ケミカル・アリ(アリ・マジドまたはハッサン・アルマジド)について振り返ってみようかと。
Yahooにはこれしか報道が無いような。
■ <イラク>クルド人弾圧、マジド被告の死刑執行承認
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080229-00000110-mai-int
とりあえずフセインからさかのぼって見ようかと。
■「私はイラク大統領」「これは茶番だ」フセイン氏、戦争犯罪を否認
http://www.sankei.co.jp/news/040701/kok143.htm
イラクのサダム・フセイン元大統領(67)ら旧政権幹部12人が1日、クルド人虐殺、クウェート侵攻など戦争犯罪の容疑でイラク特別法廷の判事に告発され、本格捜査と起訴に向けた司法手続きが始まった。元大統領は容疑を全面否認した。
手続きはバグダッド国際空港付近の米軍基地内で行われた。特別法廷判事の人定質問に、フセイン元大統領は「私はイラク大統領。元大統領ではない」と答え、弁護士の立ち会いを求め文書への署名を拒否。「裁判は全部茶番だ。本当の犯罪者はブッシュ(米大統領)だ」と述べ、徹底的に争う姿勢を鮮明にした。
代表取材した米CNNテレビなどは、身ぶり手ぶりを交えて雄弁に発言する元大統領の映像を放映した。元大統領の様子が映像で伝えられたのは、昨年12月の米軍による拘束直後以来初めて。
イラク戦争による旧政権崩壊まで24年間、独裁者として君臨した元大統領は拘束後「戦争捕虜」とされたが、今後はイラク当局による捜査を受け、法による裁きを受ける。
同大統領に対する1日の手続きは、約30分で終了した。
6月28日に米英占領当局から主権移譲を受けた暫定政府は30日、元大統領らの身柄の管轄権を得た。アラウィ暫定政府首相は、特別法廷の早期始動で主権回復を国民に印象付けることを狙っている。
12人は、ラマダン元副大統領、アジズ元副首相、クルド人大量虐殺の責任者とされるマジド元国防相や、元大統領に重用された親族など。
特別法廷のチャラビ長官は「これから本格捜査が始まる。十分な証拠が集まれば起訴する」と述べた。また元大統領の起訴は早くて今秋、審理開始は来年以降にずれこむとの見通しを示唆した。
元大統領の国際弁護団は既に有罪が確定した「報復裁判」だと批判、イラク戦争自体の合法性を問う構えをみせている。
◇
代表取材したカタールの衛星テレビ、アルジャジーラと、米CNNテレビが伝えたイラク特別法廷でのフセイン元大統領と判事のやりとりは次の通り。
(元大統領、2人の警察官に付き添われて入廷し着席)
判事 あなたの名前は。
フセイン (驚いた様子。傍聴者の顔を見回す)
判事 あなたはサダム・フセインか。
フセイン そのとおり。私はサダム・フセイン、イラク大統領だ。元大統領ではない。
判事 どこに住んでいるか。
フセイン イラクのあらゆる家に住んでいる。(判事に)あなたも自己紹介してほしい。いつから判事の資格を持っているのか。占領後か、占領前か。
判事 占領前からだ。連合軍からこの法廷での仕事を頼まれた。
フセイン (連合軍という言葉に笑う)あなたは占領者の決定で仕事をしているのか。あなたはどの法律に基づいて私を告発するのか。
判事 イラク法に基づく。
フセイン 私がつくり、施行した法律に基づいて、という意味か。私は法律家だ。あなたも法律家だ。われわれは法に基づいて話をすべきだ。
判事 あなたは7項目の告発を受けている。第1に、化学兵器によるハラブジャ(イラク北部のクルド人地区)の罪なき人々の殺害…。
フセイン (7項目を聞いた後、怒り出す)あなたはイラク人なのにどうして「侵攻」などと言えるのか。クウェートはイラクの都市だ。イラク人女性を安く買える売春婦にしようとしたクウェート人から、イラク人を守ろうとしたのだ。あなたはなぜあんな犬どもを擁護するのか。
判事 ここは法廷だから、そのような言葉は使わないように。
フセイン これは茶番だ。ブッシュ(米大統領)はこれを次の選挙のために利用している。本当の犯罪者はブッシュだ。
判事 これは調査のための審理だ。あなたの権利をお知らせする。(説明)
フセイン 弁護士がいない。(すべての書類に署名を拒否)私を弁護する弁護士は大勢いるだろう。弁護士がいれば署名する。
判事 あなたは多くの罪を犯した。
フセイン これはすべて嫌疑で、犯罪ではない。私は弁護士をつけることを求める。
