イラクのマリキ首相の立場ってどうなんだろ。その2(1:国内対立編)。

まず
イラクのマリキ首相の立場ってどうなんだろ。
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070719/1184864985
07/19に書いたわけですが、その後もいろいろ記事にはなってましたが、追いきれてませんでした。一ヶ月以上たって結構逼迫してきた気がします。

08/02
イラクスンニ派統一会派 連立政権から離脱
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070802-00000093-san-int

 【カイロ=村上大介イラクイスラムスンニ派統一会派イラクの調和」は1日、同派の副首相を含む閣僚6人が辞表を提出し、連立から撤退すると発表した。同会派は、シーア派主導のマリキ政権が宗派対立解消に真剣でないと強く批判している。

 同会派のラーフィウ・イーサーウィ議員はバグダッドでの記者会見で、「宗派・民族の分断解消を願い、イラク戦後プロセスへの関与を継続する」としつつも、「他の政治勢力が真剣な姿勢を示さなければ、プロセスへの参加について再検討せざるを得ない」と述べた。同会派所属のハシェミ副大統領も記者会見に同席した。

 「イラクの調和」は、イラクイスラム党、イラク国民対話など穏健スンニ派政治勢力による統一会派宗派抗争などに対するマリキ首相の対応に不満を強めており
(1)シーア派民兵取り締まり
(2)イラク治安機関による無差別なスンニ派住民拘束の停止
−などをマリキ首相に要求していた。

 同議員は、ハシェミ副大統領や同会派議員44人は当面辞任しないとしており、まず閣僚を引き揚げ、マリキ首相の出方をうかがう構えのようだ

 シーア派強硬派のサドル師派閣僚6人も、マリキ政権が米軍の撤退日程を明確にしないことに抗議して辞任しており、治安安定、国民融和、戦後復興のどれをとっても成果がないマリキ政権の足下はさらに厳しさを増している。

スンニ派イラクの調和」の閣僚が離れて行ったようです。あとで出てきますが、「イラクの調和」のハシェミ(ハシミ)副大統領は政治に参加しているようですが、「イラクの調和」の政権復帰はまだ無いようです。

サドル氏派閣僚の辞任は、こちら↓によると2007/01だったようですね。
イラク:マリキ首相の求心力低下 米ブッシュ政権も窮地に
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20070812k0000m030053000c.html

 【カイロ高橋宗男】イラクのマリキ政権が急速に求心力を失いつつある。イスラムシーア派スンニ派、世俗派の17閣僚が辞任したり閣議をボイコットしており、首相を含む40閣僚のうち半数近くを欠くなど、政権が課題とする国民融和には程遠いのが現状だ。マリキ政権の失敗はそのまま米ブッシュ政権イラク政策の失敗を意味するだけに、ブッシュ政権はマリキ首相への全面支援を強調している。

 首相の求心力低下は、各派の利害が複雑に絡み合うイラクの実態を反映している。今年1月に6閣僚の辞任を表明したシーア派の対米強硬派、サドル師派はマリキ政権の対米協調姿勢を非難。先月中旬のスンニ派6閣僚の辞任表明の根底には、シーア派政権によるスンニ派差別への嫌悪感があった。

 さらに今月6日、世俗派の統一会派イラク国民リスト」の5閣僚が閣議のボイコットを決定。マリキ政権の空中分解を強く印象づけた。同会派は復興や治安改善の遅れなどをボイコットの理由に挙げている。

 シーア派のマリキ首相はサドル師派を除くシーア派クルド人勢力に支えられてきたが、クルド人勢力との関係も盤石ではない。北部のクルド人勢力は同地への侵攻をちらつかせるトルコへの対応や、油田地帯キルクーククルド人地域への編入などをめぐり、首相への圧力を強めている。

 治安状況にも回復の兆しは見えない。ロイター通信によると、イラク駐留米兵の7月の死者数は80人で昨年11月以降最も少なかったが、7月のイラク民間人死者数は1653人に上り、6月より426人増加した。

 昨年11月にはマリキ首相の指導力を疑問視するブッシュ政権の内部文書が発覚したが、ロイター通信によるといまやマリキ政権の能力に関する話題はタブーになっているという。在イラク米大使館のリーカー参事官は同通信に「首相は我々の全面的な支援を得ている。危機的な状況下で指導者を中傷するのは望ましくない」と述べた。

