<スーダン>油田地帯帰属を決める住民投票棚上げ 南部独立

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110108-00000060-mai-int
 【ジュバ(スーダン南部)高尾具成】アフリカのスーダンで、9日行われる南部地域の分離独立の是非を問う住民投票と同時に予定されていた、南北の境界にある油田地帯「アビエイ地区」の帰属を決める住民投票が棚上げ状態となっている。有権者資格の定義で北部・中央政府と南部自治政府が対立。同地区の混乱は内戦の再発につながる可能性もあり、課題となっている。

 同地区には南部系の黒人農耕民ディンカ人の氏族が住むが、北部側のアラブ系遊牧民ミッセリアが乾期に同地区へ南下し、家畜の放牧を行う伝統的習慣を持つ。このため北部・中央政府はミッセリアにも投票権があると主張。一方、南部自治政府を主導するディンカ人主体の「スーダン人民解放運動」は「遊牧民を住民とは規定できない」などの理由で投票権を認めず、議論は平行線のままだ。

 アビエイ地区は南北内戦の激戦地の一つ。05年の包括和平合意は、同地区の帰属を決める住民投票を南部独立を問う住民投票と同時に実施すると規定した。しかし、南北間で境界線画定が難航。石油資源の利益配分などを巡る駆け引きが続いており、支援をする米国も「時間切れ」の見解を示している。

 同地区は現在、北部・中央政府直轄の特別行政区となっている。

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まぁ今までのスーダン アビエ(アビエイ)を扱った記事とくらべて特に目新しいことは書いてありませんね。
南部スーダン独立か 火種くすぶる住民投票 9日開始
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20110105/p3
で、スーダン アビエイ(アビエ)でニュースサーチしても、2008年の記事しか引っ掛からないと書きましたが、中国の油田作業員が誘拐された報道と殺害された報道でした。

2008/10
中国人油田作業員9人、スーダンで誘拐

http://www.cnn.co.jp/world/CNN200810200008.html
モガデシュ(AP) 北アフリカスーダン南西部にある油田で働いている中国人作業員9人が18日、何者かに誘拐された。中国系油田への攻撃はここ1年で3件目だが、中国人作業員が誘拐されたのは今回が初めて。

現場は西部ダルフール地方に隣接し、スーダン石油産業の中心地であるコルドファン地方アビエイ近郊。同地方ヘグリグでは中国資本の油田が稼動している。

中国の駐スーダン大使は、事件に関する情報がほとんどないものの、作業員らの発見に全力を尽くす意向を表明した。別の外交官は匿名を条件に、作業員らが車に乗っているところを拉致されたと述べ、現場から逃げて当局に通報した作業員らがいたことを明らかにした。

アビエイ当局者は、ダルフール地方の反政府勢力「正義と平等運動」(JEM)による犯行の可能性を指摘し、犯行グループが作業員らの車2台に放火したと語った。スーダン人運転手は現場から逃げたという。当局者は、実行犯らが警察部隊に対して同様の攻撃を繰り返していると指摘し、現地で操業する企業への脅迫行為だと非難した。

ただし反政府勢力からの犯行声明は出ていない。JEMのスポークスマンはロンドン市内で、今回の誘拐事件について司令官からの報告はないと述べる一方、現場一帯に戦闘員を展開していることを認めた。スポークスマンは、JEMの目的が誘拐ではなく「中国人のかく乱」だとしている

反政府勢力は、アジアからスーダン石油部門への大型投資が、ダルフール紛争で政府軍の戦費になっていると主張し、同地方近郊にある中国の投資先を標的にしている。JEMは昨年10月、コルドファンの中国系油田を襲撃して外国人労働者2人を誘拐し、2カ月後には別の中国系油田がある地区の軍駐屯地を襲撃した。

別の反政府勢力スーダン解放軍」(SLA)は今年8月、政府軍の北ダルフール攻撃が、中国による新たな石油探査事業を促進する動機に基いているとの見解を示し、中国企業を「軍事標的」にすると明言した。

国際人権団体や人道活動家らは、ダルフール紛争を悪化させているとして、中国とスーダンの緊密な関係に一層厳しい目を向けている。中国はスーダン産石油の3分の2前後を購入し、その総額はスーダンの輸出総額の70%を占める。中国政府がスーダン政府に、ダルフール紛争で使用されている小火器も提供しているとの指摘もある。

中国はダルフール地方に、技術者や国連平和維持部隊など140人を駐留させている。また、スーダン政府は中国の派遣部隊を受け入れる一方、アフリカ諸国ではないとの理由で他国の部隊を排除した。

誘拐の中国人油田作業員、「5人殺害」とスーダン当局

http://www.cnn.co.jp/world/CNN200810280009.html
(CNN) スーダン外務省報道官は27日、南西部コルドファン地方アビエイ近郊で18日に何者かに誘拐された中国人油田作業員9人のうち、5人が犯行グループに殺害されたと語った。

