身代金で繁栄する海賊の町 ソマリア、住民からの尊敬高まる

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081120-00000586-san-int

 ソマリア沖を航行する船舶を乗っ取ってもうけた身代金により、“海賊の町”が繁栄している。高騰する身代金目当てに海賊を志す住民たちが増えている−と英国の専門家も警鐘を鳴らす。無政府状態に苦しんでいたソマリアの貧村はどのように変貌(へんぼう)したのか。欧米メディアは、海賊を英雄視する風潮が広がる海賊の拠点の実態を伝えている。

 AP通信によると、ソマリア沿岸部のハラデレは今、レストランやインターネットカフェが次々とできてにぎやかだ。補給のために上陸する海賊をあてにした売店も設けられている。“海賊景気”の恩恵を受け、非常に高価な自家用発電機を購入できる住民も出てきた。

 沖合には、海賊によって乗っ取られたサウジアラビアの大型石油タンカーが係留されている。タンカーがやってきた際、住民たちは集まって祝った。

 「海賊は私たちを頼り、私たちは海賊からもうける」と、商店を営む女性はAP通信に語った。海賊に対する女性の信頼は厚く、店では海賊がツケで買い物ができる。身代金入手後に支払うという。

 5人の子供を持つ別の女性は、「合法だろうが非合法だろうが、(海賊がもたらしたお金によって)私たちの町の生活が始まったのだ」と述べた。

 約20年間、無政府状態が続くソマリアでは、イスラム原理主義勢力と暫定政府軍の戦闘などのため、治安が極度に悪化している。

 AP通信によると、住民の平均寿命は46歳、4人に1人が5歳未満で死亡する。海賊が身代金を町で浪費することによって、仕事が生まれ、住民は収入を得ることができるのだ。

 ロシア製戦車などを積んで乗っ取られたウクライナの貨物船が、沖合に係留されているソマリア北東部のエイルでも同様の状況だ。英紙ガーディアン(電子版)によると、町には海賊向けのホテルや、貨物船の食事を用意するレストランが急ごしらえされた。海賊船に燃料を売って稼ぐ業者もいる。ほかの町では15ドルの麻薬がエイルでは65ドルで売れるといい、景気のよさがうかがえる。

 「(身代金が入ると)われわれは最初にすてきな家や車を買う。それから銃やほかの武器を買い、残りの金は息抜きに使う」と語るのは、北部ガロウェの海賊の1人だ。豪邸に住み、高級車に乗る。海賊が妻を増やすのも、習慣のようになってきた。

 海賊の豪華な結婚式に出席したガロウェの21歳の女性は、「女性が海賊との結婚に興味を持っているのは本当。普通の男性にこ
んな結婚式はできない」と同紙に語っている。

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なんと言いますか、無政府状態は海賊より怖いと言う事でしょうか。

一方でこんな記事もあります。
海賊、かつての巣窟マラッカでは激減 沿岸国一致の取り締まり奏功
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081120-00000601-san-int

 【シンガポール=宮野弘之】アフリカ・ソマリア沖での海賊事件が急増する一方、マレー半島スマトラ島に挟まれ、かつて海賊の巣窟(そうくつ)と呼ばれたマラッカ海峡シンガポール海峡での事件は激減した。沿岸国が一致して海賊を取り締まる態勢を作り、国際社会がそれを支える形が実効をあげている。無政府状態ソマリアが、こうした態勢を作り上げるのは容易ではない。

 国際海事局(IMB)によると、今年1〜9月のマラッカ・シンガポール両海峡での海賊事件(未遂を含む)は4件で、2004年同期(32件)の8分の1に激減した。

 両海峡は、東アジアと中東・欧州を結ぶ重要航路で年間約9万4000隻が航行。日本にとっても中東からの原油輸送の生命線だ。1日にタンカーで両海峡を通過する原油量は1500万バレル以上という。

 両海峡は航路が狭く、船舶は通過の際、速度を落とさなければならない。さらに小さな島が多く隠れ場所に困らないため、もともと海賊が多い地域だった。

 しかし、2001年の米中枢同時テロ以降、テロ対策強化の必要性が叫ばれるようになったこともあり、05年の国際海事機関(IMO)ジャカルタ会議で、インドネシア、マレーシア、シンガポールの沿岸3カ国が合同海上トロールを実施することで合意。その後、軍用機による上空からの偵察活動も実施された。

 こうした多国間協力が奏功すると同時に、海賊の拠点とされたインドネシアアチェ州の紛争が終結し、治安が改善されたことも海賊事件激減の背景にある。

 ただ、国際協力体制も治安改善も、それぞれが主権国家であり、海軍や沿岸警備隊が機能しているからこそ期待できる。現在のソマリア暫定政府は、自国の海賊を逮捕することも、裁く力もない

 実際、10月末にフランス海軍はソマリア沖で捕らえた海賊9人をソマリア側に引き渡したが、その後、ソマリアで裁判が行われたという情報はない

 一方、英国はソマリア沖で11日、乗っ取った漁船を使ってオランダ船を襲おうとした海賊8人を拘束。18日にソマリアの隣国ケニアに引き渡した。フランス通信(AFP)によると、ケニア当局は20日、8人を国際的な海賊取り締まりに関する合意に基づき、起訴したという。

 今年6月の国連決議第1816では、ソマリアの海賊対策で「必要なあらゆる措置」の行使を認めているものの、他国での裁判までには言及していない。

 ソマリア政府が機能しない以上、今後もこうした手段を使って、取り締まりを強めるしかないようだ。

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確かに
2008/10
ソマリアの海賊対策どうする 貨物船乗っ取り1週間
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081002-00000566-san-int

