解雇の嵐、帰国の波…世界不況が出稼ぎフィリピン人直撃

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081212-00000072-yom-int

マニラ首都圏パサイ市の海外労働者福祉庁前で5日、解雇された海外労働者への政府支援が不十分だと抗議する労働団体のメンバーら=稲垣収一撮影

 【マニラ=稲垣収一、シンガポール=実森出】労働力人口の2割が海外で就労する「出稼ぎ大国」のフィリピンが、金融危機に伴う世界的な景気後退の余波に揺れている。

 就労先の海外企業から解雇された労働者が相次いで帰国し始めたためで、海外からの送金に国家経済を依存する政府は、対策に頭を抱えている。

 ◆「仕送り依存経済」ピンチ◆

 「政府は、海外労働者を見捨てるのか」。解雇された海外労働者約100人が帰国した今月5日、マニラ首都圏パサイ市の海外労働者福祉庁前で、労働団体メンバーら約30人がプラカードを掲げて気勢を上げた。

 台湾の半導体メーカーで働いていたベルナデット・コルタスさん(24)は11月末、雇用契約期間を1年以上残して、100人余りのフィリピン人とともに突然、解雇を告げられ、帰国した。

 月給の1万7000台湾ドル(約4万7000円)の大半は家族に送金していたが、解雇の結果、弟と妹3人は学費が支払えなくなり、休学。借金をして就職仲介業者に支払った8万5000ペソ(約17万円)も返せる見込みはない。「国内の安月給では家族を養えない。また海外で働き先があるかどうか……」と不安を募らせる。

 世界の景気後退期、真っ先にリストラの矛先が向かうのが外国人労働者だ。1997〜98年のアジア通貨危機当時は、解雇後に帰国費用もままならず、就労先の国で失業したフィリピン人が多数いたとされるが、今回は、当時を上回る規模になるとの見方が強い。

 地元メディアの集計では、金融危機に伴うリストラで、今月上旬までに台湾、豪州などから帰国したフィリピン人労働者は計約1400人。来年以降、米国、韓国の工場労働者やシンガポール、香港で働くメイドなど、海外で就労する約900万人のうち、約50万人が職を失う恐れがあるとの予測も出ている

 フィリピンは国内総生産(GDP)の1割を海外労働者からの送金に依存しており、国内経済への影響も大きいとみられる。比中央銀行の統計では、海外からの送金額は、今年6月の14億5083万米ドルをピークに減少を続けており、欧州の金融大手UBSも、09年の送金額は08年比で8億米ドル減少するとの見通しをまとめた

 これに対し、アロヨ大統領は解雇された海外労働者に最低5万ペソ(約10万円)の貸与や職業訓練を提供するなどの緊急支援を発表。「厳しい雇用情勢下でも、求人の多い国はいくらでもある」として、大統領自らカタールを訪問して海外労働者の受け入れ枠拡大に乗り出すなど、対策に躍起だ。

 しかし、海外労働者支援団体「ミグランテ」(本部・マニラ)のガリー・マルティネス議長は、「自国産業の育成を怠り、労働力の輸出に終始してきたツケだ。このままでは、フィリピン人はどこにも働く場所がなくなる」と訴える。

フィリピンのこういう事情は知りませんでしたが、これから不況はどこまで行くか分かりませんから、よその国のことまでかまってられないと言う面は確かにあるでしょうね。

追記:
そういえば、↓という話がありましたが、どうなるんでしょうね。
【フィリピン】比人看護師・介護福祉士、来春にも日本へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081110-00000008-nna-int

 厚生労働省は6日、日比経済連携協定EPA)に基づくフィリピン人看護師・介護福祉士の受け入れに関する指針を公示した。今後最終調整を行った上で受け入れ機関、就労・就学希望者の募集を開始し、早ければ来年度(2009年4月〜)早期にも就労候補者が日本に向け出発する見通しという。日比EPAの柱の一つとされる比人看護師・介護福祉士の受け入れ実現が一歩近付いた。

 日比EPAの枠組みでは、
◇日本国内の病院・介護施設などで看護師・介護福祉士として就労し、国家資格の取得を目指す「就労コース」
介護福祉士の養成施設で就学して国家資格の取得を目指す「就学コース」
――の2つに分類される。資格取得までの在留期間は看護師が3年、介護福祉士が4年を上限とし、試験不合格または資格不取得の場合は帰国することになる。

 
 厚労省の職業安定局外国人雇用対策課の担当者が7日、NNAに説明したところによると、就労コースについては、フィリピン側との必要準備が整い次第、受け入れ機関や就労希望者の募集を開始する。就労希望者の日本への出発時期は「正式にはまったく決まっていない状況」だが、来年度早期をめどに調整を進める方針だ。就学コースも年明け以降に募集を始め、09年の入国、翌10年4月の入学予定で準備する。最初の2年間で看護師400人、介護福祉士600人の計1,000人を上限として受け入れる予定。

 
 日本の受け入れ調整機関は、社団法人国際厚生事業団(JICWELS)が日本国内唯一のあっせん機関として受け入れ事業を管轄する。フィリピン側の送り出し調整は、フィリピン海外雇用庁(POEA)と高等教育委員会(CHED)が担当することになっている。同担当者は、「この派遣制度は政府レベルで行うもので、フィリピンでは民間のあっせん業者を介さずに、就労希望者が直接担当省庁に申請することになるだろう」との見通しを示した。

 
 同担当者によると、厚労省の6日付の発表を受け、複数の医療機関が受け入れ事業について問い合わせてきたという。国際厚生事業団は近く、受け入れ支援事業に関する説明会を実施する考えのようだ。