報道官によると、残り4人のうち2人は負傷して辛くも脱出し、2人は依然拘束されている。中国国営の新華社も同じ内容を伝えた。

スーダンの中国大使館が新華社報道として明らかにしたところによると、誘拐された作業員らは中国石油天然気集団公司の従業員。犯行グループは「無名の武装勢力」とされている

中国はここ数年、スーダンなどアフリカの産油国に集中投資しており、対アフリカ貿易総額も倍増した。アフリカ産石油の約3分の1が、中国に輸出されている。

そもそもこの事件の記事も日本語ではこの2件しか見つけられません。
http://news-net.ddo.jp/cgi-bin/estseek.cgi?phrase=%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3+%E4%B8%AD%E5%9B%BD+%E6%B2%B9%E7%94%B0+%E6%AE%BA%E5%AE%B3%7C%E6%AD%BB%E4%BA%A1&perpage=100&clip=-1&navi=0&attr=&order=_date_

ただ中国の北部支持一辺倒という状況も変わってきてるようです。
中国の変化で安保理に奇妙な協調 スーダン住民投票

http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/110107/mds1101072059002-n1.htm
 【ニューヨーク=松尾理也】スーダン南部の分離独立の是非を問う住民投票の開始を9日に控え、国連安保理は6日、投票の平和的な実行を求める報道向け声明を出した。南部寄りの欧米と北部に拠点を置く中央政府寄りの中国の対立という構図が消えてしまったかのような声明は、住民投票を前に安保理で生まれた奇妙な協調ムードを象徴している。背景にあるのは、中国の急激な姿勢変化だ。

 昨年10月、安保理の視察団がスーダン南部ジュバを訪れた際、同行記者団からクレームが上がった。ホテルのコンセントの形式が中国式のため、パソコンの電源コードなどが差し込めないというのだ。報道陣が宿泊したのは突貫工事でオープンした中国資本の豪華ホテル。スーダン南部との関係構築に向け大急ぎでかじを切る中国のあわてぶりを示しているようでもある。

 少なくとも昨年初めごろまでは、中国は人権問題などで欧米からの批判を浴びるスーダン中央政府との関係を堅持し、南部独立に懸念を示す姿勢を崩していなかった。台湾、チベットなどの独立を容認しないとの立場を貫く中国は、2008年にジュバに総領事館を開設したものの、控えめな活動にとどまっていた。

 だが、独立の動きは止められないとの見方が加速する中で、80%の石油資源が集中するとされる南部との関係構築に失敗すれば、権益を大きく損なう結果にもなりかねない。

 こうした中国の姿勢が、繰り返しスーダン住民投票の平和的な実行と、その有効性を強調してきた欧米諸国と一致。国連安保理には一見奇妙にさえ映る「協調」さえ生まれている。

 ただし、中部の油田地帯アビエの帰属をはじめ、衝突の火種になりかねない難問は軒並み先送りされた。各国の思惑は、むしろ不透明さを増している。

で、先の中国人誘拐事件ですが、JEMが犯人ではないのかもしれませんが、一応JEMについて触れておくと、
2010/02
ダルフール停戦協定調印

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100225-00000063-san-int
 スーダン西部のダルフール紛争で、スーダン政府と主要反政府勢力「正義と平等運動(JEM)」は23日夜、カタールの首都ドーハで停戦協定に調印した。停戦は現地時間の24日午前0時に発効し、両者は3月15日を目標に最終的な和平合意に向けて交渉を続ける。

 ロイター通信などによると、協定は停戦に伴う戦争捕虜の即時釈放などをうたっているのに加え、
(1)JEMは和平合意調印を受けて政党化する
(2)JEMは政府、議会などあらゆるレベルで権力に参画する
(3)JEM軍事部門は政府軍に統合される
(4)政府は、難民など紛争犠牲者への適正な補償を実施する−など、和平合意の枠組みも盛り込まれた。

 調印式には、スーダンのバシル大統領、JEM指導者のハリル・イブラヒム氏らが出席。バシル大統領は「紛争終結に向けた重要な一歩」と歓迎し、イブラヒム氏も「和平実現には双方の忍耐と譲歩がいっそう必要とされる」と述べた。(カイロ 村上大介

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まぁこの後最終的な和平合意にいたらないまま2010年4月の大統領選に突入し野党ボイコットバシル大統領再選となるようです。

その後、
スーダン反政府派、160人超死亡 政府軍と戦闘相次ぐ
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20100517/p1
またそれより前にバシル大統領がICCに訴えられてもいます。
スーダン大統領を集団虐殺で訴追へ 国際刑事裁判所
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20100204/p2
とにかく、すくなくとも中国人誘拐事件の時には、JEMは和平合意していなかった訳ですね。

やはり今後のスーダン情勢には悪い予感しかしません。見守るしかありませんが。