「チリでは市民尊重」露政府の非情を嘆く声

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101014-OYT1T01154.htm
 【モスクワ=山口香子】チリ政府によるサンホセ鉱山の救出劇の成功は、世界有数の石炭輸出国・ロシアの国民に、人命を巡る自国政府の対応を思い起こさせている

 政権は世論への影響に神経をとがらせている模様だ。

 ロシア国営テレビは、13日から14日にかけ、「チリの奇跡」をトップニュースで報じた。現地にリポーターを派遣し、家族への取材を交えながら、喜びに沸く現場の様子を伝えた。しかし、同じ鉱山事故の問題を抱える当事者としての検証的な視点はほとんどない。14日付の露各紙も、事実のみを伝える地味な扱いだった。

 これ以外のメディアやネット上では、チリ政府の対応に照らして露政府を批判する声も出ている。独立系ラジオ局「エコー・モスクワ」で番組司会を務めるアントン・オレフ氏は「ロシアの炭鉱事故は、救出の可能性があっても捜索中止になることが多い」と述べ、「(チリ政府の)対応には、人間への愛情が表れている」と、ロシアの非情さを嘆いた

 独立炭鉱労働者組合のワレリー・ゾロタレフ書記長は別のラジオ局の取材に対し、チリ政府が行った救出作戦は、「ロシアでは望めない」と指摘。「チリでは、ロシアより市民が尊重されている」と述べた

 救出困難な環境に多数の生存者が閉じこめられた今回のチリでの事故は、ロシア国民に、2000年8月の原子力潜水艦クルスク沈没事故を想起させた。

 事故で沈没した後、内部には二十数人の乗組員が生存していたとされるが、露政府が各国の救援を断ったこともあり、乗員118人全員が死亡。今回の救出劇の後、ネット上には「チリの鉱山労働者になった方が、ロシアの原潜乗組員になるよりマシということだ」と皮肉る書き込みも出た。

 ロシアでは、安全設備の不備や規則違反が原因の炭鉱事故が頻発しており、今年5月には、国内最大の西シベリアのラスパドスカヤ炭鉱で2度の爆発があり、73人が死亡。18人が依然行方不明のままだ。地元では、安全対策の改善を求める労働者の大規模デモ行動も起きた。今回のチリの成功を受け、ネット上では政府や管理会社の対応を改めて問う声も出ている。
(2010年10月15日10時06分 読売新聞)

しかしチリの状況も必ずしも良いことばかりでは無かったという報道が入り始めてますね。
チリ作業員 69日ぶり生還 災い転じ政治利用?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101014-00000100-san-int
 ■大統領の支持率10ポイント上昇

 【サンホセ鉱山(チリ北部)=松尾理也】「私は国民に、偉大なことを成し遂げるよう求める。自然災害に立ち向かうだけでなく、さまざまな課題に対して」。落盤事故で地下に閉じこめられた作業員33人の救出作戦で、最初の1人となったフロレンシオ・アバロスさんが無事引き上げられた後のスピーチで、チリのピニェラ大統領は国民にこう語りかけた。「災い転じて…」とばかり、今回の事故を政権への追い風にしようとするしたたかさが目立っている

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 軍政終了後、左派政権が続いたチリで、ピニェラ政権は、20年ぶりの右派。発足直後は手探りでの政権運営を余儀なくされ、先行きもやや不安視されていた。

 そこに起こったのがサンホセ鉱山での落盤事故と、それに続く奇跡的な生存確認という一連の動き。対応を間違えれば政権の命取りになりかねない難題だったが、すぐに手厚い支援を投入し、逆に「巨大な政治的配当金」(米紙ニューヨーク・タイムズ)を得ることに成功した。

 しかし、この過程で作業員の家族らから「大統領は救出作業を政治利用している」との批判があがったことも事実だ。

 9月19日にピニェラ大統領が5回目の現地視察を行った際、3本目の縦穴の掘削工事が始まったことから一部の家族が「視察に合わせるため、工事がわざと遅らされた」と訴え、ゴルボルネ鉱業相が「大統領は事故当初から作業員の救出に全力を挙げてきた」などと強く反論する一幕もあった。

 もともと、チリ随一の大富豪として大統領の座を射止めたピニェラ氏は、鉱山労働者らとは相反する立場のはずだが、救出が行われた12日夜から13日朝にかけて、現場の鉱山労働者らと車座になり、ギターに合わせて合唱するなど、事故は両者間の距離を急速に縮める役割も果たしたようだ。

 大統領の支持率は、事故発生前から10ポイント上昇し56%を記録。一方で、鉱山業界に対する安全管理の不備などを厳しく指摘する姿勢も好感を持って受け止められており、念願だった鉱山税の導入にも弾みがつきつつある

もともとこのチリの鉱山は銅を掘っていて、過去二回の死亡事故を起こし閉鎖していたものが、安全性を確保されないまま採掘が再開され今回の事故に至ったと、テレビでやっていました。普段めったに見ないんですけど。

また朝日新聞(10月17日1面)によると、『サンホセで働くなら、墓地と棺をかったからにしろ』って冗談があるくらい事故が多く、他の鉱山より給料も高かったそうです。とは言えチリは銅の産出量世界一だそうで、そういう労働者がいてこそ自分たちの生活も成り立っているというのも否定できないわけで、難しいですね。