憲法が早期退陣の障害に=回避策めぐり論議―エジプト

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110209-00000067-jij-int
 【カイロ時事】エジプトでムバラク大統領の即時退陣を求める反体制勢力のデモが長期化する中、憲法が定めた権力移行に関する規定が大統領の早期退陣の障害として浮上し、これをいかに回避するかの論議が活発化している。

 エジプト憲法84条によると、大統領が辞任するなど不在となった場合、人民議会(国会)議長が臨時大統領に就任するが、60日以内に大統領選挙を実施しなければならない。また憲法82条は、大統領が一時的に職務遂行ができなくなった場合、副大統領に職務が委譲されると定めている

 しかしいずれの場合も、臨時大統領や副大統領に憲法改正の権限はなく、今ムバラク大統領が辞任した場合、野党候補の出馬が事実上不可能である現憲法の立候補資格規定(76条)に基づいて大統領選が行われることになってしまい、到底野党側には受け入れられない事態となる。

 一時は大統領の早期退任を促すなど強硬姿勢を取っていた米国も、クリントン国務長官が6日、84条に言及し、慎重な姿勢に転換している。

 ムバラク政権側はこの問題を強調し、大統領が憲法改正を完遂するため職にとどまらなければならないとする主張の論拠としている。

 これに対し、大統領の早期退陣を実現しつつ、憲法の規定を回避する方策として、憲法を一時停止し、政権と野党の間で政権移行協議を行う」という案ジョージ・ワシントン大のナタン・ブラウン教授)のほか、大統領が憲法改正を含むすべての権限を副大統領に委譲する大統領令に署名する案(人権団体「個人の権利のためのエジプトのイニシアチブ」のホサム・バフガト氏)などが提唱されている。

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三連休なので昼頃おきて、新聞記事のチェック言うよりはだらだらと眺めていたのですが、この記事が気になったので。

大統領選の立候補条件についてはこの記事がくわしいようです。
<エジプト>政府・野党に残る火種 思惑に隔たり

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110207-00000111-mai-int
エジプトの首都カイロで、政府との対話について会見するムスリム同胞団の幹部ら=2011年2月6日、AP

 【カイロ樋口直樹】エジプト政府は6日、事実上の最大野党・穏健派イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」を含む野党勢力との初協議を受け、暫定的な「合意点」を発表した。憲法改正委員会の設置など平和的な政権移行に向けた枠組みは決まったものの、政府、野党側それぞれが求める具体像には大きな隔たりがある。

【写真特集】混迷するエジプト

 ◇憲法改正

 憲法改正の最大の焦点は、9月の次期大統領選に向けた立候補条件の見直しだ。

 これまでは
(1)人民議会(国会、定数518)と諮問評議会(大統領の助言機関、同264)でそれぞれ3%以上の議席を持つ、結党5年以上の政党に所属し、党幹部を1年以上経験した者
(2)人民議会、諮問評議会、県議会の議員250人以上の推薦を得た者
−−に限られていた。

 (1)の条件を満たす政党は、ムバラク大統領率いる巨大与党・国民民主党のみ。無所属の候補希望者が議会でこれほど多数の推薦人を集めることは事実上不可能だ。こうした立候補要件がムバラク氏の5選を支えてきた07年に政党からの立候補条件は緩和されたが、野党側は一層の緩和を求めている。政権側も見直しに応じる姿勢だが、具体的な内容は示されなかった。

 大統領への一方的な議会解散権の付与▽
裁判官による選挙監視制度の制限▽
令状なしでの盗聴などを可能にする反テロ規定
−−などの見直しも今後の議論の対象になり得る。

 ◇非常事態令

 81年のサダト大統領暗殺事件で発令され、人権侵害の強権政治を支えた非常事態令について、政権側は「治安状況に応じて解除する」ことを確認した。いわば条件付きの解除で、無条件廃止を求める野党側の要求とは依然隔たりがある。

