<ミャンマー>米が方針転換、スーチーさん、孤立化の恐れも

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091118-00000000-mai-int
 【バンコク西尾英之】ミャンマー民主化運動指導者、アウンサンスーチーさん(64)が軍事政権トップのタンシュエ国家平和発展評議会議長にあてた手紙で、軍事政権への協力を表明した。だが、来年予定の総選挙へのスーチーさんの影響力を恐れるタンシュエ議長が、スーチーさんとの「協力」を受け入れるかは極めて不透明だ。

 17日、手紙を公開した野党「国民民主連盟(NLD)」のニャンウィン報道官は「スーチーさんは明確に政権への協力意思を表明した」と手紙の重要性を強調した。

 軍による支配に強く抵抗するスーチーさんは、これまで欧米の対軍事政権制裁を支持してきた。しかし今年発足したオバマ政権がミャンマー政策見直しに着手し、9月にクリントン国務長官が政権との直接対話開始を表明すると、スーチーさんはタンシュエ議長に手紙を送り、制裁解除で協力する姿勢を示した

 これに対し軍事政権は10月上旬、連絡役のアウンチー連絡担当相(労相)を1年8カ月ぶりにスーチーさんの元に派遣し、2度にわたり会談させた。またミャンマー入りしたキャンベル米国務次官補との会談も認めるなど、スーチーさんに対する一定の柔軟姿勢を示した。

 今回、スーチーさんがさらに踏み込んで政権への協力姿勢を明確化させたことで、焦点は議長がスーチーさんとの会談に応じるかどうかに移る

 米国など国際社会がスーチーさんを含む政治犯釈放を強く求めるなかで、独裁的な権限を持つタンシュエ議長が国際社会との関係改善を本気で望めば、スーチーさんとの会談に応じるとみられる。情勢は一気にスーチーさん早期解放に向けて動き出す可能性がある。

 しかし軍事政権の最大の目標は、来年の総選挙とそれに続く民政移管で「形のうえの民主化」を実現させながら、実際には軍の政治への影響力を強く残すことだ。議長は、スーチーさんや政治犯を釈放した場合、総選挙結果にどのような影響が出るかを慎重に見極めているとみられる。

 前回90年の総選挙は、スーチーさん率いるNLDが議席の8割を獲得し圧勝した。議長のスーチーさんに対する恐怖感や嫌悪感は極めて根強いとされる。ミャンマー国内では「議長が選挙前にスーチーさん解放に踏み切るのは困難」との見方も強い。

 ミャンマー民主化運動のシンボル、アウンサンスーチーさんにとって、軍事政権との協力表明は、米国のミャンマー政策転換を受けた「苦渋の選択」とみられる

 オバマ政権は軍事政権に対し、スーチーさんを含む全政治犯釈放を求めている。しかしスーチーさん自身の総選挙への参加については、「ミャンマー自身が決める問題」として米国は関与しない姿勢を明確にしつつある。スーチーさんは総選挙に参加できなければ、その後の民政移管でも重要な役割を果たすことはできず、政治的な影響力はじり貧に陥りかねない

 政権への協力表明は、スーチーさんが軍の政治関与を全面否定する自身の「民主化」構想を捨て、軍主導の民主化プロセスに少しでも関与して「実のある民主化」を実現しようという現実路線に戦略を転換させたことを意味する。

 米国の軍事政権に対する政策転換は、軍事政権に対して制裁しても効果が薄く、かえってミャンマーの国民生活を悪化させてきた、との現実的な視点に立つもので、評価されるべきだ。だが、これまで欧米各国政府や世論の支援を支えとしてきたスーチーさんは、はしごをはずされつつある。【西尾英之】

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スーチーさんが軍政トップへ送った書簡を公表
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20091117/p7
にあったようにNLD内でも意見が割れています。これでスーチーさんが政治的影響力を失ったら、民主化は暗礁に乗り上げかねない気がします。