スー・チーさん電話インタビューのやりとり

http://www.asahi.com/international/update/1124/TKY201011240479.html
2010年11月25日0時12分

 ◆スー・チーさんとの電話インタビューのやりとりは次の通り。

 ――スー・チーさんは23日、次男(キム・エアリス氏)との再会を果たしたが、今も軍事政権が拘束している2千人以上の政治犯は、家族と会うことすら許されない。

 当局が息子の入国を許可したことには素直に感謝を示したい。だからこそ彼と再会ができた。ただ、最も強調したいのは、拘束された人たちのすべてが家族と再会でき、幸せな人生を取り戻せるよう全力を尽くすということだ。

 ――解放された直後に行った演説に多くの人が集まった。若い人たちも多かった。

 その点が、これまでと違うところだ。今回は過去と比較にならないほど若者が多く、とても勇気づけられた。これほど多くの若者が政治プロセスに参加してくれたことに、とても感激している。

 ――スー・チーさんは、国民あっての政治プロセスを強調しているが、どう実現するのか。

 実行可能なことから始めている。今回の総選挙に参加した無党派候補や、政党に属さない人たちと協力を図る。私たちは人道プロジェクトなどの社会奉仕活動に力を入れており、参加者の多くに助け合うことを学んでもらう。自分たちの力でものごとを達成できるように協力したい。みなが共有する政治的目的(民主化)をともに実現したい。

 ――スー・チーさんが率いる国民民主連盟(NLD)から分派し、総選挙に参加した国民民主勢力(NDF)など、様々な勢力をどのように結集させるのか?

 民主主義の多様性を認めないといけない。民主国家なら世界各国どこでも一緒だ。日本にも多数政党が存在している。そして多くの異論が出る。人間である以上、反対意見がでるのは当然だ。重要なのは、国家に敵視されることなく異なる意見を主張できる、民主的な体制を作り出すことだ。意見が異なることと国を破壊することは違うと理解するべきだ。

 ――スー・チーさんの言う「国民和解」は、軍政を含むのか。彼らはあなたと対話すると思うか。

 軍人の思考の中には通常、「多様性」というものはない。しかし、そうした軍政であっても、民主主義に取り組んでいると言わざるをえない状況にある。たとえそれが、彼らが自称する「規律ある民主主義」のことであったとしても。今の世界では、独裁者でさえも民主的なルールが最も望ましいということを認めざるをえなくなっている。これが第一歩となる。

 軍政が適格性を持とうとするなら、民主主義が望ましいということを受け入れなければならない。もちろん、人々は私たちに対して「軍政との間には多くの相違があるのにどう和解できるのか」と尋ね続けるだろう。「私たちには和解に到達しなければならない相違があるからこそ和解を目指す」というのが私の答えだ。相違がなければ和解の必要は全くないだろう。

 ――これまで、軍政とはどう接触してきたのか。

 接触はしていない。軍政の高官レベルとの接触があったのか尋ねているのならば、全く接触をしていない。

 ――この10年ほどを振り返ってみたとき、何らかの譲歩が可能だと考えるのは楽観的すぎるだろうか。

 私は用心深い楽天家だ。人々が強く変化を望んできたことが、私を用心深い楽観主義にしていると思う。自宅軟禁から解放されて10日が過ぎたが、人々が変化を求めているということは明白だ。

 ――(軍政トップの)タン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長と対話したいと考えているか。

 本当の変化を起こそうとする立場にいる人とは、だれとも話したいと思う。

 ――何らかの譲歩をする準備はできているのか。

 対話というものを信じるなら、譲歩についても信じなければならない。譲歩するふりをして対話を求めるわけにはいかない。それは本当の対話たりえないからだ。何をもって到達点とするかはわからない。ただ、(対話ではなく)「交渉」に入っていくことはとても危険だ。

 ――メディアはしばしば、あなたは「柔軟性に欠ける」と指摘する。きょうの話はとても柔軟なように聞こえる。

 メディアがそう言うとき、私は「その事例を挙げてみて」と逆質問する。すると、普通は答えは返ってこない。柔軟性がないというのはどういうことなのか。例を挙げてほしい。柔軟性がないと思う何かを私がしたのか。

 ――ミャンマーに対する経済制裁の有効性に関してはどう考えているか。

 制裁に関しては1年前に軍政と話そうとしたことがある。私たちは一般の人々を苦しませている制裁を取り除くため軍政と共に取り組む準備をしてきた。しかし、軍政の反応は、私たちが期待していたものとはまったく違っていた。

