バース党員復職に道開く法案がイラク議会で承認された事について。

以前、
イラクのマリキ首相の立場ってどうなんだろ。その2(2:法案・合意編)。
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070903/1188821895

 バース党員の公職復帰制限が緩和されても、政府省庁が連立会派に省庁ごと割り当てられ、すでに“党派性”を帯びている現状で、復帰を希望する旧バース党員は少ないとみられ、実効性については疑問視される。

と書いて、僕も実効性については疑問視していたので、なにか目を引くような記事があったらとりあげようかと思っていてそのままだったのですが、
空野雑報さん
バース党員の公職追放,解除:イラク
http://blog.goo.ne.jp/teiresias/e/fd97eec3491d9cf6f05f6e0c6567b5b9
を読んでそろそろ書いてみようかと。

まぁ今回の記事でも
イラクバース党員復職に道開く法案承認 国民融和へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080113-00000000-mai-int

 【カイロ高橋宗男】イラク連邦議会は12日、03年のイラク戦争後に公職追放された旧フセイン政権時代の政権党、バース党の党員復職に道を開く「説明責任と正義法案」を承認した。追放政策はイラク戦後に激化したイスラムシーア派スンニ派の宗派対立の主要原因の一つとされており、イラク政府は今回の法制化を国民融和に向けたステップとしたい考えだ。AP通信が伝えた。

 同法によると、過去にイラク人に対する犯罪に関与していない一般党員は復職が保障される。幹部は退職扱いで、犯罪に関与した幹部は裁判にかけられるが、家族は年金を受け取ることができる。

 バース党員追放政策はイラク戦争後に米占領当局主導で導入された。しかしスンニ派による米国やイラク政権に対する抵抗の原因となったため、米国は方針を転換。政権に政策の緩和を求めてきた。

 イラクでは各省庁の縁故採用など腐敗が浸透している。法律の運用が徹底されず、旧バース党員の間に不満が高まる可能性も残されている。

と不安要素はあるのですが、
2007/12
フセイン元大統領処刑から1年、イラクで消えぬ宗派対立
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20071230i213.htm

 【カイロ=宮明敬】イラクフセイン元大統領が判決確定後わずか4日で絞首刑に処せられてから、30日で1年が過ぎた。

 死刑執行人がイスラムスンニ派の元大統領をののしり、シーア派指導者を礼賛する映像がネットで流され、死刑は宗派対立をさらにあおる結果になったが、シーア派主導のマリキ政権は1年後の今も、その傷を癒やし、国民和解を実現する政治的措置を講じられないでいる。

 テロと宗派対立に揺れる「フセイン後のイラク」で、国民和解を進める施策として注目された「非バース化」緩和法案は今年11月、国民議会に提出されたが、成立の見通しは立っていない。フセイン政権を担ったために公職追放された旧バース党員(スンニ派が主流)を、再び公職に復帰させる法案だが、シーア派強硬派指導者ムクタダ・サドル師の影響下にある議員らが強く反発しているからだ。

 仮に成立しても、国民和解の特効薬になるかどうかも不透明だ。過去の経歴を隠して生活する旧バース党員は本紙バグダッド通信員に、「宗派間の憎悪が消えない中で、(公務員になるために)名乗り出るのは自殺行為に等しい」と語った

 産油都市が南部と北部に集中するイラクで、石油収入の公平な分配を目指す石油法案も、宙に浮いたままになっている。今年2月に閣議で了承されたが、外国企業との採掘契約締結を単独で進めるクルド自治政府などとの利害対立が続いているからだ。北部産油都市キルクーククルド自治区編入の是非を問う住民投票も、憲法が定めた年内実施ができず、半年延期された

 ブッシュ米政権がイラク民主化進展の一里塚として期待した地方選挙の制度整備と実施も実現していない。マリキ首相は今年7月、年末までに実施すると表明したが、空手形に終わった。

 イラク治安部隊は30日、フセイン元大統領が眠る故郷のオウジャ村や支持者が今も多い近郊のティクリートで、騒乱にそなえて厳戒態勢をとった。大きな混乱はなかったが、ティクリートでは、家の外壁にペンキで書かれたばかりのスローガンが目についたという。「我々はフセイン大統領の仇(かたき)をとる」

 スンニ派が多いバグダッドのアザミヤ地区でも、元大統領のポスターが何枚かはられた。イラクは宗派間の怨念(おんねん)をそのままに、国民和解のための政治課題を積み残したまま、2008年を迎える。

(2007年12月30日21時23分 読売新聞)

バース党員が名乗り出るのは自殺行為とまで書かれてますね。

主題とは離れますが、キルクーククルド自治区編入住民投票
ライス国務長官キルクークに飛んだと読んで、ちょっと調べてみました。
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20071220/1198169622
あたりからたどれると思います。ともかくキルクークが油田地帯で、歴史的にはクルド人の土地で、それを快く思わないフセインクルド人を退去させてアラブ系のイラク人を入植とかしていたので、今混乱していると言うことですね。

スンニ派の中にはフセイン支持者はまだいるようですね。

イラクの治安は回復してるような記事も多いのですが、
アルカイダ掃討で治安改善=イラク増派から1年−米国防長官
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080111/1200071521
辺りを読むとバグダッド周辺以外は、大きく回復してるようには思えません。まぁ悪いことばかり書いてもしょうがないとは思うんですが、どうしても楽観する気になりません。皆さんはどうでしょう。