キューバEEZ 石油試掘活発化 制裁法ネックで「不参入」 いらだつ米企業

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070322-00000010-san-int


 【ニューヨーク=長戸雅子】キューバ沖合の排他的経済水域EEZ)で中国やインド、ノルウェーなど外国企業による石油試掘が活発化、ゴールド・ラッシュならぬ「オイル・ラッシュ」(米経済誌フォーチュン)を迎えようとしている。だが、米企業は対キューバ経済制裁を目的とする国内法によって事業には参加できず、“裏庭”で展開される開発事業にいらだちを募らせるばかりだ。

 この海底油田は米フロリダ州沖からわずか140キロの地点にあり、米地質調査所の調べで約50億バレルの埋蔵量があると推定されている。キューバ政府は鉱区を59に分け、2004年からはスペインとアルゼンチンの合弁、ノルウェー、インドの各企業に、今年からベネズエラの国有企業に試掘権を認めている。中国とは2国間協定を結び、国有企業、中国石油化工業団(SINOPEC)が2005年から試掘を始め、油田争奪の様相も呈している。

 こうした動きに、全米450の企業で組織する石油化学・精製連合は「もはやキューバ危機のあった1960年代ではない。空想的な政策を見直す必要がある」と、経済制裁見直しを主張。カストロ国家評議会議長の病気療養で集団指導体制に移行しつつある政情の変化も踏まえ、米企業の事業参加に道を開くためのロビー活動を活発化させている

 昨年5月に同趣旨の法案を提示したラリー・クレーグ上院議員(共和、アイダホ州)は「中国は、世界中で資源を囲い込もうとしている」と中国が米国の“おひざ元”にある資源に接近することに警戒感もあらわにしており、法案には中国を牽制(けんせい)する意義もあると主張。包括的エネルギー法案の一部として今会期に再提出する。

 米国のキューバに対する経済制裁は1962年から続いており、96年には、米企業取引の禁止のほか、キューバが革命で接収した米企業などの資産を第3国の企業が利用した場合、その企業に対する米国内での損害賠償請求権を認めるなど、制裁強化法(ヘルムズ・バートン法)が成立した。

 2000年にはクリントン政権によって医療・食料品の輸出分野で緩和されたが、政府の許可が必要などの条件は現在も付加されている。

 米企業が事業参入から取り残されている現状について、米誌フォーチュンは「カストロの復讐(ふくしゅう)」として「キューバは資源において、地域の主要なプレーヤーになる」との専門家の見方を紹介している。