
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20071011/1192101907
とありましたが、実際にはイラク中央政府PKKについてほとんど野放しで、結果トルコはイラクに攻め込んで、アメリカは自画自賛↓してましたが、
トルコ軍のクルド人武装組織に対する今月の一連の攻撃に有益情報となる
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20071219/1198077040
まぁ前書いたようにトルコの陸軍の越境は雪のせいで限定的なんだと思いますが、
トルコ軍、イラク領内で攻撃 軍が発表、PKK側は否定
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20071202/1196608759
クルド自治区キルクークの位置関係の地図、トルコ国境付近の雪景色の写真など貼ってあります)
それでも結果は
クルド人自治政府議長、トルコの攻撃で米国務長官と会談拒否
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071219-00000266-reu-int

 12月18日、イラク北部クルド人自治政府の最高指導者マスード・バルザニ議長(写真)は、イラクを訪問したライス米国務長官との会談を拒否した。写真は11月、イラク北部のアルビルで撮影(2007年 ロイター)

 [アルビル(イラク) 18日 ロイター] イラク北部クルド人自治政府の最高指導者マスード・バルザニ議長は18日、イラクを訪問したライス米国務長官との会談を拒否した。自治政府のネチルバン・バルザニ首相が明らかにした。

 トルコ軍は18日、北部のクルド人自治区を越境攻撃したが、クルド人自治政府はこの攻撃のほか、同地域を拠点とするクルド人独立派組織を狙った空爆を容認している米国の姿勢も非難した。

 ネチルバン・バルザニ首相は「ライス長官とバルザニ議長はバグダッドで会談する予定だったが、議長はトルコによる空爆と越境攻撃に対する米国の姿勢を理由にバグダッドに行かないことを選択した。イラクの領空は米軍の管理下にあり、米国の認識または承認なしに領空侵犯することは不可能だ」と述べた。

 首相はバルザニ議長の甥に当たる。

と話が散漫になってしまいましたが、とにかく今ここでクルド人キルクーク住民投票で手に入れてしまうと、クルド人イラクのアラブ系とトルコ両方を敵に回す可能性があって、ライス国務長官はそれを避けるために住民投票をやめさせようとキルクークを電撃訪問したんじゃないですかね。まぁ外交の話し合いというのは大体秘密のままで終わってしまうので分からずじまいだとは思いますが。

ただPKKとトルコのクルド人イラククルド人が一枚岩だとは思っていません↓
『「トルコとクルド:二つの思い」(NHK)を観て』を読んで。
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20071107/1194452019

しかし話は戻りますが、クルド人のジバリ外相がシリアとのパイプライン再開とか決めているなら実質キルクークの石油はクルド人がおさえてると言えるような気もするんですが、真相は
−英語を通して日本から「イラク」を見る。さん
米国肝いりの石油法にイラクの人々が反対する理由
http://teanotwar.seesaa.net/article/52657514.html
にあるようになんかまずいことがあるので秘密裏に事を進めようとしているという感じの様で、良く分かりません。まとまりのない文章になってしまいましたが、とりあえずこの辺で。