金融崩壊:リーマン・ショック/上(その2止) 見えぬ「毒」不安連鎖

http://mainichi.jp/select/biz/news/20080917ddm002020080000c.html

 ◇中東諸国も「そっぽ」

 <1面からつづく>

 昨年夏に米金融不安が表面化してから、豊富なオイルマネーで欧米金融機関を救済してきた中東や新興国の政府系ファンド。だが、今回のリーマン・ブラザーズの経営危機には「ガラリと態度を変え」(英政府関係者)支援に乗り出す姿勢を一切、示さなかった。

 6月10日、ロンドンの金融街ティーの中心にあるギブソンホール。「欧米投資銀行のビジネスモデルは行き詰まった」。欧州最大の英金融機関、HSBCのスティーブン・グリーン会長はこう強調した。唐突とも言える投資銀行終焉(しゅうえん)宣言に、ざわめきが広がった。

 最先端の金融技術を駆使してテコをきかせ、市場から調達した資金の数十倍もの資金を運用してきた投資銀行。その代表格がリーマンなど欧米金融機関で、米低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)関連の証券化商品に資金をつぎ込み、相次いで巨額の損失を抱えた。ビジネスモデルが崩壊すれば、資本調達が難しくなり、経営が立ち往生するのは明らかだ。欧米の金融界を席巻した投資銀行だが、「現代の錬金術」が行き詰まると、もろさを露呈する。リーマン破綻(はたん)はその典型と言える。

 邦銀勢にも、ひそかにリーマン買収の打診が広がっていた。

 リーマンの経営不安がまだ深刻化していない7月までに、三菱UFJフィナンシャル・グループに話が持ち込まれた。行内の一部には「グローバルな投資銀行を手に入れる絶好の機会」と、株式の過半数取得を目指す意見もあったが、「リスクが大きすぎる」(首脳)との判断で8月半ばまでには立ち消えになる。

 リーマン破綻劇の土壇場では、三井住友銀行にリーマン買収の提案が舞い込んだ。持ちかけたのは、三井住友銀と資本提携関係にある英銀大手のバークレイズ。関係者によると、三井住友銀が1000億〜2000億円を出資する形で、リーマンを共同買収する内容だった。同行幹部は「興味はあった」と打ち明けつつも、「資産内容が悪すぎた」と見送ったことを明かした。

 韓国政府系ファンドの韓国産業銀行も8月、リーマンのニューヨークの本社に出向き買収を検討した。だが、韓国政府中枢が「リスクが高すぎる」と取りやめにさせた。

 いずれにも共通するのは、リーマンが抱える不良資産の本質が見えず、損失が拡大することに対する懸念だ。サブプライム問題以後、市場には疑心暗鬼が広がっており「どこに、いくらの毒(損失)があるのかわからない」(英金融当局関係者)状況にある。

 7月に史上最高の1バレル=147ドルをつけるなど、原油価格の高騰を受けて中東産油国の政府系ファンドには巨額の資金が積み上がっている。だが、これらの産油国の関心は、投資銀行から離れている。アラブ首長国連邦の「アブダビ投資庁」が、昨年11月、サブプライム問題に苦しむ米大手証券メリルリンチの増資を引き受けたものの、その後の株価大幅下落で「巨額の含み損を抱えた」(中央銀行関係者)ほか、スイス大手銀行のUBSに出資した中東産油国の資金も損失を余儀なくされたことで、警戒感が強まっているからだ。

 産油国の政府系ファンドの関心は、投資銀行から成長著しい中国などアジアの銀行や企業への出資や買収、発展途上国の農地買収などに移った。政府系ファンドに詳しい英米調査会社、グローバルインサイトランドルフ部長は「収益が確実に上がるもの以外に関心はない」と解説する。さらに同部長は「先進国が、中東や新興国の政府系ファンドは透明性に欠けると批判を強めたことへの反動もある」と話す。政府系ファンドの欧米系投資銀行への冷淡な姿勢は、投資対象として魅力が薄れただけでなく、欧米など先進国に対する反発も背景にあるとの分析だ。

 華やかなM&A(企業の合併・買収)など時代の花形のようにもてはやされた投資銀行。それに代わる新たな主役が登場しなければ、迷走が続くことは避けられそうにない。

毎日新聞 2008年9月17日 東京朝刊

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