日本軽視の流れ アジア政治情勢危機の始まりか

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090920-00000549-san-int

 ■ジョン・タシック元米国務省中国分析部長

 日本の鳩山政権の誕生とその対外姿勢は単に日米関係への影響を超えて、アジア全体の政治情勢の危機の始まりを示唆していると思う。簡単にいえば、鳩山政権の対外姿勢は、中国がアジアで米国を抑えて影響力を拡大し、日本をも服従させていくという動きを期せずして加速するだろう。背景にはオバマ政権がアジアで中国を重視しすぎるという傾向も作用している。

 中国は米国に対し、アジアのパートナーとして日本ではなく中国を選ぶことをさまざまな形で迫っている。ブッシュ前政権時代からそうだった台湾に関しても前政権は中国から圧力をかけられる形でそのきずなを弱めていったオバマ政権になっても、この中国傾斜は続いている。日本軽視の流れがその裏にある。

 ブッシュ前政権は小泉元首相にこそ丁重に対したが、その後任の安倍、福田、麻生各首相をきわめて軽く扱ったオバマ政権が最新鋭戦闘機のF22を日本には売らないと決めたことも、あるいは麻生前首相の訪米の際に本格的な首脳会談をしなかったことも、その例証だといえる。背景には一貫して、中国への接近という要因がある。

 米国側のこうした傾向は、日本国民の多くに「米国は同盟相手として頼りにならない」という潜在意識を生んだのではないか。結果、日本国民の多くは、自民党の日米同盟堅持という基本政策にあまり魅せられず、日米同盟や米国自体にあれこれと文句や留保をつける民主党の姿勢を許容していったのではないか

 しかし現実には中国は軍事力を増強し、日本との領土紛争、資源争奪、経済競争で自国の主張を強めるため、軍事力を陰に陽に利用しようとしている。日本はこれに対し、日米同盟を通じて米国の軍事パワーを抑止力として取り組むという対抗策を長年、保持してきたわけだが、その基本が今やほころび始めたわけだ。

 日本が米国なしに、中国の威嚇や圧力をはね返す抑止力を持つことは現状では望めない。そうなると、残された展望は日本が中国の意思のままに従い、アジアで中国の覇権が確立されていく、という構図だろう

 従来の米国の政権であれば、こうした危険なシナリオへの道は必死で阻止したが、オバマ政権では放置する可能性が十分にある。だから今回の総選挙の結果と鳩山政権の登場は、そのようなアジア情勢の根本的な変化の始まりを象徴しているように思える。(談)

 ■ジョン・タシック氏 米ジョージタウン大卒。1971年から国務省の外交官となり、中国、台湾、香港に通算約15年間駐在。92年に国務省情報調査局中国分析部長。2001年にヘリテージ財団に入り、中国分析専門の研究員となる。現在は独立してアジア外交の分析や評論にあたる。

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しかしアメリカが日本を重視しないから、日米同盟堅持という政策にそっぽを向くというのはあるんでしょうか。民主党に票を入れた人に聞くしかありませんが。