中国式「資源」獲得術 「真珠の首飾り戦略」のどかな港が要衝に

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100402-00000503-san-int


パキスタン南西部のグワダル港。ペルシャ湾に近い要衝で、中国の支援により開港した(写真:産経新聞

【巨竜むさぼる】第3部(1)

 コバルトブルーの海、風や波の浸食によって削り取られ、そびえ立つ白い砂岩の壁。山岳地のパキスタンのイメージとは大きくかけ離れた、地中海の雰囲気を漂わせた風景に驚いた。

 パキスタン南西部バルチスタン州の港町グワダル。

 湾内には数多くの小舟が浮かぶ。浜では漁師が手作りで船を造っていた。町の道路をロバに引かれた荷車が走る。3月中旬に訪れたグワダルには、ゆったりとした時間が流れていた。

 しかし、世界の石油タンカーが出入りするホルムズ海峡に近い戦略的要衝で、周辺には地下資源も眠る−そんなグワダルが中国にとって、「真珠の一粒」に映らないわけがなかった

 真珠の首飾り」戦略−。パキスタンスリランカバングラデシュミャンマーなどインド洋沿岸国の港湾建設を積極支援する中国の海外戦略を指す。これらの港湾を“真珠”にたとえると、ちょうど、インド亜大陸を取り囲む“首飾り”のように見えるのだ。

 中国が拠点作りを進める理由としてはまず、資源エネルギーの供給元である中東・アフリカ諸国から中国に至る海上交通路(シーレーン)の安全確保がある。

 一方で、これらの港湾施設の一部は軍艦艇の燃料補給や修理も可能とされ、空母を備えた外洋型海軍を目指す中国の軍事拠点にいつか化けるのでは−との懸念も国際社会には根強い

 こうした中、中国の支援で3年前に開港したものの、これまでベールに覆われていたのが要衝グワダルだった。

 ■ルート確保へ巨額資金

 パキスタン南西部グワダルの港湾建設計画は、1992年に当時のシャリフ首相がぶち上げた。

 だが、グワダルの港湾関係者によると、パキスタン政府は資金調達のめどが立たなかったため、「常に資金援助をしてくれる国を探していた」という。

 そこに2001年5月、パキスタンを訪問した中国の朱鎔基首相(当時)が、グワダル港整備への支援を約束。02年3月には正式な支援内容などが決まり、計画は実現に向けて一気に動きだした。

 01年9月11日の米中枢同時テロを機に、アフガニスタンパキスタンで影響力を強める米国の存在が、中国の動きに拍車をかけたのは想像に難くない。

 第1期工事の総額は2億4800万ドル(約230億6千万円)。そのうち、パキスタン政府の負担は5千万ドルだけで、残り1億9800万ドルは中国が無償供与と借款などで提供した。

 工事は中国港湾工程公司が受注し02年に着工。04年には突然、水深(12・5メートル)を2メートル深くすることが決まり、中国が追加支援して07年、開港にこぎ着けた。さらに停泊所を拡張・整備する計画や、石油貯蔵施設の建設計画などもある。

 パキスタンと中国両政府の思惑が一致したのがグワダル港建設だった」

 グワダル在住のパキスタン人ジャーナリスト、ナシール・ラヒム氏は、港湾建設計画をこう表現する。

 中国にとって頭痛の種は、米国の影響力が強く、有事の際には封鎖されかねないマラッカ海峡。同海峡を通過せず、中東やアフリカで調達した資源エネルギーを中国まで輸送できるルートを一つでも多く確保する必要があった。

 そこに、ペルシャ湾に近い戦略的要衝なのにパキスタン政府の支援が行き届かず、発展から取り残されたバルチスタン州グワダルがあったというわけだ。

 グワダルの北東2500キロ先には中国新疆ウイグル自治区カシュガルがある。パキスタン側の説明によると、同国と中国政府は、グワダルと新疆ウイグル自治区を結ぶ道路の拡幅や鉄道整備について検討中だ。パイプラインを通じてイラン、カタールの石油、天然ガスを同自治区まで運ぶ計画も取りざたされている。

 バルチスタン州はパキスタン国土の4割を占めるほど広大だが、人口は全体のわずか5%。英領インドからパキスタンが分離独立した際に、バルチスタンのそれぞれの藩王国も英国からの独立を表明したものの、パキスタンに併合されてしまった。それ以降バルチスタンでは50年以上にわたって独立運動が続いている

 実際、グワダルでパキスタン国旗を見かけることはほとんどない。市場の店頭には、バルチスタンの独立を掲げる武装組織のポスターが堂々と張られている

 このような政府と住民の緊張関係は生活に跳ね返る。バルチスタン州はパキスタン国内でも貧困世帯が特に多くインフラ整備が遅れている。グワダルでも電気や石油を隣国イランから購入しているありさまだ。

 パキスタン側には、中国マネーによる港湾整備などを通じて、こうした地元の不満をやわらげようという思惑があったわけだ。

 「グワダル港は百パーセント商業港で将来、中国による軍事的利用はありえない

 グワダル港の管理に当たる連邦政府・グワダル港湾局の運営部長で、元海軍艦長のアブドュル・ドュラニ氏はこう断言する。

 だが、純粋な商業港としては疑問符が付く。07年3月の開港以来、今年1月現在までに入港した83隻はすべて、パキスタン政府がらみの船舶だった。

 ジャーナリストのラヒム氏は「自分が作った店に、両親が買い物にくるようなものだ」と苦笑し、「どこが完全な商業港なんだ」と指摘する。

 しかも、政府による再三の要請にもかかわらず、商業港を自称するグワダル港にはいまなお、海軍が居座っているのだ。

 中国は資源エネルギーの獲得だけではなく、輸送路の防衛にも躍起となっている。第3部では港湾整備の現状や、インド洋沿岸から昆明までのパイプライン建設、そして中国内陸部の資源事情について報告する。(田北真樹子)

【関連記事】
・“チャイニーズ・ビジネスマン”24時間戦えますか?
・中国がモデルになっては…
・【巨竜むさぼる 中国式「資源」獲得術】第2部 親中の現実(2)
・親中の現実、アンゴラは脱「中国一辺倒」
・「奴隷なみの扱い」中国への反発高まるザンビア
・資源求め拡大するチャイナフロンティア


大きな地図で見る
2001年5月に中国がすでに支援を約束していたことに驚きます。日本はこういう危険なところには金を出せないでしょうね。しかし囲まれるインドにとってはたまったものでは無いですね。ところで居座ってる海軍ってパキスタン海軍なのでしょうか中国軍なのでしょうか、政府の言うことを聞かないって、どうなんでしょうか。

以前こういう記事もありました。
石油パイプライン建設参画 中国、マレー半島でも
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20090815/p3
西気東輸とかともからんでくるんでしょうか。