動乱50年 チベット族居住地を行く 信仰の自由欲しい

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090311-00000123-san-int


(写真:産経新聞

 ■ダライ・ラマは悪…「愛国教育」

 中国の支配に抗議するチベット民衆と人民解放軍が衝突し、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が亡命するきっかけとなったチベット動乱から10日で50年。中国共産党統治下で暮らすチベット族はどんな思いを胸にこの日を迎えたのか。四川省チベット族自治州から報告する。(甘孜(カンゼ)チベット族自治州=中国四川省 野口東秀)

 [フォト]中国チベット自治区の区都ラサのポタラ宮前で警戒にあたる警察車両

 ≪「取材妨害」≫

 物々しい厳戒態勢だ。中国当局が大量に投入した治安部隊の車両が行き交う。 10日未明、甘孜(かんぜ)チベット族自治州の康定県から甘孜県に向かう途中の旅館。突然、4人の警察官が、就寝中の記者(野口)の部屋に踏み込んできた。「身分証を見せろ」。「何しに来たのか」「どこへ行くのか」。パスポートをコピーする必要があると、派出所まで連れで行かれた。

 早朝も7人の警察官と押し問答になった。「あなたがチャーターした車は白タクだ。法的手続きをとる」と主張して譲らない。そして、パトカーに乗せられ康定県に戻る羽目に。さらに、夜には当局の車で成都まで“強制退去”させられることになった。「安全のため」という理由だ。政府はチベット自治区での外国メディアの取材を基本的に認めていない。その周辺のチベット族居住区では「取材妨害」が行われていた。

 アバ・チベット族チャン族自治州の理県。30歳代のチベット族の男性は、ダライ・ラマ14世の写真を服の内側からこっそり取り出した。

 「信仰の自由が欲しい。今もチベット問題が解決しないのは、中国共産党がわれわれをまったく尊重しないことが根本的な要因だ」

 ダライ・ラマの写真の所持は“ご法度”だ。周囲を気にしながら話す。「中国共産党は動乱後50年間にわたり、『民主改革』と称し、チベット人にとり文化そのものであるチベット仏教に「干渉」してきた歴史を反省せず、正当化ばかりしてきた」とも批判した。さらに、声をひそめて付け加えた。

 「暴力的な抗議行動を計画するチベット族はいつでもいる」
 中国紙によると、「チベット青年会議」などチベット独立派の一部は今年を「黒色の年」とし、抗議活動によって国際社会の支持を得たい考えだという。一方、当局は2月18日、チベット自治区で開かれた会議で、軍と警察に「ダライ集団の攻撃を断固粉砕せよ」と指示した。

 政府は昨年から、チベット仏教の僧侶らに対する「愛国教育」を試みている。だが、甘孜県周辺に住む若い僧侶は「ダライ・ラマは『悪』だとする宣伝なんて誰一人信じてはいない」と吐き捨てるように言った。

 彼によると、四川省の僧侶がチベット自治区ラサに行くことは禁止だ。こんな話もしてくれた。「(ダライ・ラマは)分裂主義者で、昨年の暴動の首謀者だ」と書かれた文書への署名を当局から求められたという。「従わないと、農畜産物の売却などに必要な各種の公的証明がもらえなくなるぞ」とも告げられた。

 各地の寺院に対しては、僧侶の数を半減するよう政府から指示があり、強制的に「一般人」に戻される僧侶もいるという。当局側の発砲で死傷者が出たとされるアバ・チベット族チャン族自治州のアバ県では、「読経会」が今年に入ってから禁止されているようだ。

 しかし、力による締め付けが強まるほど、住民らの不満も強くなる。2月末から今月にかけ、四川省などでは抗議行動が相次ぎ、甘孜チベット族自治州理塘県ではダライ・ラマ支持をスローガンに数百人がデモ行進し、警官隊と衝突して数十人が拘束されたという。アバ県では先月27日、数百人の僧侶が抗議の座り込みをし、うち一人が街頭で焼身自殺を図った。

 ≪3本柱への不満≫

 「政府がどれだけの投資をして街を発展させ、チベット族の暮らしを向上させたと思ってるんだ」

 康定県で雑貨を売る漢族の男性は激しい言葉で、独立を求める一部チベット族への不満を並べたてた。

 政府は多額の公共投資によってチベット自治区を発展させ、それによってチベット族の不満を解消しようとする。同時に、武装警察部隊を増員し示威行動に出る。いわば「アメとムチ」だ。「発展」「武力」「宣伝」。チベット政策で政府が駆使する3つの柱である。甘孜県周辺に住むある僧侶の言葉が印象に残った。

 「経済が安定しても宗教に対する規制と締め付けがある限り、不満は蓄積されていく」

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「暴力的な抗議行動を計画するチベット族はいつでもいる」というのは悲しいですけど現実ですね。

休日なのでチベット特集やってみます。去年のまとめは
エコノミスト記者が見たチベット騒乱 (暴動時ラサに滞在。今までと感じが違うかも。)
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080412/1207995131
チベット2007/08月からの報道。僕の考えるチベット騒乱の原因
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080508/1210252691
あたりになるでしょうか。

