原田武夫:代替エネルギーとオバマ氏が密かに仕込むトリック

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IISIAが読み解くマーケットと国内外情勢

 去る6日から7日にかけて、オバマ次期米大統領は自らの景気対策案を対外公表した。それによれば、2011年までに少なくとも250万人の雇用を生み出すことが目標とされており、そのためにはアイゼンハワー大統領以来の大型インフラ投資を行うのだという。

 景気対策を行うためにはそれにかかる費用を賄うため、資金調達を行う必要がある。しかし、「空前絶後」となるはずのオバマ景気対策案について一体いくら要するのか、オバマ次期大統領自身は具体的な数字を示していない。これに対し専門家の中では、少なくとも5000億ドル(邦貨換算で約46兆円)ほどかかるのではないかとの推測が早くも流布している。

 昨年5月末の段階で、邦貨換算すると6000兆円弱もの財政赤字を抱えていたといわれる米政府の国庫にいったいそのような余裕があるのかと大いに首を傾げたくなるが、オバマ次期大統領はそうした見方を一蹴するかのように、「目先の財政赤字を気にするわけにはいかない。景気対策が経済押し上げの効果を持つよう十分な規模にしなければならない」(7日米NBCインタビュー)と述べた。すっかり強気なオバマ次期大統領であるが、債券分野では世界最大級の規模を誇る運用会社PIMCOは今年1月の段階で景気対策のために財政赤字を拡張することは、失われた10年という長期停滞を免れなかった日本の二の舞になるため、止めるべきだ」との提言を行っている。このことは、米欧系の“越境する投資主体”たちは、さらなる巨額な財政赤字を容認する施策をオバマ新政権がとり始めるや否や、マーケットであからさまにネガティブな対応を示す可能性が高いことを如実に示していると言えるだろう。

 そうである以上、オバマ次期大統領としては、景気後退という米国国内の論理だけでは身動きが取れなくなる可能性が高い。そこで、むしろ国外からのプレッシャー(圧力)を前面に出しつつ、巨額の景気対策を推進し、これをもって最大の懸案である失業率の悪化を抑えようとするものと考えられる。

 そうした「国外からのプレッシャー」として利用される可能性のもっとも高いイベントが、来年(2009年)11月末からコペンハーゲンデンマーク)にて開催される気候変動枠組条約・第15回締約国会合(COP15)なのである。結局、何らの成果ももたらしていないポズナニ会合(COP14)と異なり、来年のCOP15では、温暖化効果ガスに関する各国の削減義務を定めた「京都議定書」の改定問題が全面的に議論される見込みだ。これまで、全く後ろ向きな対応に終始してきた米国に対する風当たりがそれに向けて強まっていくことは必定であり、オバマ新政権は就任早々から、そうしたプレッシャーにさらされるというわけである。

 実のところ、オバマ陣営はすでにそうした展開を織り込み済のように見受けられる。なぜなら、11月頭に終了した大統領選の最中にアップしていた政権公約の中で、「500万人分の雇用を確保するため、代替エネルギーへの転換を急ピッチで進める」旨を既に約束しているからだ。つまり、代替エネルギーへの大転換を国際的に公約すれば、それがすなわち雇用対策となり、内政面でポイントを稼げることがあらかじめ仕組まれているのである。仮に国内で財政赤字累積に対する批判が高まったとしても、オバマ新政権としては「世界に約束した以上、代替エネルギーへ転換せざるを得ない」と言い切るに違いない。そして米国がそうした方向に動く以上、同じく京都議定書の削減義務を全く果たしていない日本も追随せざるを得なくなることは間違いないのであって、これにより「代替エネルギー」セクターは全面開花へと向かっていくこととなろう。

 しかし、それでも気になるのが、オバマ次期大統領が政権の座につく来年1月20日と、こうした外圧を利用できるようになるCOP15が行われる11月末までの「タイムラグ」である。その間、雄弁なオバマ次期大統領が財政赤字累積に対する批判をかわせるのか、あるいはいよいよ行き詰まり、「デフォルト(国家債務不履行)宣言」を行わざるを得なくなるのか。―――年明け早々より、いかなる“潮目”の予兆も見逃せない。(執筆者:原田武夫<原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA) CEO>)

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相変わらず経済音痴の僕ですが、失われた10年の理由ってそうっだったんですかね。