「中央アジアの北朝鮮」トルクメニスタン 岐路に立つ独裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081204-00000609-san-int


買い物をする市民でにぎわうルースキー・バザール(ロシア市場)=トルクメニスタンの首都アシガバート(写真:産経新聞

 言論の自由などを認めないその強権体制から、「もう一つの北朝鮮」とも称される中央アジア天然ガス大国、トルクメニスタン。「トルクメンバシ」(国父)と称して自らを神格化した独裁者、ニヤゾフ終身大統領の急死から約2年が過ぎ、後継者のベルドイムハメドフ大統領は順調に権力を掌握したようにみえる。ただ、天然ガスをめぐる諸外国の争奪戦は激しさを増し、外国人に固く門戸を閉ざしてきた孤立主義にも変化の兆しが表れていた。(アシガバート 遠藤良介)

空想都市

 首都アシガバート中心部には、真っ白な外観で統一された豪勢な政府庁舎や高層住宅が立ち並ぶ。人通りのない夜間も建物や噴水がライトアップされ、人工的な雰囲気を漂わせていた。上部のニヤゾフ像が毎日一周するという「中立の塔」が今も市内を見下ろす。

 他方、街の随所に掲げられていたニヤゾフ氏の巨大な肖像は、ベルドイムハメドフ大統領のものに取って代わられ、“脱ニヤゾフ化”も進んでいた。

 今回、斎藤泰雄大使(駐ロシア大使兼任)の同行記者団として入国を許されたものの、市内では常に政府情報員らが張り付き、取材の自由は一切なかった。政権批判が刑法で禁じられているのは相変わらずだ。

 北朝鮮と異なるのは、埋蔵量で世界4位とされる豊富な天然ガス収入が国民生活を保証していることだ。

 平均月収は100〜200ドル(9300円〜18600円)だが、電気やガス、水などが無料で、住居費やガソリン代も安く抑えられている。市内のバザール(市場)では、売り子や客が「生活には何の不満もない」と一様に政権を礼賛した。

改革開放も?

 ベルドイムハメドフ大統領は昨年2月の就任後、国防・保安系の省庁を中心にニヤゾフ時代の高官を次々と罷免、自らの出身部族、テケの比較的若い世代を登用して新たなエリート層をつくった。ただ、官僚の頻繁な粛清で権力保持を図ったニヤゾフ氏の時代と違い、排除される官僚らも投獄まではされていない。

 大統領はその一方で、ニヤゾフ政権時代に短縮された子供たちの修学年限の拡大や、学生らの国費留学を計画。インターネットや携帯電話の普及も約束している。亡命中の反政権派が不参加とはいえ、今月14日に行われる議会選挙では、定数が50から125に増員され、外国からの選挙監視団も受け入れる予定だ。

 拓殖大学海外事情研究所の中島隆晴氏は「ベルドイムハメドフ氏は自身の権力基盤を固めつつ、ニヤゾフ時代のあまりに理不尽な政策を修正しようとしている」と指摘する。

 モスクワにある独立国家共同体(CIS)研究所のグロジン中央アジア部長も、「これだけの資源を持った国が孤立したままでは済まされず、経済発展や資源開発には外国からの投資と優れた人材の育成が不可欠であることを、ベルドイムハメドフ氏は理解しているのでは」と見る。

鵜の目鷹の目

 トルクメンのガス・パイプラインは従来、ロシア向けしかなく、価格決定権をロシアに握られてきた。

 しかし、すでに中国向けパイプラインの建設が進んでいるほか、ロシアへの資源依存度を下げたい欧州や米国は、ロシアを回避するカスピ海横断ルートを実現しようとアプローチをかけている。

 ベルドイムハメドフ大統領自身、11月にはドイツとオーストリアを訪問するなど、天然ガスを武器にした全方位外交に利を見いだしているように見える。

 国民側も実は、閉鎖的な国のあり方に冷ややかだ。ある中年女性は「官僚の汚職がひどく、無料とされる教育も実際は袖の下を払わねばならない。食料品などの物価も上がっている」とし、「国民の多数派は不満を抱いている。国を開くべきだ」と声を潜めた。アシガバートでは、国営テレビに飽き足らない住民が衛星テレビのアンテナを設置、ロシアなど外国の放送を見ている実態もある。

 CIS研究所のグロジン部長は「トルクメンは今、岐路に立っている。経済的に大きく発展する可能性がある一方、ベルドイムハメドフ氏が第2のトルクメンバシと化す可能性も排除されない」と分析している。

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トルクメニスタンはたしかに言論の自由はほとんど無いみたいですね。
日本29位に上昇、中国167位=報道の自由度ランク−国境なき記者団
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20081022/1224689009
しかし北朝鮮よりは大分ましなように見えますけど。