<中国>「レアアース対日禁輸」と米紙報道 通関がストップ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100923-00000065-mai-cn

 【井出晋平、北京・浦松丈二】ハイブリッド車の製造などに不可欠なレアアース(希土類)について、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は23日、中国当局が日本向け輸出を禁止したと報じた。また、中国でのレアアースの通関手続きが21日、ストップしたことがわかった。日本の大手商社が明らかにした。通関が突然、認められなくなるのは極めて珍しい。

 禁輸が事実なら、尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近での衝突事故で中国が新たな対抗措置に出たことになる。温家宝首相は21日、事故で「新たな行動を取る」と警告していた。

 中国は22〜24日、中秋節の連休で、税関も一部を除いて休んでいる。差し止められたのは実質的には21日だけだが、日本の大手商社幹部は「たまたま税関の事務作業が滞っただけなのか、禁輸措置なのかは、連休が明けてみるまで分からない」と話した。

 日本政府は25日にも中国側に通関停止について照会する方針。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、匿名の業界関係者の話として禁輸措置を報じた。禁輸措置は今月末までで、その後は日本側の対応次第で継続されるかどうかが決まる。29日には衝突事件で逮捕された中国人船長の拘置期限を迎えるため、日本側に圧力をかけた形だ。

 一方、ロイター通信などによると、中国商務省報道官は「レアアースの対日輸出は禁止していない」と同紙報道を否定した。

 しかし、AP通信によると、中国当局は日本向けにレアアースを輸出している主要企業に対して輸出しないよう圧力をかけている。日本に輸出した場合、当局が割り当てる輸出許可枠を削減すると示唆しているという。

 中国政府は21日には、旅行各社に訪日ツアーの販売自粛を要請し、各社は事実上、ツアーを販売できなくなっている。レアアースでも、日本側に圧力を加えるため、中国側が事実上の禁輸措置に踏み切った可能性は否定できない

 業界関係者は毎日新聞の取材に「輸出規制で品薄になった時期に情報が流れ、価格上昇などの影響が出そうだ」と話した。

 中国は今年7月、今年のレアアース輸出許可枠を前年比4割減の約3万トンに削減すると決定。今年8月に開催された日中ハイレベル経済対話でも削減見直しが協議された

 ◇ことば・レアアース

 生産・流通量の少ないレアメタル希少金属)のうち、性質が似た17元素の総称。他金属と混ぜると磁力が強まったり、耐熱性が高まる特性があり、ハイブリッド車やパソコン、デジタルカメラなどハイテク製品の部品に不可欠な金属だ。産地が偏在しており、中国が世界生産量の9割超を占めている。

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結局止まったのはまだ1日だけなのですが、日本側はかなりの騒ぎようの気がします。やはり資源が無く輸出できなければ生命線に関わるという気持ちが強いのでしょうか。

ただ、尖閣諸島での拿捕が起こる前の8月からレアアースでは日中が揉めていたのは確かです。
2010/08
中国首相、レアアース輸出規制は見直さない考え

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100829-00000551-yom-bus_all
 【北京=宮井寿光、植竹侯一】中国の温家宝首相は29日、「日中ハイレベル経済対話」のため中国を訪問中の岡田外相や直嶋経済産業相ら日本の6閣僚と北京市内で会談した。

 岡田外相らが、中国が7月に表明したレアアース(希土類)の輸出規制を見直すよう求めたのに対し、温首相は「かつて乱開発や密輸が行われた中で規制を始めた」とし、規制を見直さない考えを改めて示した。

 ただ、「輸出を停止することはない」とも述べた

 レアアースは、ハイブリッド車(HV)や省エネ家電の電子回路に必要で、日本は中国からの輸入に頼っている。

輸出を停止することは無いというのが本当なら、量が減り価格が上がるという程度でしょうか。それに関しては2009年から議論があったようですが。
2009/11
中国のレアメタル規制、米がWTOにパネル設置要請
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20091105-OYT1T00549.htm

 【ワシントン=岡田章裕】米通商代表部(USTR)は4日、中国によるレアメタル希少金属)などの輸出規制が世界貿易機関WTO)の協定違反にあたるとして、WTOに紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請したと発表した。

 米国と欧州連合(EU)は6月23日にWTOに提訴し、中国と協議を重ねてきたが決裂。EUとメキシコも加わって、パネルに判断を委ねる。

 USTRは「金属素材の輸出規制は国際市場をゆがめ、中国の産業に有利に働いている。米国の製造業と労働者にとって極めて深刻な問題だ」と主張している。

 対象品目は、ボーキサイト、シリコン、マンガンマグネシウムなど9品目の金属素材。中国が有数の産出国で、中国以外からの調達が難しい品目もある。

 米欧は、中国が輸出規制により自国企業が安価に素材を調達できる環境を作り出し、不公正な貿易をしていると批判している。
(2009年11月5日12時02分 読売新聞)

今になって日本もWTO提訴に乗り出すようですね。ここら辺は米欧と足並みをそろえていけるんでしょうか。

話は変わりますが、朝鮮日報
ピンチにチャンスを見いだす国:海外から穀物を調達する日本
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20090127/1233067526
というようなピンチにチャンスを見いだす国というシリーズがありました。このときは大豆の98%の輸入を頼っていた米国に輸出を止められ、ブラジルの不毛の地を開拓したという話でしたが、今回もそういう視点でやっていけるのではないかというのが次の記事です。
【日本版コラム】中国のレアアース輸出規制に見る「資源ナショナリズム外交」への対処法

