<北朝鮮>露派遣労働者の給与7割を搾取か

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中国延辺朝鮮族自治州、琿春市の防川から朝中露三か国の国境を望む。手前は中国、左手はロシア、右手に豆満江を挟んで北朝鮮となる。遠くに日本海も見える。2010年6月 撮影 李鎮洙(アジアプレス)

◇「党資金」の名目で天引き

(アジアプレス特約=「デイリーNK」カン・ミジン記者)近頃、ロシアへと派遣された北朝鮮森林伐採労働者の脱出が増加している理由は、派遣元の北朝鮮林業代表部による過度の賃金搾取にあると、実際の脱出者が証言した。

ロシアに森林伐採労働者として派遣され、その後脱出、最近になって韓国入国に成功したソン・キボク(仮名、48歳)氏は18日、デイリーNKとのインタビューに応じた。

ソンさんは「北朝鮮林業事業所では、月給の7割を『(朝鮮労働党)党資金』の名目で回収していく。死ぬ思いで働いた金のほとんどを奪われるので、(ロシアで)仕事をしたがる人は多くなかった」と語った。

北朝鮮林業代表部は過去、ロシアへと派遣する労働者の賃金の30%を「忠誠の党資金」との名目で天引きしてきた。しかし2006年に行った核実験により国際社会からの制裁が強化された2008年からは、その割合を70%に引き上げた

ロシアで森林伐採労働者がする仕事の内容は、運転、伐採、検尺(丸太の直径を測る)など大部分が肉体労働。働く内容によって毎月40〜100ドル程度を受け取る

しかし、実際に受け取る金額は12〜30ドル程度にとどまる。あまりにも少ない金額のため、故郷の家族にその都度送金することはできない。休暇で北朝鮮へと帰郷する同僚に、故郷の家族に渡してくれるよう、現金を預けることが多いという。

ソン氏は「冬には零下40度を越える寒さの中で仕事をしなければならず、その苦しみは口に表せないほどだ。それなのに月給もまともに受け取れないので、仕事をする意欲が全く出てこなかった」と振り返った。

脱出直前のソン氏の月給は30ドル。この程度の金額では、ロシアに出稼ぎに行くため幹部に渡したワイロ分の回収もままならない。ソン氏が林業事業所の党委員会に承認を受け、道党幹部部二課で最終承認を受けるまで、一連の手続きの過程で幹部に渡した金額は400ドルに達するという。

はじめはソン氏も"ロシアンドリーム"の夢を見ていたという。北朝鮮では通常、海外に派遣された労働者の家族は、一般の住民よりも良い生活ができるからだ。3年だけ死ぬ気で働けば、北朝鮮で10年分のお金を貯める事が出来ると考えていた。しかし、その実状はシベリアの極寒と同じぐらい冷酷だった。

◇ロシアの林業事業所は金正日総書記の資金源

ソン氏の証言によれば現在、北朝鮮労働者が派遣されているロシア内の森林伐採事業所は17か所にのぼる。規模により差はあるが、事業所ごとに1500〜2000人程度の労働者が派遣されているという。

これを元に計算すると、北朝鮮当局が各事業所からかき集めるおは最大14万ドルほどになると推測される。年間ではすべての事業所を合わせ、約2500万ドルを上回る金額を集めている算段になる。金正日総書記の立派な資金源であるといえる。

同氏は「月給の大部分を党資金として天引きされるため、事業所から離脱する労働者が増え始めた。私が知っている分だけでも、毎年平均30人はいる」と話した。

各事業所に組織された党委員会の態度も労働者の脱出の一因だという。零下30〜40度の寒さの中で常に凍傷の危険と隣合わせでいるが、労働者にはまともな治療さえしてくれないからだ。

同氏は「2006年に平安南道の徳川から来た森林伐採労働者が作業中、両足に凍傷を負ったが、満足な治療を受けることが出来ずに結局、両脚を切断しなければならなかった。見るに見かねた労働者たちが、事業所の党委員会に意見したが無視され、むしろ『本人の不注意による事故』と処理され、帰国措置を取らされた」と話した。

事業所の党委員会の主な活動は、労働者に対する思想教育と監視、「党資金」の徴収が全てだ。通常、支配人、党書記、保衛指導員、保安員が1人ずつ配置され、その下にいる行政幹部15人ほどで一つの企業所を管理しているといわれている。

労働者の生活は北朝鮮と全く同様だ。毎週、生活の総括をしなければならず、食事も配給制だ。事業所周辺の空地を開墾し、ジャガイモと麦を植え、不足した食糧を補充しなければならない

事業所から離脱すれば無条件で処罰を受ける。罪が重いと判断されれば、北朝鮮に召還され教化刑(日本の懲役刑にあたる)に処される場合もある。

同氏は「時には事業所から離脱し、近隣の動物を狩猟することで金を儲ける人もいる。しかし、これすらも一定額のワイロを幹部に渡し、目をつぶって貰う必要がある」と話した。

これはつまり、ロシアへと派遣されている森林伐採労働者たちが、党の名目で行われる給料からの天引きと、幹部たちへのワイロとで二重に苦しめられている状況を物語っている。しかし、北朝鮮への送還」という恐怖により、不満を口にすることもできない雰囲気の為、結果として脱出を敢行する労働者らが増えていると思われる。

同氏はまた「事業所から逃げれば、結局は韓国行きを選択する以外にはない。韓国に来た後も、同僚の事を思い出すと夜も眠れない」と吐露した。(ソウル=デイリーNK カン・ミジン記者)

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