<ジンバブエ>市民、命がけで国外脱出…大統領派の暴力恐れ

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大統領選決選投票のポスターが残る街角は、落ち着きを取り戻しつつあるように見える=ハラレで、高尾具成撮影

 【ハラレ高尾具成】ムガベ大統領が国際的非難にかかわらず、野党不在のまま大統領選決選投票を強行したアフリカ南部ジンバブエに入った。町は平静さを取り戻しているかのように見えるが、市民は大統領派による暴力を恐れ、自宅でじっと息を潜めるほか、命がけで国外脱出をはかっている。

 首都ハラレで国外脱出に詳しい男性(32)に会った。「今やジャンプ(国外脱出)は当たり前だ。もちろん違法だ」。まずブローカーに約100米ドルを渡す。ワニなどの野生動物が生息する川を渡り、高圧電流の流れる鉄条網の下にすきまをつくり、くぐり抜けていく。見つかれば撃ち殺される覚悟での脱出だ。バスの座席下や荷物に紛れ込み、国境を越える者もいる。

 別の男性は「生きていくためには国を出るしか選択の余地はない」と話す。南アフリカボツワナなどに数万人とも言われる市民が流れ込む。「18〜45歳の社会の柱を担う労働力が国外流出している」とある男性は憂慮する。

 残された家族はつらい日々を送る。南アの飲食店で働く夫からの送金が家族の糧というハラレ郊外に住む40代の女性は毎月、ハラレ中心部のバスターミナルに向かう。唯一のきずなである携帯電話で連絡を受ける。「予定到着時刻とバスの番号、運転手の名前」。国境を越えるバスの運転手は約1割の稼ぎを受ける形で現金を運び、届ける。「リスクはあるがこれしか生きる手立てがない」と話す。

 3月の大統領選では、最大野党「民主変革運動(MDC)」のツァンギライ議長がムガベ大統領より多くの票を獲得したものの、27日の決選投票に向けて大統領派の暴力が激化。90人前後の野党支持者が殺され、議長は選挙戦から撤退した。現在、ハラレのMDC本部事務所は、鉄格子付きのドアが閉じられ、人の出入りはほとんどない。決選投票拒否を呼びかけたMDCのチラシが焼かれ、風に舞っていた。

 大統領派の暴力は市民に「何をされるかわからない」というおびえを植えつけた。家でじっと息を潜める市民も多い。「この1週間で外に出たのは今日と投票日だけだ」。ある中年女性は、二重投票を防ぐ名目で選管から赤いインクが塗られた指先を縮こまるようにじっと見つめた。

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「そんなにいやなら、この国から出て行け」とはよく聞く言葉ですが、出て行く自由も無いとは。何のための独立だったんでしょうか。