デモ頻発カシミール 発火寸前の“火薬庫”

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100716-00000621-san-int
 【ニューデリー=田北真樹子】インド北部ジャム・カシミール州の夏の州都スリナガルで、6月以降、住民らによる激しい反政府抗議デモなどが続いており、政府は約20年ぶりに現地に軍を派遣して事態の沈静化を図っている。同州はインドとパキスタンが領有権を争う南アジアの“火薬庫”。同州が混乱すれば、帰属問題は解決済みとするインドの立場は、住民の意思による解決を主張するパキスタンに脅かされかねない。両国の思惑のはざまで、住民は不安定な生活を強いられ、怒りを募らせている。

 現地からの報道によると、16日、スリナガルを含むカシミール渓谷地域には終日、外出禁止令が出されたイスラム教の礼拝後に、分離独立派が主導する反政府抗議行動が予定されているからだ。治安当局は警戒を強め、現地はかなり緊迫しているもようだ。

 スリナガルでは、気候が穏やかになる夏場の反政府抗議行動は珍しいことではない。だが、先月11日、スリナガル市内で17歳の少年が学校からの帰宅中に、中央警察予備隊CRPF)が発砲した催涙弾に当たって死亡し、この事件が住民たちの怒りに火を注いだ。

 それ以降、投石などによる住民の抗議行動が頻発化し、その度にCRPFの攻撃で住民が死亡する悪循環が続いているCRPFの発砲による住民の死者数はすでに15人以上に上っている。カシミール渓谷地域に住む住民の大半はイスラム教徒だ。多くの住民は中央政府から派遣されているCRPFなど治安当局を信用しておらず、むしろ不法な逮捕や暴行の挙に出ていると憎悪を募らせている

 こうした状況に危機感を募らせた州政府は、中央政府に軍の派遣を要請中央政府は今月7日、あくまでも「抑止力」として軍を派遣した。現地では外出禁止令も出されたため、経済活動は停止状態に追い込まれた。住民は、中央政府に泣きついた州政府も嫌気しており、外出禁止令を無視して、各地で座り込みなど抗議行動を続けている

 カシミール問題は、15日にパキスタンの首都イスラマバードで行われた印パ外相会談でも取り上げられ、双方が信頼醸成に向けた行動を取っていくという方針では一致した。だが、その後の共同記者会見では、各論をめぐる相違点ばかりが浮き彫りになった。

 インドのクリシュナ外相は、2008年から09年にかけて、パキスタンからの侵入者は40%増だったとの数字を挙げ、「侵入者は現地の情勢を不安定化させるために送り込まれている」とパキスタンを批判した。これに対し、パキスタンのクレシ外相は即座に「侵入者を送りこむことはパキスタンの方針ではない」と否定した。だが、パキスタン側には「同州から最後のインド兵がいなくなるまでジハード(聖戦)を続ける」と、住民たちを扇動する勢力が存在するのも事実だ。

 一方、州民の思いはというと、カシミール渓谷地域の住民の間には、分離独立を希望する声が多いようだ。だが、ヒンズー教徒が多い別の地域では、インド領としてとどまることを希望する声が強いといわれる。印パという国家レベルだけではなく、州レベルでも住民の思いが対立するだけに、“火薬庫”をめぐる問題は極めて複雑だ。

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領土問題はどこも大きな問題ですね。悪循環が止まればいいのですが。