スケープゴート?毒ギョーザ逮捕で当局に不信感

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100327-00000805-yom-int
 【北京=佐伯聡士】中国製冷凍ギョーザ中毒事件で中国人容疑者が逮捕されたとの報道を受けて、中国のインターネットでは、事件発覚から2年以上経過した後の逮捕に懐疑的な見方を示す書き込みも出ている。

 共産党一党独裁下での情報統制に対する不満が背景にあるとみられる。

 ネット利用者に人気のある「天涯論壇」などには、「2年もたっているのに犯行に使った注射器が残っているなんて」「日本人に説明し、警察がメンツを保つために、容疑者に人民元をたくさん与えて罪を認めさせた。彼はスケープゴートにされた」など警察当局への不信感を示した書き込みが見られた。

 また、容疑者が「元臨時従業員」とされた点についても、「悪事を働くのはどうしていつも臨時従業員なのか」「日本人だって信じないだろう」などの疑念が目立った。

 一方、容疑者に対して、「私憤をはらすため国家の利益とイメージを顧みなかった」「即刻死刑にすべき」などの過激な声もあった。

たしかに僕も腑に落ちない部分があるのは確かです。

天涯論壇は http://www.tianya.cn/bbs/ だと思いますが、中国語なのでよく分かりません。

他の記事では
「メディア対策」も、ぬぐえぬ疑問…毒ギョーザ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100328-00000714-yom-int
 【北京=佐伯聡士】中国製冷凍ギョーザ中毒事件で、捜査の指揮をとる中国公安省幹部が28日、本紙など一部日本メディアの取材に応じたが、詳細な説明を聞いても、いくつかの疑問はなお、ぬぐえなかった。

 2008年1月の事件発覚当初、地元検疫当局は「(天洋食品の)工場は(有機リン系殺虫剤)メタミドホスを使用したことがない」と断言していた。それが、28日の説明では容疑者がメタミドホスを工場内で入手していたことが判明。食品生産管理のずさんな実態だけでなく、検疫当局の説明をうのみにしていた警察の初動捜査のあり方も問われそうだ。

 中国当局は、08年2月の記者会見では、「中国国内で殺虫剤混入が起きた可能性は小さい」と発表。「監視カメラもあり混入は難しい」と強調していた。それが今回は、「冷凍庫内部に監視カメラがなく、犯行の様子が撮影されていない」ことも明らかになった。

 それでも、26日の容疑者拘束発表を受け、邦人記者を招いて異例と言える詳細な説明が行われた背景には、事件を沈静化させるため日本メディアへの対策が欠かせないと判断した胡錦濤政権の強い意向が働いているとみられる。

 28日の取材は北京市内のホテルに設けられた会場で行われ、公安省の武和平・報道官のほか、杜航偉・刑事偵査局長、王桂強・物証鑑定センター副主任ら省幹部が顔をそろえた。

 冒頭、杜局長は「事件を最終的に全面的に解明できるよう、今後も中日の警察当局が引き続き協力を強化することになる」と述べるなど、2年前の事件発覚当初に見られた日中当局者の対立がウソのような低姿勢だった。

 事件をめぐって、中国メディアは「日本メディアがあおり立て、日本国民の対中感情の悪化につながっている」などと日本メディア批判を展開してきた。それが28日の説明では、捜査ミスの可能性をただすような質問にも、杜局長が一つ一つ率直に答え、「メディア対策」の狙いが色濃くうかがえた。

とまぁずさんな捜査が明らかになっています。

事件解決の決め手になったのは、こういう事らしいです。
【毒ギョーザ逮捕】「おれがやった」で特定 自宅で妻にうっかり漏らす
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100328/crm1003281911010-n1.htm
2010.3.28 19:08

 「この事件はおれがやった」。中国製ギョーザ中毒事件で拘束された呂月庭容疑者(36)が自宅で妻にうっかり漏らした。28日に記者会見した中国公安省の捜査責任者は、このひと言が、容疑者特定の大きな要因になったと、内幕を明かした。

 ある晩、自宅で妻とともにテレビを見ていた呂容疑者。そこにたまたまギョーザ事件のニュースが流れた。「おれがやった」。呂容疑者は、思わず口にしてしまった

 あまりに動揺する妻を見た呂容疑者は「冗談を言っただけだよ。おれがやったんじゃない」と即座に否定、その後は妻に対し一度も犯行を認めなかった。だが、呂容疑者は他の親せきにも同じことを話し、こうした情報が捜査当局に伝わったという。(共同)

