コンビニ最大手の店舗数超えた「農作物直売所」 日本農業の“希望”

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 地方の国道沿いで新鮮な野菜や果物を売る「農産物直売所」が、日本の農業を静かに変えつつある。1990年代半ばから増え始め、いまや全国で約1万3千施設と、コンビニ最大手「セブン−イレブン」の店舗数1万2467店(8月末時点)を上回る。農産物の全流通量の5%は直売所ルートといわれ、国やJAも無視できない存在に成長してきた。それは後継者難に悩む農家にとって農業を続けていくための“希望”にもなっている

 ■年間2億人利用

 秋田県大館市の国道沿いにある直売所「陽気な母さんの店」。平成13年の開業から順調に売り上げを伸ばし、20年度の売上高は1億8600万円に上った。農家の女性ら出資者73人でつくる「友の会」が運営。副会長で果樹農家の石垣一子(かずこ)さん(55)は「みんな生き生きと頑張っている。以前のような努力しても所得が伸びず元気のなかった農村が変わってきた」と話す

 直売所はかつては、農家の軒先の無人コーナーやプレハブ小屋のイメージが強かったが、本格的な施設も増えた。自治体や第三セクターが国道沿いの公共施設「道の駅」で開業し、JAも参入した。国が17年に初めて調査したところ、全国で1万3538施設、年間利用者は延べ2億3千万人に上っていた。

 財団法人「都市農山漁村交流活性化機構」の19年の調査によると、直売所の年間売上高は5千万円未満が51%を占めるが、1億〜3億円未満も21%に上り平均は9697万円。全国の総売上高は1兆円ともいわれる。セブン−イレブンの2兆7625億円(20年度)には及ばないものの、地方の商店街に「シャッター通り」が増える一方で直売所が成長する現状は何を意味するのか。

 ■中核は中小農家

 日本総研の大澤信一主任研究員(53)は「消費者から強い支持を得ている。収穫から数時間と新鮮なうえ、中間流通経費が大幅に削減され、安い輸入農産物との競争にも打ち勝っている」。大澤さんによると、年商3億円超の直売所の多くは商圏が半径30〜50キロに及び、売り上げの6〜7割は週末に車で来店してまとめ買いする近隣都市の消費者だという。

 国はこれまで、一貫して農業の大規模化を推し進めてきた。19年からは原則として、耕地面積4ヘクタール以上の大規模農家や、20ヘクタール以上の耕地をまとめた集落営農にしか補助金を出さなくなった。小規模農家は統計さえほとんど取らなくなった。直売所はこうした農政の中でいわば置き去りにされた中小農家が中心になって始めた取り組みだった。

 大澤さんは「直売所は生産、流通、販売、マーケティングが一体化しており工夫次第で客がくる。こうした工夫こそが従来の生産の大規模化一辺倒の農業になかったものだ。直売所には農業をビジネスへ改革するために学ぶべきヒントが詰まっている」と指摘する。

 ■学校給食も担う

 出荷者の高齢化など課題も抱える直売所だが、今後は学校給食で地元の農産物を使う際の拠点としての役割も期待されている。国は現在41%の食料自給率を27年に45%まで戻す方策の一つとして、学校給食で地元農産物を使う割合を19年の23%から22年度までに30%以上へ引き上げる目標を掲げている。秋田の陽気な母さんの店でも現在、地元の小中高8校に3500食分の食材を卸す。昨年の中国製ギョーザ中毒事件を機に急増したという。

 石垣さんら会員は交代で店先に立ち、農産物などの販売収入のほかに日当を受け取る。20年度は1日3300円。石垣さんは「直売所をやってよかったのは会員に給料を払えること。農業に後継者がいないのは所得が伸びないからだった。今後は給料を払えるような農業経営をしていかなければという思いで、直売活動を進めている」と話す。

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農業には頑張ってもらわなければいけないだろうと思うので、こういう記事は心強いです。