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100830-00000003-wsj-bus_all
尾崎弘之・東京工科大学教授

中国によるレアアースの輸出規制

 8月28日、日本、中国の主要閣僚が経済課題を話し合う「第3回日中ハイレベル経済対話」が北京で開催された。日本からは、共同議長の岡田克也外相ら6閣僚と3副大臣が、中国側は共同議長の王岐山副首相のほか閣僚級8人が出席した。会議では、環境・省エネなどの分野で協力関係を強化することで合意した。

 しかし、日本側が強く求めたレアアース(希土類)の輸出規制の緩和については、中国側が「環境保護と資源枯渇の懸念」などを理由に、「資源保護と国の安全保障上、規制はやむを得ない」との認識を示した。

 中国は7月にレアアースの輸出を昨年比で約4割削減すると発表している。輸出規制が続けば日本の電機メーカーにとって原料調達に支障を来し、大きな打撃となる。

資源ナショナリズム外交を嘆いても仕方ない

 この事例は、中国がハイテク機器の原料であるレアアースという切り札を用いて、日本から経済的、技術的な譲歩を得ようとしている、典型的な「資源ナショナリズム外交」である。

 資源が乏しい日本は、常に資源ナショナリズム外交に翻弄(ほんろう)される。石油輸出国機構(OPEC)諸国、天然ガスのロシア、レアメタルの中国など、過去に揺さぶりを受けた事例は少なくない。しかし、資源を持たない我が身を嘆いても仕方ない。重要なことは、資源ナショナリズムに対して、政府や民間レベルでどのように対処するかである。

レアアースとは何か

 まず、レアアースとは何かをおさらいする。レアアースとは、スカンジウムイットリウム、および原子番号57~71の元素の総称で、合計17元素を指す。希土類は、これら元素の酸化物のことである。

 レアアースは、電気機器の材料として幅広く使われている。例えば、プラズマディスプレー用蛍光体液晶テレビのバックライト用蛍光体、セラミックコンデンサー、センサー、燃料電池などが主な用途だ。

 レアアースの一部は、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)用モーターの重要な原料にもなっている。

 HVやEVに使われる駆動用モーターは、回転体の永久磁石と、固定部の電磁石を反発させて回転力を生む構造になっている。自動車用には強い磁力と耐熱性が要求されるため、回転体に永久磁石が使われることが多い。永久磁石には、レアアースであるネオジウムやディスプロジウムなどを原料とした磁石が使われている。

 現状は世界のレアアース生産の90%を中国が占め、需要の約50%が日本から来るといういびつな構造になっている。ところが、近年、中国の電気機器生産量が増えているため、中国がレアアース輸出の規制を始め、今回の混乱に至っているのだ。

資源ナショナリズム外交への対処法

 日本は資源ナショナリズム外交にどのように対処すれば良いのか。下記の三種類の方法が考えられる。

1) 技術と資源のバーター

 レアアースのように歴史が浅い資源は、資源保有国に実用化の技術やノウハウがないことが多い。埋蔵量が多くても、それだけでは宝の持ち腐れである。特に、自動車材料のように品質要求が高い分野に商品を提供しようと思えば、純度を高める高度な技術が必要である。

 そこで、資源をお金だけで買うのではなく、資源国が持っていない製品開発の技術を提供することで取引を行うのである。また、中国が懸念しているように、資源採掘に伴う環境破壊を防ぐことも重要である。

2) 長期的な「Win-Win」の仕組み作り

 中国も、日本が持つ製品開発の技術は欲しいと考えており、だからこそ、日本への輸出規制を取引材料に使っている。この場合は、両者で長期的な「Win-Win」の関係を構築することで局面を打開できる。

 例えば、資源開発の技術支援だけでなく、完成品を作る産業を資源国内で育成することを手伝うことが考えられる。この場合、日本は中核技術をブラックボックス化して、周辺技術の流出に留める戦略が必要になる。

 また、技術流出を懸念するところから一歩進んで、コストが安い中国で完成品を生産し、円高を利用して安い製品を日本に輸入して国内販売を拡大する戦略も有効である。

3) 代替資源の開発

 技術流出を100%止めることはできないし、資源国がその気になれば、いつでもドラスティックな輸出規制をかけることができるしたがって、レアアースの代替材料を使った研究開発を止めることはできない

 例えば、三菱電機は、EVモーターの回転体にも永久磁石ではなく電磁石を使う研究を行っている。回転体から磁気が漏れて回転力が弱まるのを防ぐため、酸化鉄を主成分としたフェライト磁石を使用するのである。

 また、アイシン精機京都大学は回転体に超電導材料を使う研究を行っている。金属を使う場合と比較して、超電導モーターは10倍程度の回転力が出ると発表されている。超電導はマイナス196℃以下の低温が必要なので、モーターとともに小型冷凍機の開発が必要となる。

 レアアースとEVモーターの関係は、資源ナショナリズム外交に翻弄されるほんの一例である。今後、このようなことはいつでも起き得る。そうであれば、異なった対処法を広く実行して、国や企業全体としてのリスク分散を考えることが重要である。

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外交的手腕も必要だとは思いますが、なんとか代替資源の開発や供給元の多元化などで乗り切って欲しいです。