 【シンガポール=宮野弘之】ロシア製のT72型戦車33両や武器を積んだウクライナの貨物船が9月25日にソマリア沖で海賊に乗っ取られてから2日で1週間経過したが、依然として膠着(こうちゃく)状態が続いている。今回の事件は欧州とアジアを結ぶ重要航路であるソマリア沖の海賊問題の解決が、国際社会にとって極めて重要であることを浮き彫りにした。さらに、事実上の無政府状態にあるソマリア自体も、イスラム原理主義勢力の伸長で、アフガニスタンに続く新たなテロリストの温床になるとの懸念も指摘され始めている。

 貨物船はパナマ船籍ウクライナの会社が運航。ウクライナとロシア、ラトビア人の船員21人が乗船し、ケニアのモンバサ港に向かう途中、ソマリア沖で武装した海賊に乗っ取られた。現在ソマリア中部のホブヨ沖に停泊。米第5艦隊の艦船が監視を続けている。

 ケニアのナイロビで海賊問題を追っている東アフリカ船員支援計画の当局者によると、海賊とウクライナの船主側の交渉は電話で行われており、2000万ドルを要求する海賊側にウクライナの船主側は減額を求め、決着にはなお時間がかかるという。

 今回の事態を受け、ソマリア暫定政府当局者は、米国はじめ周辺海域に展開するフランス、英国などに海賊摘発を求めたが、各国とも自国民が直接かかわっておらず、逮捕してもソマリア国内での裁判さえ難しいため手をこまねいている。

 国連安全保障理事会は6月、ソマリア領海内で海賊行為の取り締まりを行う権限を各国に与える決議を採択したが、「具体的な手段を定めず各国に判断を任せており、実効性に乏しい」(海運関係者)というのが実情だからだ。

 ソマリア周辺海域とくにイエメンとの間にあるアデン湾は、欧州とアジアを結ぶスエズ運河に通じ、年間2万隻以上が通過する国際海運の要衝だ。しかし、ソマリアは首都モガディシオ周辺と一部地域以外、沿岸部はほとんどイスラム勢力が掌握。海賊は、沿岸部の港湾都市エイルなどを拠点にイエメン近海にまで出向いて船を襲撃している。

 マレーシアの国際海事局(IMB)海賊情報センターによると、ソマリア沖では今年だけで30隻以上が乗っ取られ、未遂に終わったのも含めると、被害はそれ以上だ。海賊被害が続くことで、ここに来て船荷の保険料が1年前の10倍に上げられたという。

 さらに、今回の事件では船に積まれていたロシア製戦車や武器が、ケニア経由で、スーダン南部の反政府勢力に流されるものだったとの疑惑が浮上ケニアの地元紙ネーション(電子版)も2日、信頼できる軍関係者の話として、戦車や武器はモンバサ港から陸路でスーダンのジューバに運ばれる予定だったと伝えた。同紙はさらにこれまでもロシアの武器がケニア経由でスーダンに送られていると指摘した。

 ケニア政府は否定しているが、ソマリアの海賊問題が地域の新たな問題を浮かび上がらせた格好だ。

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とありました。この問題ちゃんと見ていなかったのですが、
ウクライナ船乗っ取り、積み荷の戦車はスーダン
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081017-00000512-san-int

 【ロンドン=木村正人】アフリカ東部のソマリア沖で戦車や弾薬を積んだウクライナの貨物船が海賊に乗っ取られた事件で、積み荷の兵器は紛争国のスーダンに送られる途中だったことが分かった。英BBC放送が入手した送り状には「南スーダン政府」の略号が記されており、スウェーデンストックホルム国際平和研究所のホルトム氏は「ウクライナの輸出した武器が紛争国に横流しされている疑惑の一端が明らかになった」と話した。

 送り状には旧ソ連製のT72型戦車33台、てき弾発射装置、弾薬などが記され、契約番号の中に南スーダン政府のことを示す略号が含まれていた。スーダンでは2005年にスーダン政府と南部のスーダン人民解放運動が和平に合意し、南北内戦は終結。翌年に南スーダン政府が樹立された。

 戦車が南スーダン政府に配備されると、和平の前提である南北の戦力バランスが崩れる恐れがある。

 ウクライナ政府の発表では、積み荷は紛争国ではないケニアに合法的に輸出されることになっていた。しかし、実際にはケニア経由で南スーダン政府に運ばれる計画だったようだ。

 同氏によると、ウクライナは04〜07年にかけ27カ国に小・軽火器を輸出しているが、欧州連合(EU)加盟などを念頭に国連に報告するなど武器輸出の透明性を増してきた。しかし、リビヤやチャド、ケニアに輸出された小・軽火器がスーダンなどの紛争国に横流しされている疑惑が以前から指摘されていた。

 同氏は「ウクライナがかかわっていたわけではないが、武器輸出国として最終の行き先には目を光らせるべきだ」と語った。

 一方、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の報告書によると、今年に入ってソマリア沖で海賊に襲われた貨物船などは61隻にのぼっており、昨年1年間と比べても2・5倍の急増ぶり。身代金の要求額もうなぎ上りに上昇しているといい、今年だけで計1800万〜3000万ドル(18億3400万〜30億5700万円)の身代金が支払われたという。

 こうした事態を受け、EU加盟国の有志国が協力して海賊対策を進める動きも出てきている。

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戦車は南スーダン行きで決定だったようです。それはともかく、国連決議もソマリアの司法も当てにならないようですね。

国連決議に関しては昨日書いたとおり
安保理各国と海賊対策協議=国連決議の延長要請も−米政府
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20081120/1227189359
より12月で切れる決議の期間延長と実効性のある対策が取れるようにする動きがあるようです。