しかし捜査当局にどうやって伝わったんでしょうか。妻や親戚といっても容疑者の両親は

「息子がするはずない」…毒ギョーザ容疑者の両親

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100328-00000694-yom-int
 【石家荘(中国河北省)=関泰晴】中国製冷凍ギョーザ中毒事件で、ギョーザに殺虫剤メタミドホスを混入したとして中国の警察当局に逮捕された呂月庭容疑者(36)の両親が28日、河北省石家荘の山村にある自宅で本紙の取材に応じた。

 両親は、「息子がそんなことをするはずはない」と、信じられないという様子で語った。

 呂容疑者が育ったのは石家荘中心部から西へ車で約2時間の貧村。低い山の斜面を切り開いて作った実家は土壁づくりで、電気は通っているが、家具は寝台と机だけ。段々畑でトウモロコシを栽培する父親(66)と耳の不自由な母親(61)が2人で住んでいた。父親は事件について、「字が読めず新聞も見ないので息子が逮捕されたという報道は知らなかった」と話した。

 父親によると、幼いころの呂容疑者は「性格も優しく、おとなしい子」で、地元の中学卒業後、農業を手伝い、20歳で石家荘市の市街地に出稼ぎに出た。24歳で結婚後、現在は妻(37)、長女(11)、長男(7)の4人暮らし。1年に2、3回は家族を連れて実家に帰り、年収2000元(約2万6000円)前後で生活が苦しい両親に小遣いを渡す側面もあったという。

 最後に実家を訪れた今年2月の春節(中国の旧正月)時には、普段と変わらず、仕事や生活の不満を口にすることはなかったという。「息子に人に言えない不満や苦悩があったとは思いもしなかった。犯罪が事実であれば、かける言葉もないが、きちんと罪を償ってほしい」と父親は語った。

と少なくとも家族会議のようになって自首をすすめたとかそんな感じではありませんね。話を聞いたという親戚は容疑者の両親になぜ何も話さなかったんでしょうか(まぁこの両親の話が信じられるとしてですが)。

しかし犯行の実行は
<中国毒ギョーザ>押収注射器に殺虫剤 特殊な極細針

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100327-00000048-mai-cn
 【北京・浦松丈二】中国製冷凍ギョーザによる中毒事件で、逮捕した製造元の天洋食品(河北省石家荘市)の元臨時従業員、呂月庭容疑者(36)周辺から、一般に出回っていない直径0.2ミリ以下の極めて細い特殊な注射針を中国警察当局が押収していたことが27日、分かった。事件の計画性を示す証拠として、注射針の入手経路を詳しく調べている模様だ。

 日本側捜査当局によると、呂容疑者は同社の食堂を管理していたが、「長期間、臨時従業員として勤務しても正社員にしてもらえなかった」などと供述している。中国捜査当局は、下水道から中毒事件で検出された有機リン系殺虫剤メタミドホスが付着した注射器2本を押収した。

 天洋食品関係者によると、押収された注射器の針は、昆虫の標本作製やマウス実験などに使われる極めて細いタイプだった。中国側捜査当局は、呂容疑者が工場の冷凍庫に保管された製品に段ボールの外側から注射器で殺虫剤を注入したとみて、再現実験などを続けてきた。

 しかし、天洋食品がある石家荘市の薬局で売られている最も細い医療用注射針は直径0.25ミリ。さらに細い0.2ミリ以下の注射針が使われたのは、殺虫剤混入でできる段ボールや包装袋の穴を小さくし、流通段階で発見されないようにするためとみられる。

 事件発覚直後、日本では、完全に密閉された包装袋の内側から殺虫剤が検出されたと捜査当局が公表し、中国側の工場生産ラインでの毒物混入が疑われた。一方、中国側は生産ラインは厳格に管理されていたと反論し、日中双方の感情対立につながった経緯がある。

 しかし、その後の中国側の再現実験で、包装袋には極細の注射針による小さなキズがある場合、そこから殺虫剤が浸透することが判明。実験は、製造元工場の冷凍庫内と同じ条件下で極細の注射器を使って行われたという。

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と計画的だったようです。

また朝日新聞を読むと様子が違います。
ギョーザ事件容疑者「学費の工面に苦労」 義父母語
http://www.asahi.com/international/update/0327/TKY201003270419.html
2010年3月28日6時34分

 【石家荘(中国河北省)=峯村健司】中国製冷凍ギョーザ事件で拘束された製造元の天洋食品(河北省)の元臨時工員、呂月庭容疑者(35)の義父母が27日、朝日新聞の単独取材に応じた。呂容疑者には小学生と幼稚園の子どもがいたが、「長年働いても給料が増えず、子どもの学費を払うのが困難だった」と述べ、生活苦と会社への恨みが動機だった可能性を示唆した。

