送電網に最大6.7兆円必要 「太陽光発電20倍化」エネ庁報告書

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090701-00000031-fsi-bus_all

 資源エネルギー庁は1日、太陽光発電の導入量を2020年に現状の20倍にする政府目標について、現在の送電網では対応できないとする報告書をまとめた。太陽光発電は発電量が天候に左右されるため、送電網に悪影響を与える可能性がある。報告書は、高性能な蓄電池開発や、余剰電力で水をくみ上げて必要なときに放水し発電する揚水発電の拡大など、技術を総動員して「スマート・グリッド(賢い送電網)」を構築する必要があると強調し、最大6兆7000億円の投資が必要だとした

 同庁が有識者を集めて設置した「低炭素電力供給システムに関する研究会」(座長・山地憲治東大教授)が、報告書をまとめた。

 政府は太陽光発電の導入目標について、昨年の「低炭素社会づくり行動計画」で2020年に現状の10倍(約1400万キロワット)としたが、今年4月に20倍(約2800キロワット)に引き上げた。しかし、報告書は、現在実用レベルにある技術を活用した場合、送電網が耐えられるのは1300万キロワットまでだと指摘した。

 1億7000万〜1億8000万キロワットの国内電力需要に対し、天候に稼働率が大きく左右される太陽光発電の発電量の変化は、悪影響を与えるからだ。実際、太陽光発電稼働率は12%程度しかなく、電気の流れが不安定になれば、送電設備に損害を与えることもあり得る。

 報告書は、トラブルを防ぎ、安定的な送電を実現する方策として、送電網の変圧器の増設、大型蓄電池の設置、揚水発電の増設などを提言した。IT(情報技術)を活用し、電力消費を適切に制御するため、家電製品などにつなげるスマートメーターや、家ごと電力消費を制御するスマートハウスの研究を後押しする必要性も強調した。いずれも、「多くの差し迫った技術的課題が目前に残されている」として、産官学での研究開発態勢を整備するべきだとした。

 投資額は、総額で4兆6000億〜6兆7000億円になるが、だれがどれだけ負担するかのルールづくりの必要性も指摘した。電気料金への転嫁も議論のテーマになる見通しだ。

 一方で、太陽光発電の発電量が落ち込んだときに、素早く不足を補える火力発電が、「これまで以上に必要性が高まる」と位置づけた。そのために、二酸化炭素(CO2)をできるだけ排出しない石炭ガス化複合発電(IGCC)の早期実用化などを求めた

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二酸化炭素を減らすと言っても一筋縄ではいかないんですね。設備を作るのにかえってエネルギーを消費するのではとも思いますが。