露の次世代SLBM開発に暗雲 発射実験相次ぎ失敗、核兵器削減交渉に影響も

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090803-00000591-san-int
 【モスクワ=佐藤貴生】核弾頭が搭載できる次世代の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)開発を進めてきたロシアの責任者が7月下旬、発射実験の相次ぐ失敗を受けて辞任表明する騒ぎがあり、ロシア国内で波紋が広がっている。

 世界の核戦力の主流となりつつあるSLBMの開発の遅れはロシア軍の技術革新の停滞を示すものといえ、年末の失効を控えて活発化する米露の第一次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約をめぐる交渉にも影響を与えそうだ。

 露コメルサント紙などによると、ロシアが開発を進めてきた次世代SLBM「ブラバ」は弾頭が10個搭載できるとされ、核戦力の主役として昨年中には実戦配備される予定だった。しかし、2005年9月から11回にわたって行われた発射実験は4回しか成功しておらず、今年7月15日に白海で原潜ドミトリー・ドンスコイから発射されたミサイルは、わずか20秒後に自爆したという。

 開発を担当してきたモスクワ熱工学技術研究所のユーリ・ソロモノフ所長は7月下旬、ミサイル開発の責任者と所長職を辞任すると表明した。辞任は了承される見通しだが、ポポフキン国防次官は、「新型ミサイルの調査・開発には最大300億ルーブル(約900億円)かかる。国にそんな金はない」と述べ、ブラバの改良を進める以外に道はないとの考えを示した。

 英字紙モスクワ・タイムズによると、ロシアはブラバの完成を前提に新型原潜を開発したばかりで、現在実戦配備されているSLBM「シネワ」を新型原潜に搭載するには莫大(ばくだい)な改良費がかかるという。同紙はミサイルの老朽化が著しく進む中、ブラバは核の対米均衡維持のために欠かせない−との見方を示した。

 核弾頭の運搬手段3種のうち、戦略爆撃機は対空防衛システムの進展で撃墜されやすくなり、大陸間弾道ミサイルICBM)も発射基地が把握されやすい。このため、探知されにくい潜水艦発射型のSLBMが米国を含む世界の核戦力の主力になりつつあるといわれる

 ロシアの安全保障に詳しい日本の専門家によると、陸続きの周辺国を想定したロシアの安全保障戦略からみれば、SLBMはそう重要ではないという。しかし、「米国の核を脅威とみなすなら、SLBMの開発の遅れは深刻な問題になるだろう」と指摘する。

 START1の後継条約交渉でロシアは、開発技術で優位に立つ米国に制約を課して運搬手段で差がつくのを抑えたい意向とされる。しかし、次世代SLBM開発の停滞はロシアの技術の遅れを自ら暴露、弱みをみせた格好となり、核軍縮に熱意を示すオバマ米政権といえども必要以上に譲歩するかは未知数だ。年末までの新条約締結に向け、米露の交渉はさらに激化するものとみられる。

【関連記事】
・インド初の国産原潜 軍事情勢に変化も
・インドが初の国産原潜 中国にらみ海軍戦力増強
・54%が核兵器廃棄を支持 英世論調査
・米露核軍縮 新条約締結に多くの課題
・「核弾頭削減」合意 米露首脳会談 各1500〜1675発に

失敗の記事は
<ロシア>最新型SLBMの発射実験失敗 年内生産は絶望的
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20090718/p1
ですが、ここで年内生産といったのも年末までの新条約締結をにらんでのことだったんですね。ともかく複雑な米露核事情がよく分かる記事だと思います。