民族対立、ロシア揺らす サッカー乱闘が市民の不満に火

朝日新聞

http://www.asahi.com/international/update/1226/TKY201012250320.html

2010年12月26日2時16分


モスクワで21日、乱闘で殺されたロシア青年の墓に献花するプーチン首相=ロイター

 【モスクワ=副島英樹】サッカーファンの乱闘による一つの殺人事件が、ロシア全土を揺るがしている。多民族国家に潜在する民族間対立感情を呼び覚ましたからだ。「ロシアはロシア人のために」。そんなスラブ民族主義のスローガンを掲げた若年層のデモまで頻発し、一触即発の緊張を政権側が力で封じ込めている。そこには、汚職体質から抜けきれない官僚国家への市民の不満も影を落とす
 「民族の多様性こそロシアの大いなる長所であり力だ」

 「過激主義者に利用されないようにしてほしい」

 プーチン首相は21日、中央ロシアと南部・北カフカス地域のサッカーファンクラブ代表らと面会し、そう訴えた。その後、乱闘で殺されたロシア青年の墓を訪れて献花した。国を揺るがす内乱に発展しかねない民族対立を鎮めるための窮余の策ともいえた。

 かつて泥沼の内戦を経験したチェチェン共和国などを含むカフカス地域はイスラム教徒が多い。治安は安定せず、失業率も高い。出稼ぎでモスクワなど主要都市への流入が増加し、風習の違いや相次ぐモスク建設などが、ロシア正教のスラブ系住民との間に摩擦を生んでいる

 発端は今月6日にモスクワの通りで起きた乱闘だった。プロサッカーチーム「スパルタク」のファンだったスラブ系の青年1人が死亡、カフカス系の6人が拘束された。だが警察は、首謀者以外の5人の拘束を解いた。賄賂が渡されたはずだと、スラブ系が不満を募らせたクレムリン脇のマネージ広場で11日に開かれた青年の追悼集会には約5千人が集結。過激な民族主義者らが扇動して治安部隊と衝突し、65人が拘束された。

 こうした動きに、カフカス系が15日に抗議集会を開くとの情報がネットで出回り、モスクワなどで民族対立が一触即発状態に。予防介入した警察が全土で1700人を拘束し、ナイフやバット、武器類などを多数押収。18日にも全土で約2千人が拘束されたが、未成年者が多数含まれていたことが衝撃を与えた。

 この日、モスクワのオスタンキノ・テレビセンター付近に集まったのは、日本の中高生にあたる8〜10年生の生徒たちだった。愛国主義はナチズムではない」との横断幕を掲げて行進したところ、無許可集会を理由に警察に一時拘束された。地元紙によると、生徒の一人は「大学に入れるのはカフカス系だけ。ロシアに将来はない」などと、賄賂が優先される実態を示唆した。

 プーチン首相は「若者が軽はずみに民族主義的スローガンを唱える事実を憂慮すべきだ」と発言。首相が党首を務める最大与党統一ロシア」は、徳育を充実化させる教育カリキュラムの見直しを提案するまでになっている。

 「若者は革命のバロメーター」(レーニン)とも言われるロシアでは、今回の騒動は社会全体の不満の表れだと指摘する声も目立つ。下院安保委員会のグロフ議員は汚職や警察・役人の横暴、犯罪検挙の低さ、移民労働者の増加などで不満が充満している」と語る。反政権のノーバヤ・ガゼータ紙も「ロシアの現代化に対するロシア人の反乱」との見出しで「政府の不首尾な財政政策、賄賂の横行、役人の身勝手」を指摘メドべージェフ政権が進める現代化が、国家の体質改善につながっていないと批判している。

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この頃から報道されてたやつですね。毎日新聞
<ロシア>モスクワ暴動、緊張高まる 背景に民族対立

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101214-00000069-mai-int

モスクワ中心部で、暴動の再発を警戒して警備にあたる治安部隊=2010年12月13日、AP

 【モスクワ田中洋之】若者らによる大規模な暴動が起きたモスクワで、さらなる衝突や外国人を狙った襲撃が発生する可能性があるとして緊張が高まっている。背景にはロシア系と南部カフカス系住民との民族対立があり、メドベージェフ政権は難しい対応を迫られそうだ。

 クレムリン横のマネージ広場などで11日、サッカーファンの若者らが治安当局と衝突、30人以上が負傷した。モスクワ中心部で暴動が起きたのは、02年のサッカー・ワールドカップ(W杯)日韓大会でロシアが日本に敗れた時以来。13日夜にもファンらが集まるとの情報が流れ、治安部隊が同広場一帯を封鎖、地下の大型ショッピングセンターも夕方に閉店した。騒ぎは起きなかったが、15日には市西部のキエフ駅周辺で再び集会が行われるとの情報があり、当局は警戒を強めている。

 暴動は、6日に市内でサッカーファンのロシア人男性がカフカス系の若者に射殺されたことが発端で、「カフカス系は出ていけ」など排外主義的なスローガンが目立った。ロシアのサッカーファンは過激な行動で知られるが、集会に紛れ込んだ右翼や民族主義のグループが暴徒化を扇動したとの見方が強まっている。モスクワにはカフカス地方や中央アジアからの移住者が多く流入し、ロシア系住民の間で差別や反感が根強い。殺人事件がそれに火を付けた形だ。

 モスクワでは11、12日に中央アジア出身の少なくとも3人がロシアの若者集団に襲われ死傷する事件があり、暴動に伴う民族主義の高まりとの関連が取りざたされている。

 メドベージェフ大統領は暴動を「ポグロム(集団的な迫害)であり、罪を犯したものは罰せられる」と非難。ロシアでの18年W杯開催が決まった直後にクレムリンのすぐ隣で起きた「不祥事」だけに政権は衝撃を受けている模様だ。大統領は簡易ブログのツイッター「国内とモスクワは全てコントロール下にある」と強調したほどだ。暴動の発端となった殺人事件では警察が容疑者を釈放するなど初動捜査の誤りも指摘され、事前に予告されていた11日のマネージ広場での集会を防げなかった当局の責任を追及する声も出ている。

 在モスクワ日本大使館は13日、カフカス中央アジア系と外見上似ている日本人が襲撃の標的になる可能性があるとして在留邦人に警戒を呼びかけた。

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毎日新聞では汚職については書かれてませんね。
ネットが暴く底なし汚職 ロシアで新たな言論統制への危惧も
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20091211/p1
という記事もあり汚職があるのは間違いないと思いますが。