【橋がつなぐ経済圏】(上)国際橋は経済統合の試金石

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090409/fnc0904092305017-n1.htm

 インドシナ半島を南北に流れるメコン川にタイ〜ラオス国境を結ぶ全長1600メートルの第2メコン国際橋が完成して2年余がたった。ミャンマーからベトナムに至る全長1500キロの「東西回廊」整備の一環として、日本の政府開発援助(ODA)で建設された橋である。物流の要としての本格的利用はこれからだが、世界同時不況下でも人やトラックの流れは絶え間ない。したたかに経済が動いているタイ・ラオス国境地帯を訪れた。(編集委員 気仙英郎、写真も)

 「前日の午前6時に出て、今朝9時に着いた。途中の休憩を除けば22時間かかったけど、この橋のおかげでだいぶ便利になったね」

 ガソリンを満載したタンクローリーを運転してきたタンチャオ・ソラチェさん(35)はラオス側での通関手続きを待つ間、荷台につるしたハンモックでしばしの休息をとっていた。

 工業拠点として開発されたタイ東部臨海地区のラヨンからラオスのサバナケットまで週に何度かガソリンを運ぶという。ソラチェさんの会社は橋がなかったころは、船でメコン川を渡っていただけに手間と時間は大幅に短縮された。

 国境を行き来するのはトラックだけではない。タイ・ムクダハンとラオス・サバナケットを結ぶ国際バスが1日24便運行されている。乗客の中にはラオスからタイへ出稼ぎに向かう人も多い。午後になるとカジノを営業するホテルのマイクロバスが客待ちのためにやってきた。タイ人の客が目当てで、最低懸け金は100バーツ(約280円)。

 タイ側のナティータ・プーナンジャン副審査官は「出入国者は1日計約2000人。1カ月から2カ月の短期滞在ビザで行き来する人が多い」と明かす

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090409/fnc0904092305017-n2.htm

 メコン川流域にはベトナムミャンマー、タイ、ラオスカンボジアの5カ国があり、上流域の中国雲南省を加えて大メコン経済圏と呼ばれる。ASEAN東南アジア諸国連合)加盟国として経済連携を強め、ベトナムラオスカンボジアの経済底上げを目指すさまざまな国際プロジェクトが進められている

 しかし、各国の政治体制はさまざまで、経済圏として一枚岩のまとまりがあるわけではない。歴史的背景や各国の利害が絡んで、円滑な物流を妨げる不合理な制度も残っている。ラオス国際橋管理事務所のザヤラット・バハニット副所長が「いつ解消できるかは国家間の交渉次第」と語る物流協定は典型的な例だ。

 タイとラオス間、ラオスベトナム間はそれぞれトラックが自由に行き来できる。だが、タイとベトナム間はそれが認められていない。このため、タイからベトナムまで荷物を運ぶとなると、いずれかの国境で積み荷を別のトラックに移さないとならない。つまり、国境で積み荷を積み替えることなく、同じトラックで輸送できる「トラック・パスポート制度」が確立されていないのだ。

 また、国境で通関・検疫の手続きが別々に行われており、1回で済ませる「シングル・ストップ制度」の導入もこれからの課題だ。

 しかし、現状はラオス側にとってそれほど悪くはない。積み荷を移す際の手間賃を稼ぐメリットがあるからだ。ラオス商人らも物流のすき間を柔軟に埋めている。バハニット副所長によれば、タイ側の外資系大型ショッピングセンターで商品を仕入ラオスの村々で小売りする商売が成り立っているという。

 ASEANは2015年までに経済統合の実現を目指している。国際橋をめぐるモノの動きは、本当に経済統合が実現可能かどうかを見極める試金石である。

下はYahoo!で一まとめになっているのでそっちに行きます。
【橋がつなぐ経済圏】(下)◎外資導入をめざすラオスの憂鬱
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090410-00000658-san-int