判事 あなたは弁護士を雇う権利があるが、資金はあるか。
フセイン (冗談めかして)米国によると、私はジュネーブに大金を持っているそうだから、雇えるに違いない。
判事 弁護士がいないとして何も話さず、何も署名しないのは、あなたの権利だ。弁護士があなたに面会してあなたの話を聞くまで審理を延期する。(共同)
◇
「これは全部茶番だ。本当の犯罪者はブッシュ(米大統領)だ」−。イラクのかつての独裁者フセイン元大統領は、きっぱりと対決姿勢を示した。イラク特別法廷で1日行われた初の司法手続き。人定質問には「私はサダム・フセイン。イラクの大統領だ」と最高権力者の肩書を誇示、書類への署名も「弁護士の立ち会いなしではできない」とはねつけた。
代表取材のテレビ映像によると、法廷に現れた元大統領は、グレーのジャケットにノーネクタイ、黒っぽいズボン姿。いすに腰掛け、身ぶり手ぶりを交えて判事に論争を雄弁に挑む。時折熱心に、紙切れにメモを取っていた。
風ぼうは、故郷に近い北部ティクリートの農家敷地内の穴蔵で昨年12月13日、米軍に発見された時の薄汚れた姿とは一変。当時は、ぼさぼさの髪に、ひげが伸び放題だったが、司法手続きに現れた元大統領は髪を整え、顔中を覆っていたひげはきれいに刈り込まれていた。
顔はほっそりとし、米CNNテレビは体重が約5キロ落ちたと伝えた。廷内に入って手錠を外された開廷直後の大統領は顔が青ざめ、声がかすれていたようだが、次第に落ち着きを取り戻した。時に目を力強く見開き、持論を切れ目なく展開する姿から"やつれた"という印象は受けない。
「私がつくり、施行した法律で私を裁こうというわけか」「あなたはいつから判事の資格を持っているのだ」−。元大統領はあざけるような笑いを交えながら、判事に逆に質問を繰り返すなど、判事に対し心理的に優位な立場に立とうという戦術を見せた。
◇
イラク特別法廷で判事がサダム・フセイン元大統領に示した7項目の告発容疑は次の通り。
一、1988年、イラク北部ハラブジャでの化学兵器によるクルド人大量虐殺
一、裁判なしで多くのイラク国民を殺害
一、聖職者らの殺害
一、88年の「アンファル作戦」によるイラク北部のクルド人殺害
一、90年のクウェート侵攻
(共同)
◇
イラクのサダム・フセイン元大統領が1日、イラク特別法廷に出廷し、「元独裁者」に対する自国民による司法手続きが始まった。復讐(ふくしゅう)に陥らず、公正な手続きを保てるか。集団殺害や人道に対する罪など、戦争犯罪は国際法廷で裁くという潮流に反発する米国の思惑も見え隠れする。法廷の行方は波乱含みだ。
元国家元首らによる戦争犯罪や虐殺に対する法廷としては、ミロシェビッチ元大統領に対する旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ハーグ)や、国連がタンザニアに設置したルワンダ国際犯罪特別法廷などがあり、いずれも国際社会の主導だ。
▽報復の法廷
これに対しイラク特別法廷はイラク法に基づき、長官も裁判官もイラク人。暫定政府のアラウィ首相にとっては、国民の自信を回復させる好機といえる。
だが首相自ら「フセイン政権による暗殺未遂の被害に遭った」と主張するなど、政権幹部の多くは迫害された過去を持つ。過去30年間に約30万人が虐殺されたとの指摘もあり、国内には元大統領の恐怖政治に対する怒りが充満している。
司法手続き開始の直前になって、ヤワル大統領が死刑の復活を公表。「極刑判決」に向けた動きは加速している。
米政府は「弁護士との接見など十分な権利」が元大統領らに保証されると強調するが、20人で構成する元大統領の国際弁護団は「報復の法廷になる」(リュドー弁護士)と懸念している。
同弁護団は暫定政府が安全を確保できない限り、バグダッド入りはしない方針だ。フランス紙ルモンドは、暫定政府のハッサン法相が同弁護団のガザウィ弁護士(ヨルダン人)に電話し「弁護のためにイラクに来るなら、バラバラに切り刻む」と言った、と報じた。
▽モデルケース一方、米国が法廷の運営に深く関与している事実は隠しようがない。表面的にはイラク人による法廷だが、公判維持に必要な証拠収集は連邦捜査局(FBI)が主導し、立証方針は米国の専門家が立案したとされる。
常設の国際刑事裁判所(ICC)への米国人引き渡しに抵抗を続けるなど「司法の国際化」に反発するブッシュ米政権は「戦犯法廷のモデルケースをつくる機会」(米紙ニューヨーク・タイムズ)ととらえているもようだ。
