カザフ・カシャガン油田 資源ナショナリズム苦悶 技術乏しく外国頼み

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080118-00000011-fsi-bus_all
いろいろ報道ありましたが、これが一番詳しいようなので。

カザフの位置
 中央アジアカザフスタンで世界有数の巨大油田とされるカスピ海沖のカシャガン油田開発をめぐり、カザフ側は先に日本勢を含む外国企業から権益を一部譲り受け、持ち株比率を拡大することを決めた。旧ソ連圏のカザフの今回の動きは、ロシアの「サハリン2」にみられた「資源ナショナリズム」の再現と警戒されている。一方「(カザフは)外国の技術協力が必要な点をよく理解しておりロシアよりは話のできる国」(大手商社)との前向き評価もある。(藤沢志穂子)

 ■日本の権益低下

 カザフ国営のカズムナイガスは14日、外資保有する持ち株分の一部を約17億8000万ドル(約1887億円)で買い取り、出資比率を8・3%から16・8%に拡大すると発表した。イタリアのENIなど主要4社の比率は、それぞれ18・5%からカズムナイガスと同じ16・8%に低下。国際石油開発を中心に三菱商事などが参加する日本勢の比率は、8・3%から7・6%に低下する。

 外資主導で開発が進んでいたカシャガンで、カザフ側が態度を硬化させたのは昨年6月。出荷時期が当初の2005年から10年に遅れ(今回11年に再延期)、コストも570億ドルから1360億ドルへ大幅に増加することが判明したためだ。

 世界的な原油相場と資材価格の高騰が背景にあるが、さらにカシャガン油田は水深が数メートルの浅瀬にあり、採掘では硫黄分のあるガスが排出されるなど「メジャー(国際石油資本)でも技術的に困難な案件」(外務省中央アジアコーカサス室)といった問題があった。

 そこにカザフ側はロシアと同様、環境問題などを持ち出して主導権を譲るよう要請。加えて昨秋に政府が国益上、問題があると判断した投資案件は契約後でも内容を変えられるという「地下資源法」を制定した。「カシャガン油田を意識した資源ナショナリズム」との見方もあり、商社や電力会社が進めるウラン開発やレアメタル投資への影響が危惧(きぐ)されていた。

 ■露とは異なる?

 ただ今回、カザフは外資と同じ持ち株比率にとどまり、地下資源法も発動されなかった。そのため、ロシアのガスプロムが「サハリン2」で過半数の株式をシェルや三菱商事三井物産から取得した「資源ナショナリズム」とは異なるとの見方が日本側に出ている。

 昨春の甘利明経済産業相のカザフ訪問の際、日本がウラン輸入量を、現在の年間需要の1%から3割に拡大することで合意したのには、見返りに日本から燃料加工などの技術供与をカザフ側に確約した背景があった。

 三菱商事幹部は「カザフにはガスプロムのようにメジャーに匹敵する国営企業がなく技術力も乏しい。ロシアに影響され自国留保分を増やしたい意欲は強いが、外資と共同で開発を進める必要性も理解している」とみている。外務省中央アジアコーカサス室も「カズムナイガスが今後、カシャガンで持ち株を買い増す可能性は低く、日本企業が進めるウラン投資に直接の影響は出ない」と分析した。

 カザフは豊富な資源を原動力に中央アジア諸国のリーダーを自負し、資源供給国として存在感を高めつつある。先進国への仲間入りを熱望、外国企業とは経済合理性のもとで開発を進めるとみられる。だが同時に「したたかで計算高い国」と警戒する動きも根強い。
【用語解説】カシャガン油田

 旧ソ連時代に存在が確認され1990年代に本格調査が始まり、2000年に発見されたカスピ海北部に位置する世界有数の巨大油田。イタリア炭化水素公社(ENI)をオペレーターに、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、米エクソン・モービル、仏トタル、米コノコフィリップスなど欧米系の主要メジャー(国際石油資本)が参画。日本は国際石油開発を中心に、三菱商事などで構成する企業連合が出資する。可採埋蔵量130億バレル、ピーク時の予測生産量は日量120万バレルで、パイプラインで欧州などに供給される予定。