 54年に非合法化されたムスリム同胞団の扱いも注目される。宗教政党の活動は憲法で禁じられているが、政権側は同胞団を無視できない状況に追い込まれているからだ。

 政権側から同胞団に対し、政府との協議に応じることを条件に、合法化の可能性が示されたとの情報がある。ただ、米国や他の野党勢力の中にもイスラム勢力の伸長を懸念する声は少なくない。

 05年の人民議会選挙で88人の系列候補を当選させながら、昨年の総選挙で惨敗した同胞団は、選挙に不正があったとして裁判所に不服を申し立てている。政権側は裁判所の判断を待って結果の見直しなどに応じる姿勢だが、同胞団側は議会の解散と再選挙の実施を求めている

 ◇政権移行

 最大の対立点は大統領の処遇。政権側は「ムバラク氏が次期大統領選に出馬しない」ことで合意したと発表したが、野党側は即時辞任を求める構えだ。

 次期大統領選までの政権移行を巡っても、スレイマン副大統領を軸に憲法改正などを進めたい政権側に対し、野党側は公正な移行を疑問視。エルバラダイ国際原子力機関IAEA)事務局長は、1年の移行期間を設け、委員3人の中立的機関で大統領選に備えるよう提案している。

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07年の件について調べたら自分で書いてましたwもう覚えてられないよー。しかし条件緩和どころかかえって悪くなると野党は反対していたようですが。
エジプト 憲法修正きょう国民投票 人権侵害、消えぬ懸念
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070326/1174912663
というかこの記事にはありませんが、野党側は投票をボイコット、投票率は約27%、人権団体によると実際には5%程度とも言われたようですが。

あと同胞団惨敗ともいいますが、
エジプトデモ、最大イスラム団体も動く 政府は幹部拘束
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20110131/p4
などにあるとおり、ボイコットして議席を失ったと書くべきではないでしょうか。意図的にムスリム同胞団が支持を得てないと思い込ませたいのかなと思ってしまいます。

またその選挙に対するアメリカの態度は
エジプト:キリスト教会前で爆発 21人死亡、43人負傷
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20110103/p3
に書いた通りです。

話が脇にそれてしまいましたが、最初の憲法の問題も解決に向けて動いているようです。まぁ詳しい内容までは分からないのですが。
エジプト:大統領選、要件を緩和 民主化勢力要求、憲法改正

http://mainichi.jp/select/world/news/20110210dde007030003000c.html
 【カイロ和田浩明】ムバラク大統領の退陣を求める大規模な反政府デモが続くエジプトで、民主化勢力の要求を受けて政府側が設置した憲法改正委員会は9日、改正対象とする6条項を定めた。対象は大統領選挙の立候補要件を定めた76条や、大統領任期を規定する77条、選挙監視の主体を定める88条など。いずれも民主化勢力が改正を要求していたもので、他の条項についても今後検討するという。

 現行憲法では、多数の立候補推薦人が必要など、与党国民民主党(NDP)以外の既成政党や無所属候補が大統領選に出馬することを極めて困難にしている。また、多選制限がないため、実質的に終身大統領制にもなっている。

 さらに、比較的独立性が高いとされる判事以外による選挙監視が可能で、内外の人権団体は「与党に有利な投票妨害や得票操作が行われてきた」と批判してきた。

 テロ対策のため、令状なしの身体拘束や基本的自由の規制を可能にする条文もあり、改正対象となった。

 改憲委員会の設置は6日に行われた政府側と野党勢力の対話で暫定合意され、8日に設置が発表された。メンバーは司法関係者や学識経験者らだが、人選は政府側が行ったため、野党勢力からは「一方的だ」といった批判が出ている

 憲法改正に加え、治安機関による野党勢力の弾圧にも使われてきた非常事態令の撤廃も求められているが、政府側は、大規模デモが続いていることなどを理由に「治安情勢が安定していない」として消極的な姿勢を崩していない。
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毎日新聞 2011年2月10日 東京夕刊

うーむちょっと書くつもりがすごい時間がかかってしまった。夜にはまた記事チェックして幾つかエントリあげるつもりです。