 制裁は人々を苦しめている。私たちは状況を再検討しなければならない。もちろん、人々が惨めに苦しむようなことは避けたい。ある経済機関は、制裁がこの国の経済状況に対してほとんど影響を与えなかったと指摘している。もちろん、この問題に関しては、多くの異なった見解がある。

 ――貧しい人たちに対しての悪影響のことか。

 それは、まさに私が見極めたいと思っていることだ。繊維産業の工場が閉鎖され、多くの失業者が生まれたと言われる。統計によってその数は数万人だったり、数十万人だったりする。ただそれだけの失業者が出たというのは事実なのか。失業した女性はみな性産業に向かうと言う人もいる。これも極論だろう。

 ――ミャンマーにも大きな影響力を持つようになった新興勢力の中国やインドとどう向き合っていくのか。

 これまでも両国との対話を図ってきたし、両国に対話を持つよう働きかけてきた。

 ――両国にどんな役割を期待するのか。

 どのようなことをしようとしているかは両国次第だ。こちらの働きかけが成功するとは限らない。これは我々だけで決められるものではない。

 ――日本や国連、欧米諸国の役割をどう評価するか。

 国連は、この国で起きていることについて、さらに大きな役割を果たすことができると考えている。このことは国連に何度も議論を呼びかけてきた。

 ――日本はどうか。

 私は常に日本政府はもっと関与できると思っている。日本政府よりも日本国民の方が(私たちを)、より支持してくれていると感じる。ただ、今の日本政府は、これまでの政府が長い間してくれたこと以上に頑張ってくれていると明言したい。ビルマ(軍政が改称する前の英語での国名)の状況を改善するために彼らがしてくれたことには感謝を申し上げるが、同時に、さらなる関与を期待したい。

 ――自宅軟禁中に(最大都市)ヤンゴン日本大使館関係者と接触したことはあるか。

 自宅軟禁中にはない。接触しなかったのではなく、できなかったのだろう。

 ――自身の考えを広めるために、現在の新しいIT技術を活用する考えは。

 ビルマ国内だけではなく、世界中の若者たちと接触したい。自宅軟禁中はインターネットに接続することが許されなかったため、ツイッターフェースブックを使ったことはないが、ラジオなどでこうしたものがあると聞いて、ラジオでメッセージを発するよりも、こちらの方が最善だと思った。ここ数日間、ビルマの若者たちを見てきたが、フェースブックの方が接続がしやすく、使いやすそうだ。ビルマでは許可なくしてインターネット接続ができない仕組みになっているので、現在、当局に申請している。許可されるかどうか、待っているところだ。

 ――自宅でインターネットをする予定なのか。

 現在は自宅にネット環境がない。だから申請しており、その結果を待っている。

 ――軟禁は解かれたが、本当に自由になれたと感じるか。

 まだ何とも言えない。いかなる暴力的な行為も起きないでほしいと望むだけだ。再び自宅軟禁下に置かれるようなことはないと願うが、その保証はない。

 ――ヤンゴンを出て地方外遊などをする予定はあるか。国外での活動は。

 まだラングーン(軍政が改称する前のヤンゴンの名称)市内すら回れていないので、現時点では考えていない。

 ――軟禁は長期にわたったが、解放された今、この国に何か変化が起きたと感じることはあるか。

 これから変化が起きると信じたい、とだけ言っておく。どんな変化があるにしても、それが良い変化であることを願いたい。

 ――NLDの解党処分に対する異議申し立てを最高裁は認めなかった。今後の活動に影響はあるか。

 人々の支持がある限り、私たちの立場に影響が及ぶことはないと考える。今回の最高裁決定は棄却ではない。申し立てを受理するかどうかの入り口の判断で却下されたものだ。異議の申し立てを受理しないのは法律違反で、少なくても受理された上で審理されるべきだった。この点を主張していく。

 ――政党登録をしなかったことで、軍政は選挙関連法を用いてNLDを解党処分とした。今も活動するNLDは合法的な組織と言えるのか。

 法律論を語るならば、NLDの合法性は間違いない。法律を無視されたからこそ、非合法とされた。

ミャンマー>米が方針転換、スーチーさん、孤立化の恐れも
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20091118/p1
というのもありました。アメリカが軍政への制裁から対話に舵をきったからです。ただ私事ですが風邪をひいてしまって早く休みたいのでこのままで公開で勘弁してください。ただ思ったよりミャンマーに関して記事書いてましたね、ミャンマーの検索結果をご覧下さい。
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/searchdiary?word=%A5%DF%A5%E3%A5%F3%A5%DE%A1%BC