専門家からは「国際法廷で裁くほうが好ましい。(イラクでは)公正な裁判を行う環境は整っていない」(藤田久一・関西大大学院教授)との懸念が出ている。(共同)
(07/01 21:32)
【関連記事】
・フセイン元大統領を告発 戦争犯罪でイラク特別法廷(07/01)
・フセイン元大統領らイラク引き渡し 弾圧の過去清算なるか(07/01)
・フセイン元大統領訴追へ イラクに管轄権引き渡し きょう召喚(07/01)
・「質問ある」とフセイン氏 管轄移管告げられて(07/01)
クウェートの売春婦発言に関しては、こちら↓にもありました。本当なんですかね。
■フセイン元大統領、「ビンラーディンは狂信者」と供述
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080130/1201697285
一方、ピロ氏が90年のクウェート侵攻の理由について尋ねたところ、元大統領は、原油の盗掘などの懸案協議に向け外相を派遣した際、クウェート側から「すべてのイラク人女性を売春婦として差し出せ」と侮辱されたといい、「罰を下したかった」と述べたという。侵攻に関し、元大統領が感情的な理由を明らかにしたのは初めてとみられる。
法廷の正統性に関しては、
■クルド人虐殺の「ケミカル・アリ」に死刑判決 イラク
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070625/1182776359
高等法廷は当事国が裁く国内裁判所とされ、国際法廷ではない。米国の人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は「国際法に基づくジェノサイドとして裁くには、法廷の正統性や能力に問題がある」と疑問を提示。判決に先立ち弁護側も「法廷審理の進め方に問題がある」として、国連の潘基文(パン・ギムン)・事務総長に公判を止めるよう要望していた。
とありましたが、無視されたんでしょうね。
ケミカル・アリに関しては、
2007/06に死刑判決が出ています。
■「ケミカル・アリ」に死刑判決 クルド人虐殺で
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200706240008.html
2007.06.24
Web posted at: 15:07 JST
- CNN/AP/REUTERS
イラク・スライマニヤ──1980年代後半、イラク北部で起きた化学兵器によるクルド人虐殺(アンファル作戦)をめぐる裁判で、「ケミカル・アリ」ことハッサン・アルマジド元国防相に24日、死刑判決が言い渡された。
アルマジド被告はフセイン元大統領のいとこで、旧支配政党バース党の幹部。検察側は人道に対する罪などで死刑を求刑し、イラク北部住民の多くも極刑を期待していた。
検察側は、イラン・イラク戦争(1980─88年)期間中に殺害されたクルド人が18万人にのぼり、民間人が大半だったと指摘。アルマジド被告は、クルド人武装勢力がイラン側を支援していたため、命令に従って軍事作戦を行ったとして、無罪を主張した。
88年には別のクルド人居住地ハラブジャで推定5600人が殺害されたが、アルマジド被告は関与を否定している。
で、アルマジド被告も無罪を主張したアンファル作戦ですが、
■アンファル作戦(アンファール作戦)についての報道をちょっと調べてみた。
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070404/1175694422
であったように、
アンファル作戦でフセイン政権は、クルド人数十万人を強制移住させたり殺害したとされる。同当局者によると、元大統領は8月の予審尋問で、クルド人がイラクと交戦中だったイランを支援していたと主張。その上で特別法廷に対し、作戦を命令したことの正当性を判断するよう求めた。
という事で、たしかにアメリカだって自分が敵対してる勢力を支援する武装勢力は殺すのでは?と思えます。
あと、
作戦でクルド人約18万人が犠牲になったとされる。だが、圧政下で行方不明のケースが多い。地域政府が裁判に向けて、遺族などの証言や証拠を集めたところ、53000人分しか証拠書類として提示できなかった。
ともありました。まぁ53000人なら少ないとは決して思いませんが。
