イラン−パキスタン パイプライン計画多難 テロの影と米の圧力と 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090701-00000127-san-int


(写真:産経新聞

 【ニューデリー=田北真樹子】パキスタンとイランが、天然ガスのパイプライン建設計画に合意し、すでに一部が着工されている。エネルギーの安定供給の確保に腐心するパキスタンに、国連の経済制裁の下で外資不足にあえぐイランが、世界第2位の埋蔵量を誇る天然ガスを輸出するためのものだ。しかし、両国に対する今後の米国の出方やテロ組織の存在なども絡み、計画の前途は多難だ。


 [地図]ロシアが南欧向けガス輸送計画、南ルートとナブッコ・パイプライン

 パイプライン計画をめぐりイランとパキスタンは13年間にわたる交渉の末、5月24日にテヘランで、アフマディネジャド、ザルダリ両大統領が合意した。パキスタンからの報道によると、ペルシャ湾岸沿いのサウスパースガス田とパキスタンを結ぶパイプラインは全長2100キロ。着工しているのはイラン側で、2013年ごろに完成する予定だ。パキスタンは25年間、日量1億5000万立方メートルの天然ガスを購入するという。

 経済的に困窮するパキスタンにとって、12億ドル(約1150億円)といわれる建設費は重い負担となり、資金繰りの見通しもついていない。それだけではない。パキスタン軍事アナリスト、タラト・マスード退役中将は「計画の実現には国内外の障害が立ちはだかる」と指摘する。

 まずは、パイプラインが通過するバルチスタン情勢だ。イランと国境を接するパキスタン南西部バルチスタン州には、両政府に抵抗する武装組織が複数あり、既存の別のガスパイプラインや送電設備などへの攻撃を繰り返している

 武装組織のうち、パキスタンを拠点にイラン国内でテロ活動を行うイスラム武装組織「ジュンドュラ」(神の兵士)は、最近もイスラム教礼拝所で自爆テロを起こした。イランは、同組織のネットワークを一掃しなければパイプライン計画にも影響を及ぼすと、パキスタンに警告している。

 米国の出方も鍵だ。オバマ大統領はイランとの対話に前向きな姿勢を示してきた。だが、イラン大統領選をめぐる混乱で、米議会が強硬姿勢に転じる可能性がある。「テロとの戦い」に組み込んだパキスタンへの経済支援にも、米議会は厳しい視線を注ぐ。このためオバマ政権が、パイプライン計画を再考するようパキスタンに圧力をかける可能性も指摘されている

 実際、計画にまつわる米国の圧力はあった。パイプライン計画はもともと「イラン・パキスタン・インド(IPI)ガスパイプライン計画」と呼ばれ、インドも参画する予定だった。だが、米国はイランを経済的に利することを嫌いインドに計画の見送りを求めた。イランとパキスタンは、インドに代えて中国を加えるという“中国カード”を使い、インドをつなぎ留めようとしたが、結局、計画から離脱した経緯がある。

 しかし、こうした経緯も念頭にマスード氏は「パキスタンのエネルギー事情は逼迫(ひっぱく)している。米国が米印原子力協力協定のような枠組みをパキスタンと結ばない限り、パキスタンはイランに頼るしかない」と説明する。

 中国も、パキスタンからパイプラインを延長させ自国へ引き込むことに関心を寄せる。パイプラインのルートの周辺にあるグワダルでは、中国の資金援助で大規模な港湾施設が建設されており、中国へのガスの海上輸送も可能となる。ロシアの国営天然ガス企業「ガスプロム」は、パキスタン国内でのパイプライン建設に加わるという。天然資源の“争奪戦”の構図は、ここでも同じだ。

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天然ガス「迂回阻止」へ新ライン構想

グワダルはここですね。

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グワダルについては、
パキスタン>スワート武装勢力が和平破棄 戦闘再開の恐れ
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20090410/1239372876

米のパキスタン秘密作戦 次の標的はクエッタか?

バルチスタン情勢には実はもう一つの利害関係国がある。この州に集中投資している中国である。その対象は港湾から空港、製油所、鉱山開発、中国西部への原油パイプライン計画に至るまで多岐に及ぶ。とくに、アラビア海に面するグワダル港開発は中国にとって戦略的な重要性を持つ。

そのグワダルでは2004年に中国人技術者3人が自動車爆弾で死亡する事件が起きている。秘密作戦の拡大はバルチスタン州情勢をさらに不安定化させないか。米国の次の一手を中国が強い懸念をもって注視していることは間違いない。

と出ていました。