ネットが暴く底なし汚職 ロシアで新たな言論統制への危惧も

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091210-00000585-san-int
 【モスクワ=遠藤良介】ロシアのインターネットに警察の腐敗ぶりを告発する関係者の動画投稿が相次ぎ、警察改革をめぐる議論が表面化してきた。その汚職構造は、有力与党議員が「もはや内務省を解体するしかない」と述べるほどに底なしの様相だ。ネットが汚職社会に一石を投じることを期待する声がある一方、いまだ言論の自由が残るネット空間に統制の手が伸びることへの警戒も高まってきた

 発端となったのは11月、南部クラスノダール地方ノボロシスクの中堅警察幹部、ディモフスキー氏がネットに流した2本の動画だ。同氏はここで「(検挙率向上や、わいろを目的に)架空の犯罪をでっち上げ、無実の人を拘束するのはたくさんだ」などと制服姿でぶちまけ、プーチン首相との面会を求めた。動画は人気サイト「ユーチューブ」で約1カ月間に130万回以上も視聴された。

 地元の警察はこの動画の内容を「中傷だ」として同氏を即座に解雇。しかし、この後も元職を含む治安関係者ら少なくとも7人が同様の告発・直訴動画をネット上に投稿し、新聞や電子メディアでの治安機関をめぐる議論に火を付けた。

 政権与党「統一ロシア」のマカロフ下院議員は記者会見で「内務省の改革はもはや不可能だ。内務省と国民の戦争が起きている感がある」などと公言ヌルガリエフ内相が講演で「警官に攻撃された場合、無辜(むこ)の市民には自己防衛の権利がある」とまで述べる事態となっている。

 治安機関が腐敗にまみれる最大の理由は薄給にある。FSB(連邦保安局)など特務系機関を除く一般警官の給料は低く抑えられており、ディモフスキー氏の場合で月1万4千ルーブル(約4万3千円)。市民への言いがかりや事件のでっち上げによるわいろ、みかじめ料といった“闇収入”を得ねば生活が立ちゆかない額だ。

 大統領付属の市民社会発展・人権問題委員会メンバー、ポリャコワさんは「相応の給与がなくては人材を選ぶ余地がない。実際、犯罪性癖のある不適格者が採用されてきた」と警鐘を鳴らす。今年上半期の警官による犯罪は内務省が公表しているだけで2500件、出された有罪判決は700件と目を覆うべき状況だ。

 4月にはモスクワの警察幹部がスーパーで拳銃を乱射して9人を殺傷したのをはじめ、酔っぱらい警官による市民への凶悪事件は日常的に起きる。一連の告発動画の信憑(しんぴよう)性は検証される必要があるものの、ポリャコワさんは「ディモフスキーさんらの勇気ある告発動画は警察改革に向けた大きな一歩だ」と語る。

 他方、影響力を増しつつあるネットが“寝た子を起こす”ことへの懸念も出ている。プーチン前大統領の下でロシアの主要テレビ・ラジオ局はすべて国の支配下に置かれ、新聞も政権から有形無形の圧力を受けている事情があるためだ。

 グラスノスチ(情報公開)防衛財団のシモノフ会長は「ネットに告発・直訴動画が出るのも、あまりにテレビ局の仕事ぶりがまずいことの裏返しだ」と指摘。「近い将来、中国型の大々的なネット監視が行われることは考えにくい」としつつも、「ネットが次なる統制対象と考えられていることは間違いない」と語る。

 英字紙モスクワ・タイムスは8日、プーチン氏に近い特殊国策会社「ロステフノロギヤ」傘下のプロバイダー(接続業者)が数週間にわたって反政権派サイトの閲覧を阻止していると報道。露最大手のポータル・サイト「ヤンデックス」が11月、「人気ブログ・ランキング」の掲載をやめたことにも政権側の圧力を疑う声が出ている。

【関連記事】
・放蕩息子“カーレース”の裏事情
・露ナイトクラブ火災の死者121人に
・START1失効 米反応 弾頭数削減、中国にらみ懸念も
・歴史的和解に弾み 露大統領、ローマ法王と会談
・クマが冬眠できない! モスクワで記録的暖冬

<ロシア>「事件でっち上げ市民逮捕」警官がネット告発次々
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20091118/p6
のあたりから続いてる問題ですが、ロシア社会の根幹を揺さぶるような事態になってきましたね。ネットを規制すれば済むという話ではなさそうですが。