 義父母宅は、天洋食品から北に約30キロ離れた畑の一角にある古いれんが造りの農家。呂容疑者はここに戸籍を置きながら、工場近くに住んでいた。義母は「仕事と子育てに忙しくほとんど帰ってこなかった。貧しい農家に住むのが嫌だったのだろう」と話す。

 食堂の責任者として妻とともに1日13時間以上働き続けたが、月給は800元(約1万円)前後。ほとんど昇給がなく、業績が悪いと給与がカットされることもあったという。天洋食品は事件当時約850人の臨時工がいたが、平均勤続年数は2年弱。夫婦で10年以上働き続けた呂容疑者は異例だった。勤務の年数や態度によって臨時工から給料が数倍に増える正社員に昇格できるが、かなわなかった

 呂容疑者は地元警察当局に対し、動機について「こんなに長期間、一生懸命働いても自分と妻を正社員にしてくれない会社に強い不満があり、絶望的な気持ちになった」と供述した。

 一方、日本の警察庁によると、拘束容疑は有毒物質の混入など、公共の安全に危害を加えたりした際に適用され、死刑もありうる「危険物質投与」の罪

また同じく朝日新聞
「有罪なら命で謝罪」むせび泣く父親 ギョーザ事件

http://www.asahi.com/world/china/news/TKY201003280284.html 
【石家荘(中国河北省)=峯村健司】中国製冷凍ギョーザ事件で拘束された製造元の天洋食品(中国河北省石家荘市)元臨時工員、呂月庭容疑者(35)の両親が28日朝日新聞の取材に応じた。中国公安省は呂容疑者が「事前に犯行を親族にほのめかした」ことを拘束の根拠としているが、父親は「息子からは一切聞いていない。罪は犯していないはずだ」と訴えた

 石家荘市から南西に約50キロ離れた山間部。周囲にはトウモロコシ畑とれんが積みの家が点在する。けもの道を約30分かけて登ると、呂容疑者の実家にたどり着いた。

 出迎えてくれた呂容疑者の母親にあいさつすると、答えがなかった。「妻はろうあ者なんだ」と、石造りの居宅から出てきた父親(66)が説明した。まだ事件のことを詳しく伝えていないという。母親はできたばかりのトウモロコシのかゆを勧めてくれた。

 呂容疑者はこの家で両親と姉と暮らし、中学卒業後、農業を手伝っていた。「軍役についた」という一部報道があったが、父親によると20歳過ぎになって天洋食品に出稼ぎに出ただけ。家に水道や電話はなく、年収は2千元(2万7千円)余り。20アールほどの畑と8羽の鶏が生活の糧だ。

 6畳ほどの居室に通してくれた。壁一面に、呂容疑者が家族と一緒にいる写真が飾られていた。父親は、呂容疑者が天洋食品の同僚とおさまった写真を指さしながら言った。「息子は優良国営企業天洋食品に働いていることを誇りに思っていた」

 呂容疑者は1カ月前の春節旧正月)休みに妻と2人の子と帰郷した。数日間滞在したが、ふだんと変わった様子はなく、ギョーザ事件は全く話題に上らなかった。両親が事件を知ったのも中国メディアが報道した27日のことだ。

 「小さい頃からおとなしく優しい子だった。愛する天洋食品に迷惑をかけるようなことをするわけがない」。それまで温和に話していた父親が、むせび泣きつつ訴えた。

 近所の評判は、「礼儀正しい」「親孝行」とすこぶるいい。近くに住む義兄(42)は「子どもの頃、鶏も殺せないような小心者で、めったに怒ることもなかった。そんな凶悪な事件を起こせるわけがない」と強調する。

 記者の帰り際、父親は言い添えた。「日本の被害者の方には本当に気の毒に思う。万が一、司直が有罪の判断を下せば、私と息子の命を捨てて謝罪したい」。見送りに来た母親に礼を言い立ち去ろうとすると、固く手を握られた。何かを訴えたいかのように、うなり声を上げ、大粒の涙をこぼした。

読売新聞と同じ28日でもこの違い。なんかヒューマニズムの合間にこの容疑者を殺してしまえば丸く収まると言いたげな、恐ろしい感じがします。

一つこの事件に関係する事項として知っておいた方がいいと思うのは、

数日前のエントリ
中国、18分野の報道禁止 グーグル撤退直前に通達
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20100325/p3

人民元の切り上げをめぐる対中批判や食品安全事件など、18分野の報道や独自取材を禁じる通達を報道各社に出していた

基本的に新華社通信の記事だけを使うよう定め、評論記事を書く場合は「米国の対応を批判する内容にするように」と強調

だそうです。このタイミングで容疑者逮捕はおかしいと僕は思います。皆さんはどうですか?