ともかくフセインはアンファル作戦を自分が命令をしたことを認めていました。この強制移住というのにはキルクーク↓も含まれるんですかね。
■<イラク>バルザニ・クルド地域政府議長、本紙と単独会見
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20070407/1175902416
キルクークは周辺に油田地帯が広がり、旧フセイン政権は、アラブ人支配を確立するためクルド人を別の土地に強制移住させ、アラブ人を入植させた。旧政権崩壊後はクルド人が多く帰還している。
で、ケミカル・アリの死刑の確定は
2007/09です。
■“ケミカル・アリ”の死刑が確定
http://www.sankei.co.jp/kokusai/middleeast/070905/mda070905000.htm
イラク高等法廷の控訴審は4日、旧フセイン政権が1980年代、自国のクルド人を化学兵器などで大量虐殺したとされる「アンファル作戦」をめぐり死刑判決を受けた、「ケミカル・アリ」(化学兵器のアリ)の異名を持つマジド元国防相ら旧政権高官3人の控訴を棄却した。
裁判は2審制で、死刑判決はこれで確定。30日以内に執行される。
同作戦ではフセイン元大統領を含め7人が起訴され、元大統領はイスラム教シーア派住民を虐殺した別事件で昨年末に死刑を執行された。
旧政権高官の裁判では、これまでに元大統領を含む元高官4人が処刑された。
元国防相は元大統領のいとこ。アンファル作戦の主犯とされ、6月に死刑判決を受けた。
(共同)
2008/02
■「ケミカル・アリ」の死刑執行へ、イラク
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2357723/2691407
【2月29日 AFP】イラク大統領評議会は29日、故サダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領のいとこで側近だった「ケミカル・アリ(Chemical Ali)」こと、アリ・ハッサン・アルマジド(Ali Hassan al-Majid)元国防相の死刑執行を認めた。イラク政府筋が同日、AFPに明らかにした。執行の時期は未定だという。
アルマジド元国防相は、1988年のクルド人虐殺事件(アンファル作戦)に関与したとして前年6月に死刑判決が下されており、10月中にも絞首刑が執行される予定だったが、司法手続きなどにより執行が遅れていた。
「ケミカル・アリ」の異名は、アルマジド元国防相がクルド人虐殺に毒ガスの使用を命じたことから付けられたもの。アンファル作戦ではクルド人約18万2000人が殺害された。
アルマジド元国防相のほか、同事件への関与でSultan Hashim al-Tai元国防相とHussein Rashid al-Tikriti元軍副司令官も死刑判決を受けており、刑の執行待ち状態だ。(c)AFP
しかしこの司法手続きというのは何でしょうね。
■「ケミカル・アリ」の死刑執行、ラマダンのため延期=イラク首相
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20071004/1191500517
と延期されたはずでしたが。
あと最近の記事では
■「ケミカル・アリ」の死刑執行に同意 イラク評議会
http://www.asahi.com/international/update/0301/TKY200803010044.html
イラクの正副大統領3人で構成する大統領評議会は1日までに、フセイン元大統領のいとこで元国防相のアルマジド死刑囚の死刑執行を承認した。執行日は明らかにされていないが、マリキ首相の側近は「数日以内」と話している。ロイター通信などが報じた。
同死刑囚は、旧フセイン政権が80年代にクルド人約18万人を殺害したとされる「アンファル作戦」の生物・化学兵器の責任者で「ケミカル・アリ」の異名を持つ。旧政権崩壊後、ジェノサイド(集団虐殺)などの罪に問われ、イラクの最高裁にあたる控訴院で昨年9月、死刑判決が確定していた。
イラクの国内法では、控訴院で死刑が確定した場合、30日以内に執行されることになっているが、アルマジド死刑囚とともに死刑判決を受けた軍の元幹部2人について「命令に従っただけで死刑は厳しすぎる」という意見も政権内にあり、執行が延期されていた。
と「命令に従っただけで死刑は厳しすぎる」という意見もあったようですが。