私はこうして“強制退去”させられた チベット周辺取材
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090312-00000604-san-int


チベット動乱50年の10日、四川省ガンゼ・チベット族自治州康定県の金剛寺の僧侶。後方にいる数人は記者を尾行する当局者(撮影・野口東秀)(写真:産経新聞

 【北京=野口東秀】「手錠をかけるぞ!」。チベット動乱50年の取材のために訪れた四川省で記者(野口)は、中国当局から“強制退去”させられ、重大な取材妨害を受けた。外国人記者に対するこうした対応は、国際社会の常識にそぐわない。

 11日午前11時前、ホテルのビジネスセンターで、出稿した記事のコピーが東京本社からファクスで送られてくるのを待っていた。しかし、従業員は「どこにあるかわからない」と要領を得ない

 「おかしい」。そう思ったときだ。制服と私服の警察官3人が突然、現れた。記者(野口)のパスポートの写しを手にしている。チェックインした際にホテルがコピーしたものだ。

 警察署に同行しなければ手錠をかけるという。

 「容疑は何か」

 「来ればわかる!」

 「日本の新聞記者だ。トイレへ行きたい。我慢できないから部屋に一度、戻らせてくれ。パスポートも部屋だ」

 「とにかく来るんだ!」

 薄いセーターを着ているだけなのにオーバーコートーも取りに行かせず、犯罪者扱いだ。

 警察署では、携帯電話と小型カメラを取り上げられた。携帯電話の記録をチェックしている。別の警官の手元には東京本社からホテルにファクスで送られてきた記事のコピーがあった

 何度か携帯電話が鳴った。通話は許されない。「座っていろ」。ただそう言うだけで尋問もしない。2時間ほどが過ぎた。

 ホテルに戻されると、警官はパスポートと記者証を念入りにチェックし、コピーも取った。ようやく“解放”された。

 そもそも事の始まりは、9日深夜のことだ。甘孜(カンゼ)チベット族自治州の康定県から理塘県ヘ向かう途中の旅館でだった。就寝していたところ、4人の警官がノックもせず部屋のカギを開け踏み込んできたのだ。「身分証を見せろ」などと矢継ぎ早に質問を浴びせられた。

 翌朝早く出発しようとしたところ、警官7人が待ち構えており、約1時間にわたり押し問答となった。「高山病の危険がある。道が危ない」などと言って、別の場所へ行かせまいとする。チャーターした車にしても「営業許可がないものだ」として、使わせない。そして、当局の車で康定県まで“送迎”された。

 康定県でも記者を待ち構えていたのは4、5人の当局者だった。終始、尾行された。外国人を担当する外事弁公室の者もおり成都に戻ってもらいたい」と言う。やはり当局の車に乗せられ、成都まで“強制退去”となった。成都の空港では、北京へ向かう便の搭乗ゲートに入るのを見届けるまで、警官がついてきた。

     ◇

 中国外務省の馬朝旭報道官は12日の記者会見で、外国人記者への取材妨害について「開放政策に何の変化もない。中国は法治国家であり、中央・地方政府とも法にのっとり執務している」と述べた。

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外国メディア、ラサに入れず ネットも規制 厳戒の「チベット騒乱」1年
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090314-00000548-san-int

 【北京=野口東秀】中国チベット自治区ラサ市で数千人が蜂起した昨年3月の「チベット騒乱」から14日で1年を迎えた。胡錦涛国家主席は「国家安全と社会安定の確保」を指示し、同自治区と周辺各省には暴動に備えて数十万規模の治安部隊が増派され、厳戒態勢が敷かれた。

 関係者によると、ラサ市内では14日、小規模の抗議行動が起きたが、大きな騒ぎにはなっていないもようだ。ラサ市内では、交通規制が導入され、自動小銃を手にした武装警察部隊が巡回するほか、各所で検問所が増設され、身分証の検査が行われるなど、「外出が事実上、できないような状況にある」という。寺院は武装警察部隊に包囲されたという。

 四川省甘孜チベット族自治州理塘県では今月初め、「チベット独立」と叫ぶなどの散発的な抗議行動が発生した。このほかにも数カ所で抗議行動が起きたと伝えられているが、参加者らは、いずれも即座に身柄を拘束されたという。

 当局は「外国人の安全」を理由に外国の報道機関による取材を拒否。現地からは、海外への電話の発進やインターネット通信も規制しており、当局は徹底した情報統制を行っている

 政府は、昨年のラサ騒乱で、市民18人が死亡、382人が負傷、放火で商店など1000軒余が焼失したと発表した。しかし、チベット亡命政府側は、百数十人以上が殺害されたと主張している。

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どうも産経新聞ばかりなのですが、ネット規制といっても今も僕のこのページに中国からのアクセスはあるんですけどね。

最後読売新聞で
ラサ暴動1年、四川は厳戒態勢…記者尾行、取材妨害も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090315-00000093-yom-int