 タイとラオス国境に架かる第2メコン国際橋のラオス側の町、サバナケット。今年3月中旬、タイのスズ製錬会社「オー・エム・マニュファクチャリング」のアーネル・ラナ管理部長はこの町を訪れ、マレーシア資本のサワン太平洋開発の王振材・総経理と机をはさんで向き合っていた。

 サバナケットには税制などさまざまな特典を設けて外資導入を目指すラオス国内初の経済特区「サワン・セノ経済特別区」がある。この経済特区は王総経理の会社がラオス政府から開発を一手に請け負っており、王総経理が現地代表だ。

 ラナ部長の会社は経済特区の3番目の開発区分「サイトC」に製錬工場を建設する計画だ。ラナ部長がこの日、本社があるタイ東部のチョンブリから早朝の便で飛んできたのは、大詰めの立地交渉を行うことが目的だった。

 王総経理によれば、サイトCの面積は234ヘクタール。サイトCへの進出第1号を目指すラナ部長は「今年6月には工場を立ち上げたい。メコン東西回廊は商売のチャンスを広げると確信している」と期待を口にした。インドシナには豊富な地下資源がある。今後、東西回廊の整備が一段と進めば、地下資源ビジネスは活発になるに違いない。

 しかもベトナムラオスカンボジアミャンマーの4カ国はタイに比べて労賃が安い。タイの地場企業だけではなく、日系企業約1900社を含むメコン圏進出の外資企業はタイを東アジアにおける生産拠点としつつ、圏内でどう分業体制を築いていくかに腐心している。組み立てを中心とした労働集約型の工場をベトナムラオスへ移す。そして、タイはより付加価値の高い部品や中間財の生産に絞るという動きだ。

 しかし、この経済特区は先に開発が進んでいるサイトBの企業集積がようやく始まったばかり。第2メコン橋のすぐそばのサイトAは、まだ整地さえ行われていない。

 「いま世界経済は大変だが、いずれ回復する。むしろ投資のチャンスと考えている企業も多い。サイトCにはすでに世界の企業12社が関心を示しており、日系企業も1社ある」。王総経理の自信は揺るがないが、外資の間ではラオスが抱える弱点が懸念されている。

 それは、ラオスの人口が約600万人弱と周辺国に比べて少ないことだ。現地に進出している日系の機械メーカーなどは、企業集積が進めば一気に労賃が上がって進出のメリットがなくなってしまいかねないと危惧する。

 そうなれば、ラオスは国際橋の単なる通過点になりかねず、ラオス政府の心配の種にもなっている。ベトナムのダナンからミャンマーのモーラミャインまで東西回廊は1500キロだがラオス国内区間は車で走ると約3時間にすぎない。

 ラオス政府はこうした弱点を踏まえた上で、日本や中国、欧米、タイなどをてんびんにかけてインフラ整備支援を積極的に働きかけている自由貿易協定(FTA)で中国に先を越された日本は、2008年に発効したラオスとの間の投資協定に基づき、外資が進出しやすくするための法整備に協力し、国際協力機構(JICA)も首都ビエンチャンでの工業団地建設が可能かどうかについて調査を進めている。

 メコン経済圏として一体化を目指しているとはいえ、国の主権は異なる。日本や欧米の協力には、インドシナにおける中国の影響力が強まることへの警戒感がにじむ。人やモノの交流を円滑にする国際橋は国益が複雑に絡み合う結節点でもある。(編集委員 気仙英郎、写真も)

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この地域に興味をもってる方もかなりいるようで、アクセス解析で東西回廊などの検索ワードはよく見ます。地図は、

ぐらいしか記憶にありません。この地図を見ていただければこの地域で日本と中国の利権がぶつかっていることが分かると思います。

2008/04
メコン川流域各国への政策、日中が初対話 25日北京で
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080424/1209050114
と日中で対話もしています。

しかし、
2008/05
インドシナ半島 「中華経済圏」の様相 人民元流通、あふれる中国製品
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080514/1210775978
と日本側の危機感もうかがえます。