<赤十字>タリバン兵に人道救命訓練…中立確保狙い

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100814-00000002-mai-int
 【ジュネーブ伊藤智永】米軍が3万人を増派しイスラム武装勢力タリバンの大規模な掃討作戦を展開するアフガニスタンで、赤十字国際委員会(ICRC・本部ジュネーブ)が、タリバン兵士らを対象に人命救助の組織的な訓練を実施、今年4月にも行ったことがわかった。兵士は再び戦闘に復帰することもあるため、米欧の一部には「テロとの戦いの足を引っ張るな」との批判もあるが、赤十字は「政治的に正しいかどうかは問題でない。国際人道法(ジュネーブ諸条約)に基づく傷病者保護の任務のためだ」として紛争が続く限り続ける方針だ。

 ◇「対テロ戦に妨げ」批判も

 赤十字本部でアフガン支援を統括するリッツ氏によると、訓練を始めたのは06年。アフガンでは赤十字スタッフが負傷者に直ちに接触できない場合が多いため、兵士を搬送するまでの応急措置を教えることにした。

 厳選された参加タリバン兵は計70人余。場所や回数は明らかにされていない。北大西洋条約機構NATO)軍には事前通告する。

 訓練は3日間。初日に、兵士・市民、敵・味方の別なく負傷者を助けなければならない国際人道法の内容と赤十字中立主義について説明し、残り2日で止血法など基本的な救命術を教え、必要な医療品を支給する。

 欧州で活動の一端が報道されるとネット上に「なぜタリバンの肩を持つのか」「人道活動でもやりすぎ」などの意見が飛び交った。

 リッツ氏は「訓練はアフガン軍・警察にも公平に行っている」と、タリバンの特別扱いでないと強調する。

 赤十字は1979年の旧ソ連のアフガン侵攻以来、同国で人道支援活動を開始。90年代末には同国の大半を実効支配していたタリバンとも一定の信頼関係を築いていた。

 しかし、01年の米同時多発テロで米英などが「対テロ戦争」を始めると情勢は一変。国際テロ組織アルカイダの影響を受けたタリバンは、03年には現地で活動中の赤十字職員を襲い、殺害する。明らかな狙い撃ちだった。

 ブッシュ米大統領(当時)が「敵か味方しかいない」と戦意をあおり、米軍がアフガンに進駐、中立主義に一定の理解を示していたタリバンは、赤十字をも拒絶するようになったのだ。赤十字は、人員の大幅縮減を余儀なくされ、ようやく活動再建が本格化したのが06年だった。

 「あらゆる当事者との対話が必要。政府軍、警察、NATO軍、もちろんタリバンとも会い、赤十字はどの立場であれ被害者のため働くことを理解してもらう」(リッツ氏)

 中核となる赤十字の病院12カ所以外に、危険な地域には応急措置の拠点6カ所も設営した。兵士への訓練は、さらに危険な地域で、自ら救命活動をさせようという試みだ。

 タリバンとの関係も着実に修復していった。07年に韓国人キリスト教徒23人がタリバンに拉致された事件では、赤十字が韓国政府とタリバンを仲介し、人質解放に貢献した。

 赤十字世界保健機関(WHO)のポリオ根絶計画を支援し、南部のタリバン支配地域で年3〜4回、住民への予防接種を行うための許可証をタリバンから発行してもらっている

 5カ所だった赤十字事務所は12カ所に増えた。7年前に殺された同僚が働いていた中部ウルズガン州にも今年、開設。現地職員は1500人を超える。

 「赤十字への協力でタリバンが政治的な正統性を手にすることはない。我々が信頼を取り戻したのは、中立の立場が認められたからだ」(リッツ氏)

 開戦から約10年。アフガン戦争における赤十字の挫折と再起は、「テロとの戦い」が中立人道主義にとっても、新しい試練であることを物語っている。

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タリバンをただ敵視すればいいという見方を変えるような試みは歓迎します。
国連、45個人・団体の制裁を解除 タリバンとアルカーイダ
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20100803/p1
も参照。