露で増幅する排外主義 旧ソ連圏出身の労働者標的

http://www.sankei.co.jp/kokusai/world/070627/wld070627000.htm

 【モスクワ=遠藤良介】排外機運の高まるロシアで、外国人を狙った襲撃事件が急増している。政権は排外主義団体の活動を事実上野放しにし、多くの政治勢力ナショナリズムを自らの勢力の拡大に結びつける思惑を抱いており、年末に下院選、来春に大統領選を控えて、この種の事件はいっそう増加しそうな気配だ。

 民主系調査機関ソバの調査によると、外国人襲撃の被害者は2005年に461人(うち死者47人)、06年には541人(同55人)と急増。今年は4月末現在ですでに23人が殺害されており、昨年を上回るのは確実とみられている。被害者の多くは、底辺労働に従事する旧ソ連圏出身の出稼ぎ労働者たちだ。

 事件が急増する背景には、政権が排外主義者に対し「甘い態度」をとり続けていることがある。外国人殺傷事件が摘発される割合はわずか「20分の1」(ソバ調べ)にすぎず、その多くが微罪で片づけられている。政権は反政権デモを粉砕しても排外デモは容認し、その機運を助長しているのが実態だ。

 最近の特徴は、少数のスキンヘッドの若者による殺傷事件だけでなく、有力な排外主義団体が扇動した数十〜数百人の大規模な外国人襲撃事件が目立つことだ。22日夜にはクレムリンから至近のモスクワ中心部で、排外主義者50人以上がカフカス出身者らを襲撃する事件が起きた。

 国際人権団体「ヒューマン・ライツ」のブロド・モスクワ支部長は「(モスクワの事件に参加した)団体は全土で民族間対立を扇動しており、昨年来の大規模衝突にも関与している」と指摘。「一部の下院議員や地方当局者はあからさまにこの団体を支援している。最近は政治家の間に排外機運を利用しようとする動きすら広がっており、きわめて危険だ」と警鐘を鳴らす。

 そもそもロシアには、40倍超ともいわれる貧富の格差や汚職など深刻な社会・経済問題が存在する。不満を募らせる住民ははけ口を外国人に求めがちであるうえ、多くの政治家が「問題の元凶をは外国人だとしておくことが得票につながる、と考える構図ができている」とブロド氏は指摘する。

 ロシアではすでに民主派政党までが排外的な論調を強め、排外団体幹部が参加する新党まで誕生した。ブロド氏は「選挙の季節に向けて排外事件が増加するのは避けられそうにない。政権は法を厳格に適用して犯罪者を取り締まり、根本にある社会問題の解決に全力を挙げるべきだ」と話している。

ロシアこええ。有力な排外主義団体ってなんだ。