14日、中国・成都市内のチベット自治区成都事務所付近を警戒する警察と治安部隊(佐藤俊和撮影)

 【成都(中国四川省)=加藤隆則、竹内誠一郎】中国チベット自治区ラサの大規模暴動発生から1年となった14日、四川省などのチベット族居住地区では、抗議デモの再発を抑え込むため厳戒態勢が敷かれた。

 成都の当局は、本紙記者を常時監視し、取材活動も妨害。厳しい統制は、今年から新たに定めた「100万農奴解放記念日の28日まで続くとみられる。

 成都市内でチベット族住民が集中する観光地の武侯●(ぶこうし)近くでは、約1キロ四方の地域で外部車両の進入が禁止された。警察官が20メートル置きに配置され、武装警察官、民兵も行進を繰り返している。チベット族女性は「2週間前から続いている。観光客の出入りは大幅に減った」と話した。(●は「示」につくりが「司」)

 香港ラジオテレビによると、ラサ市内も厳戒下にあり、多くの商店はシャッターを下ろしているという。

 ここ1か月、小規模な抗議行動が相次いでいるアバ、甘孜(かんし)両チベット族自治州では、インターネット、携帯電話のデータ通信が遮断され、チベット寺院周辺では常時、私服警官が監視。アバ州のチベット僧(33)は「1年前の犠牲者を弔いたいが、これだけ行動や情報が監視されたら何もできない」と話し、甘孜州のチベット族男性(55)は「以前はダライ・ラマの写真をひそかに身につけていたが、もう駄目だ」と話した

 本紙記者らは成都滞在中の4日間、外出時には常に当局の尾行を受けた。13日には、郊外の取材に出ようとした記者(加藤)のタクシーが、当局により強制的に成都に引き返させられた。

外出時に当局の尾行を受けることぐらいは、
人権活動家・胡佳氏に懲役3年6月=言論活動で国家転覆扇動罪−中国
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080403/1207242307
で、取り上げた記事にも

外国人記者も、当然監視の対象になっている」と、中国政府筋から言われたことがある。その筋は「程度の問題もあるが」としてこう話した。

「党中央指導者(引退者含む)に対する個人批判と動静の暴露、内部文書に基づく高度な軍事情報の暴露、台湾独立の宣伝、身分を偽った取材はやめた方がいい」

とありました。

しかし「100万農奴解放記念日というのは初めて見ました。

毎日新聞によると、
チベット動乱50年:中国、厳戒態勢 対外公開ぶりも強調
http://mainichi.jp/select/world/news/20090307k0000m030103000c.html


中国内外の報道陣からの質問に答えるチベット自治区の幹部たち=2009年3月6日、北京の全人代で鈴木玲子撮影

 【北京・鈴木玲子】国会に相当する全国人民代表大会全人代)開会中の中国は、期間中の10日にチベット動乱50年、14日にはラサで大規模暴動が発生してから1年を迎える。当局はチベット自治区に外国人の立ち入りを禁じ、厳戒態勢を敷く一方、6日の全人代で行われた自治区代表団会議では、1時間にわたって報道陣の質問に答える異例の対応で「対外公開ぶり」をアピールした。

 チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世のインド亡命につながった1959年のチベット動乱について、中国政府は「農奴制から解放した」と正当性を主張。今年から、動乱が完全に制圧された3月28日を「100万農奴解放記念日に定めた。一方、自治区と周辺地域に治安部隊を大量投入し、暴動発生などを警戒。自治区への外国人の立ち入りも3月末まで禁止した。2月下旬には四川省アバ県で宗教活動阻止に抗議する若いチベット僧侶が焼身自殺を図る事件が起きただけに、当局は神経をとがらせている。

 チベット情勢への高い関心を反映し、6日のチベット自治区代表団会議には国内外の報道陣100人以上が詰め掛けた。列確・自治区共産党委副書記は記念日の設定について「新しいチベットが建設された。チベットの人権の大きな進歩」と説明。外国メディアからはチベットへの立ち入り規制を批判する質問が相次いだが、自治区シャンパ・プンツォク主席は「集団で外国報道陣の取材を受け入れている」と強調した。

 また同主席は、昨年の暴動で逮捕された約950人のうち、76人が強盗、放火、国家安全危害罪などで判決を受け、その他は処罰と教育を受けた後に全員釈放されたことを明らかにした。主席は「暴動で数百人が殺されたという話は根も葉もないでたらめ」と否定した。
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* チベット動乱

毎日新聞 2009年3月6日 22時17分(最終更新 3月7日 0時27分

制圧された日を「100万農奴解放記念日と呼ぶセンスに脱帽です。

しかし、
西蔵の新年 25日から長期連休始まる
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20090225/1235566161
で、チベット暦の正月を新たに祝日にしたわけですが、このときは去年の暴動が起こっていた期間を休みにして、外出しにくいようにするとかは、やってないと思ったのですが、「100万農奴解放記念日というのも作っていたんですね。そういうところでは中国はほんと抜け目ないと思います。