陸自・北海道機動部隊、九州演習に初参加と力の空白。

まずは読売新聞
陸自・北海道機動部隊、九州演習に初参加へ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101219-00000004-yom-pol
読売新聞 12月19日(日)3時4分配信

 新防衛計画の大綱で、即応性と機動力を重視する動的防衛力を打ち出したのに合わせ、防衛省は来年夏、九州・沖縄地域で行う実動演習に、陸上自衛隊第7師団(北海道千歳市)を派遣することが、18日明らかになった。

 北海道に駐屯する陸自の基幹部隊が、九州方面の訓練に参加するのは初めて。南西諸島の防衛態勢を強化するには、主力部隊を迅速に長距離移動させ、プレゼンスを示す必要があると判断した。

 第7師団は、機甲科(戦車)と普通科(歩兵)、飛行隊などから構成された陸自唯一の機動部隊で、冷戦時代は対ソ抑止の中軸を担ってきた最強師団。陸自は今後、様々な緊迫事態を想定し、北方など本州の部隊を九州や沖縄・南西諸島に展開させるスイング戦略に重心を移す方針だ。

最終更新:12月19日(日)3時4分

これを読んだ時は日本もちゃんと考えてやってるんだなと思ったのですが、産経新聞をみるとこんな記事がありました。
【同盟弱体化】第6部新たな試練(中) 実態無視し理念つまみ食い

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101220/plc1012200028000-n1.htm
 「大洋への9の出口」。こうタイトルをつけた防衛省の内部資料がある。国内では注目されることのなかった4月の中国紙報道を分析したものだ。中国にとっての太平洋などへの「出口」として、宮古水道、与那国島西水道など南西方面から出るルートとともに、日本海を通り千島列島から太平洋に向かう西北太平洋ルートが記されていた

 今月13日付のカナダ紙バンクーバー・サン(電子版)も、北方に目を向ける「中国の戦略」を特集した。同紙は中国とロシアの石油企業がロシア北極地域で天然ガス開発を進めようとしていることや、地球温暖化の影響で氷が解け、北極海での航海が以前より困難ではなくなることを指摘。日本海から太平洋に抜けずに北極海に向かうルートを使うと、インド洋などを経由するよりも大幅に欧州への航路を短縮できるため、中国が関心を寄せているとした。

 「航路の安全確保のため中国の海軍力が北方にも向かう可能性がある」

 自衛隊幹部は警戒感を隠さない。2008年10月には中国海軍の艦船4隻が日本海から津軽海峡を抜け、太平洋側に通過した。ガス開発も、東シナ海で海洋権益確保に突き進む戦略の「北方版」のように映る。

 過去2回、防衛計画の大綱改定に携わった防衛省OBも同様の懸念を示す。17日発表の新大綱で、防衛力の存在自体による抑止を重視した基盤的防衛力構想を放棄したことで「防衛費の底が抜けた」と今後、防衛費の削減圧力に抗しきれないとみる。その兆候が陸上自衛隊定員の1千人削減だ。OBは批判する。

 「南西シフトの時代に北海道の部隊は不要と扱われれば、『力の空白』をつくりかねない

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 「学者が閣僚協議に同席している」

 新大綱の作業が大詰めに入った12月上旬、防衛省内に情報が駆けめぐった。10月以降、防衛相、北沢俊美財務相野田佳彦ら関係閣僚が7回協議した場に政治学者らが同席したのだ。学者の一人は12月上旬、北海道での陸自の人員削減を唱える論文を出した

 「軍事が専門でもない学者に編成・装備にまで口出しさせているのであれば、借り物の政治主導だ」

 自衛隊幹部らは閣僚への不信感を募らせた。中国の北極圏戦略も、北方領土をめぐるロシアの高圧姿勢に関する視点も抜け落ちているというわけだ。

 これに対し、北沢は大綱で「基盤的防衛力構想」と決別し、即応性や機動性を備えた「動的防衛力」を打ち出したと自賛する。もっともこれは「動的抑止力」の重要性を明記した首相、菅直人の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の8月の報告書が敷いたレールに乗ったものだ。

 ただ、大綱で打ち出した「動的防衛力」では「陸自部隊の海上・航空輸送手段が担保されていない」拓殖大大学院教授、森本敏)との批判が出ている。実効性を持たせるために必要な高速輸送艦の導入見送りがその象徴だ。

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 「同盟の中で日本が果たす役割を定義し、それを大綱の形で示すべきだ。順序が逆転している

 森本は日米同盟の視点でも新大綱の実効性に疑問符がつくと語る。逆転を余儀なくさせたのは、米軍普天間飛行場沖縄県宜(ぎ)野(の)湾(わん)市)移設問題で迷走を続け、「同盟深化」を先送りせざるをえなかった民主党政権にほかならない。

 自衛隊幹部も「なぜ空中給油機とAWACS(空中警戒管制機)の追加調達や無人偵察機導入を見送ったのか」と首をかしげる

 米軍の空中給油機は老朽化が進み、空自が機能をカバーすれば敵基地攻撃で相互性が増す。東シナ海で中国の海空戦力を監視するには、AWACSや無人機が有効で日米の情報共有の強化につながるからだ。

 「同盟で動的防衛力を機能させるには、憲法上行使できないとの集団的自衛権の解釈見直しが不可欠

 元空将、織田邦男の指摘だ。8月の報告書も解釈見直しを促したが政府は無視を決め込んだ。そこには、政権交代に伴う表面上の防衛政策の転換を印象づけたいがため、報告書をつまみ食いした姿が浮かび上がる。(敬称略)