【ベトナム・インドシナ】米越が緊密化、国交正常化15年:安全保障と経済軸に

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100726-00000007-nna-int
 国交正常化から15年。ベトナムと米国が2国間の連携をさらに強化する方針だ。ファム・ザー・キエム副首相兼外相は22日、東南アジア諸国連合ASEAN)地域フォーラム(ARF)で訪越した米国のヒラリー・クリントン国務長官ハノイで会談。幅広い分野で両国関係を強めていくことで合意した。過去には長い戦争の歴史を持つ両国だが、現在は南沙諸島など領土問題の対中国カードの切り札として米国のパワーを利用したいベトナムの意図が見える。一方で、経済関係も強化。日本の存在感は相対的に薄まっている印象すらある。

 ベトナムと米国は1995年7月、外交関係を樹立。その後、2000年11月にはクリントン国務長官の夫、ビル・クリントン大統領(当時)が、76年の南北ベトナム統一後、米国の大統領として初めてベトナムを訪れるなど、これまでに着々と関係を築いてきた。クリントン国務長官自身も、夫の00年の訪越の際に、娘とともに、ベトナムを訪れている。

 今回、ベトナム側がとりわけ期待を示したのは、経済分野における米国とのさらなる連携進化だ。キエム副首相兼外相は、米国がベトナム市場に対する評価を高めるとともに、ベトナムへの一般特恵関税(GSP)の適用や、同国製品への反ダンピング税の賦課といった輸出障壁の撤廃を求めた。

 一方、クリントン国務長官ベトナムとの関係構築を今後も前進させる方針を表明。「ベトナムとの関係をオバマ政権は今後も深めていく方針だ」と強調した上で、ベトナムの急速な発展や、東南アジア諸国連合ASEAN)における役割の拡大を高く評価した。

 さらに、米国などが推進する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、ベトナムの締結をサポートする意向を表明した。

 ■メコンの環境に協力

 米国はベトナムなどメコン地域の環境分野への支援を継続する意向だ。クリントン国務長官は昨年7月、メコン川下流域に位置するベトナムカンボジアラオス、タイの各外相と会談。その中で、米国と4カ国が共同でメコンデルタ地域の保健医療、教育、インフラ、環境関連分野の改善・開発を目指す「メコン川下流域イニシアチブ」が打ち出された。

 今回、同国務長官はこの一環として環境関連分野に引き続き協力する意向を表明。メコンの環境問題について、「(環境)資源を管理・保護することは国境を越えた挑戦だ」と、各国の積極的な協力を呼び掛けた。

 米国は今年、メコン川下流域に位置する国々の支援に向け、計2億2,000米ドルの予算を割り当てており、このうち3分の2は環境、保健医療、教育関連向けに振り向けられるという。

 クリントン国務長官はまた、こうした動きを後押しするため、ミシシッピ川委員会を中心とする米国側とメコン川委員会(MRC)の「姉妹川」関係の構築も合わせて発表した。

 日本も鳩山前首相が昨年11月、日メコン首脳会談で、グリーンメコンを唱えているが、中国の影響力が増すメコンエリアで存在感を示せないでいる日本に代わり、米国がその地位を占めようとしているかのようだ。東アジアサミットに、米国とロシアが加盟することが今回のASEAN外相会議で事実上決まったこと自体がすでに、日本の影響力低下の兆しともいえる。

 ■南シナ海の安全保障で連携

 今回、キエム副首相兼外相とクリントン国務長官は、米国との関係強化が2国間だけにとどまらず、アジア太平洋地域における多国間の協調を後押ししていると確認した。クリントン国務長官には、南シナ海地域の安定のため、米国の存在感を高める意図もあり、各会合や記者会見場でも公言している。

 キエム副首相兼外相は、ベトナムの社会開発に対する米国の取り組みに感謝の意を示すとともに、今後のさらなる支援を呼び掛けた。

 キエム副首相兼外相とクリントン国務長官は会談後、2国間の外交関係樹立15周年を祝う記念に式典に出席した。式典で、キエム副首相兼外相は「われわれは過去を打ち破り、未来に向けて光り輝くような関係を築いているところだ」と言及した。

 また今回、クリントン国務長官は、米国がベトナムにおけるHIV感染者・エイズ患者の救済や、感染拡大を防ぐための取り組みを引き続き支援することを盛り込んだ覚書(MOU)に署名したという。

 一方、両国間には長年の課題もある。ベトナム戦争当時に米軍が散布した枯葉剤エージェント・オレンジ」の被害問題だ。枯葉剤問題について、ベトナムへの責任や補償を公式には認めていないが、キエム副首相兼外相は今回の会談で、被害者の救済には米国のサポートが重要との見解を表明。問題解決に向けた積極的な協力を要請した。

 ■越は人権守れ=クリントン

 ただ、米越関係がすべてがうまくいくとは限らない。

 米国側からは今回、ベトナムに対して強い要求が突きつけられた。それは、人権問題だ。クリントン国務長官は、反体制派の受刑者らの人権を守るように要請。米国はベトナムに人権意識を高めるよう引き続き働き掛けるとした。

 また、今回、在越米国商工会議所でキエム副首相兼外相とクリントン国務長官を招いて、昼食会が開かれたが、ここでちょっとしたハプニングが起きた。

 昼食会の場で、キエム副首相兼外相は、今月31日に結婚予定のクリントン国務長官の娘チェルシーさんのためにテーブルクロスなどをプレゼントし、祝福の気持ちを表した。しかし、これを受けたクリントン国務長官は「公式の場で、(個人の)結婚を祝うなど、良識に欠けることだ」との認識を示したという。

 ワシントンポストベトナムの声放送(VОV)、サイゴンタイムズなどが報じた。

後から編集してますが、2010/07の記事です。
メコンでも色々ありましたね。日本、中国、米国がこの地域に興味を持っていると言うことですね。エントリが長くなりそうなので分けました。
東アジア共同体設立で一致 日メコン首脳会議、定例化へ
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20091107/p1