 イラク駐留米軍ぺトラス司令官とクロッカー駐イラク大使は来月15日までに、イラクの現状報告を米議会に提出する。議会はこれを受けてブッシュ政権によるイラクへの米兵増派を評価することになっており、現状のままでは野党・民主党を中心とするイラク政策批判の一層の高まりは免れないとみられている。

毎日新聞 2007年8月11日 20時05分

結構色々と書かれていて情報の多い記事だと思います。
ついでに上記によると世俗派「イラク国民リスト」の閣僚も閣議ボイコットですね。

キルクークについては↓
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/searchdiary?of=5&word=%a5%ad%a5%eb%a5%af%a1%bc%a5%af
とテロなどもあり、トルコとの間の問題もあり、結構大変なようです。とりあえず、クルド人側はキルクークの帰属をめぐる住民投票をしたいようですが↓
イラク>バルザニ・クルド地域政府議長、本紙と単独会見
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070407/1175902416
マリキ首相はキルクークの帰属を問題にしたくないようですね↓。というかバルザニ議長と対立してますね。
イラク首相:イランと米の緊張関係継続に焦り
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070411/1176290948

また民間人死者数ですが、
イラク民間人死者、3月に1800人超える
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070402/1175521137
に過去のまとめをしていますが、2006/10が3709人だったそうなので、上記の1653人はまだましなのかもしれません(数字で人の命を見るというのも怖いことですが…)。

で、その後の合意ですが
イラク:国民融和に向け合意…実効性は不明 各派指導者
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070827-00000093-mai-int
毎日新聞のほうが長いのでそっちの方を
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20070828k0000m030068000c.html

 【カイロ高橋宗男】イラクのマリキ首相ら各派指導者が26日夜、バグダッドで合同記者会見を開き、国民融和に向けた合意に達したと発表した。ロイター通信が伝えた。だが、合意の詳細をめぐり早くも不協和音が出ており、実効性は不明だ。来月中旬に予定されるペトレアス・イラク駐留米軍司令官のイラク情勢報告を前に米国はマリキ政権に「政治プロセスの進展」を求めている。米国の圧力をかわしたいマリキ政権が融和努力をアピールする狙いがありそうだ。

 会見にはマリキ首相(イスラムシーア派
▽タラバニ大統領(クルド人
▽アブドルマフディ副大統領(シーア派
▽ハシミ副大統領(スンニ派
▽バルザニ・クルド地域政府議長(クルド人)の5人が出席。マリキ首相らは「合意」を強調しつつも、詳細には触れなかった

 複数のイラク当局者はロイター通信に対して「スンニ派が強く求めていた旧政権党バース党員の公職復帰や、起訴されないまま拘束されている容疑者の釈放について合意した」と説明した。また、地方選挙実施に関する法案、石油法案などの懸案事項でも意見が一致したと述べた。米国のローリモア大統領報道官は「すべてのイラク人の利益のために協力するという態度表明だ」と合意を評価した。

 だが、マリキ政権から6人の閣僚が辞任したままのスンニ派連合会派「イラク調和戦線」は27日、「我々は政治対話は拒否しないが、それは政権復帰を意味しない」と強調した。各派指導者の合意が「実際に実行されるかどうかが問題だ」と懐疑的だ。また、合意に達したはずの石油法案に関して、大統領府は合同会見後、「さらに議論が必要だ」との声明を出しており、各派の足並みが乱れている

 イラク各派の対立は根深く、マリキ首相が目指す国民融和は極めて困難だ。移行政府首相だったジャファリ氏がマリキ首相批判を展開するなど、マリキ氏の出身母体であるシーア派政党アッダワ党内からも不満が噴き出しており、マリキ首相は四面楚歌(そか)に近い状況に置かれている。

毎日新聞 2007年8月27日 20時03分

合意については後で書くとして、アッダワ党のジャファリ氏もマリキ首相批判しているようですね。
あと、
イラクのアラウィ元暫定政府首相、現職マリキ首相を批判
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070827/1188228941
というのもありました。ジャファリ氏の方が後に首相やったんでしたっけ。

またマリキ氏は「駐留米軍はいつでも撤退可能」と主張していた↓
イラクのマリキ首相の立場ってどうなんだろ。
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070719/1184864985
ので
早期撤退は「世界的惨事」招く=イラク外相が米英に警告
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070901/1188648982
もマリキ氏の面子をつぶす形になってるんでしょうね。

あと(2:法案・合意編)と(3:外交編)を書こうかと思っていますけど、明日以降にしたいと思います。