北朝鮮砲撃の各国の反応(続き5)。

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今までは書いてきませんでしたが、犠牲者が出た韓国自身の声などを追ってみたいと思います。朝鮮日報3つ記事を採り上げます。
北朝鮮砲撃:韓国軍の対応能力に疑問の声(上)

http://www.chosunonline.com/news/20101125000038
記事入力 : 2010/11/25 11:32:16

北朝鮮砲撃

 朝鮮人民軍が23日に延坪島に対して砲撃を行った際、韓国軍は北朝鮮の海岸砲に直接狙いを定めて正確に反撃できなかったことが判明し、軍の対応能力が問題視されている。これまで韓国軍は、北朝鮮の海岸砲が北方限界線(NLL)を越えて飛来してきた場合、「砲撃が行われた位置に狙いを定めて敵を攻撃する」などと公言してきた。しかし実際は、これが不可能だったことが明らかになったのだ。要するに、空軍の戦闘機以外で、地上から北朝鮮の海岸砲を正確に攻撃できる兵器を、韓国軍は保有していないというわけだ。

 韓国軍が北朝鮮の海岸砲や放射砲(122ミリメートル)による攻撃に対して使用したのは、K9自走砲だけだった。K9は外部に露出している放射砲陣地を破壊する際には威力を発揮するが、海岸の絶壁などに穴を掘って設置された北朝鮮の海岸砲を破壊することはできなかった。一般的に海岸砲は、普段は砲門が閉じられた陣地の内部にあるが、攻撃を行う際にはこれらが開かれるようになっている。この海岸砲を破壊するには、砲門の位置を正確に把握して攻撃しなければならないため、砲弾が直線ではなく、放物線を描いて落下する曲射砲では、正確に命中させるのは困難だ。K9は砲弾が直線軌道で飛ぶ直射砲ではなく、放物線を描いて飛ぶ曲射砲だ。

 合同参謀本部によると、韓国軍のK9自走砲朝鮮人民軍の海岸砲の砲口を狙ったのではなく、敵部隊の幕舎などに向けて反撃を行ったとのことだ。つまり、こちら側は敵の海岸砲を破壊することができない一方で、敵は引き続きこちらを攻撃することができたというわけだ。

 韓国軍当局は北朝鮮からの挑発に備え、延坪島やペンニョン島にさまざまな兵器を配備しているが、延坪島にはK9自走砲以外、反撃可能な兵器が不十分だったということになる。延坪島にはK9が6門と、105ミリ曲射砲(射程距離18キロ)や海岸砲などが配備されているが、これらはK9よりも正確度が低いか、射程距離が短く、北朝鮮の陣地まで届かないため、今回は使用されなかった

写真=国会写真記者団

朝鮮日報朝鮮日報日本語版

北朝鮮砲撃:韓国軍の対応能力に疑問の声(下)

http://www.chosunonline.com/news/20101125000039
記事入力 : 2010/11/25 11:32:42

北朝鮮砲撃

 韓国軍の海岸砲は旧型の戦車砲(90ミリ)を改造したもので、有効射程距離はわずか2-3キロに過ぎない。一方、ペンニョン島には105ミリ曲射砲よりも射程距離が長く、攻撃能力にも優れた155ミリ曲射砲が配備されているが、これも敵の海岸砲陣地を正確に攻撃する能力はない。西海(黄海)5島のうち、ある秘密基地には、地上から敵艦を攻撃できる「ハープーン」地対艦ミサイルが配備されているが、ミサイルを使用すると戦線が拡大する恐れがある上、本来の目的も艦隊攻撃用のため、海岸砲攻撃に使用するにはかなりの制限があるという。

 そのため、有事の際に戦線の拡大も辞さないのであれば、空軍の戦闘機で敵陣を正確に攻撃するか、敵の海岸砲攻撃用ハイテクミサイルを導入する必要がある。この日開催された国会国防委員会では、一部の議員から、「23日に緊急出動したF15KとKF16が海岸砲陣地を攻撃すべきだった」という指摘が上がったハンナラ党所属で元国防委員長でもある金鶴松(キム・ハクソン)議員は、「朝鮮人民軍が2回目の砲撃を行った際、こちらはF15Kで反撃すべきだったのに、なぜこれをしなかったのか」と、金泰栄(キム・テヨン)国防長官を問い詰めた。また同じくハンナラ党のチョン・ミギョン議員も、「空軍を動員して敵陣を完全に破壊していれば、2回目の攻撃を受けることはなかったはずだ」と指摘した。さらに民主党の徐鐘杓(ソ・ジョンピョ)議員も、「北朝鮮が2回目の攻撃を加えてきた際、航空機で反撃すべきだった」と同じような主張を展開した。

 F15Kに搭載されているSLAM-ERミサイルは、最大で278キロ先にある建物の窓から内部に入り込むことができるほど、非常に正確な攻撃が可能だ。KF16は24キロ先の目標物をピンポイントで攻撃できる統合直接攻撃弾(JDAM)を搭載しており、海岸砲陣地を正確に攻撃することができる

 しかし戦闘機から空襲を行う場合、戦闘が拡大する危険性があるため、「そのようなリスクを避けるためにも、北朝鮮の海岸砲を制圧できる新型兵器を導入すべき」という意見も出ている。例えば、イスラエルのラファエル社が開発した「スパイクNLOS」ミサイルは、20キロ以上離れた目標物に狙いを定めた攻撃が可能だという。また、韓国軍も保有している多連装ロケットシステムに誘導装置を取り付け、ミサイルのように正確度を高めたGMLRSも、北朝鮮の海岸砲を攻撃するのに効果的だといわれている。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

朝鮮日報朝鮮日報日本語版

次の記事は時間的には上の二つより前になってしまい重複する点もあるのですが
北朝鮮砲撃:「2倍返し」できなかった韓国軍

http://www.chosunonline.com/news/20101125000027
記事入力 : 2010/11/25 10:04:45

北朝鮮の海岸砲に「対等な」応射できず

 韓国軍当局は23日、北朝鮮延坪島砲撃で応射をする際、海岸砲を直接狙うことはできず、海岸砲部隊の建物などを狙い砲撃していたことが分かった。

 合同参謀作戦本部関係者は24日、記者会見で「韓国軍がK9自走砲で応射をした際は、北朝鮮軍の海岸砲を標的にしたのではなく、海岸砲部隊の建物を標的にした」と語った。この関係者は「北朝鮮の海岸砲は通常、横穴を堀り、そこから射撃しているので、曲射砲である)K9自走砲では海岸砲を直接攻撃しにくい。このため、海岸砲の陣地を無能力化するのではなく、建物や周辺にあるほかの施設を無能力化し、海岸砲を使用できないようにする策を講じている」と述べた。よって、北朝鮮の海岸砲はこの日、2度にわたり1時間近く射撃を続けられたものと考えられる。このため、一部では「この日、緊急出撃したF15K、KF16戦闘機が北朝鮮の海岸砲陣地を狙い、爆撃するべきだった」という声も上がっている。

 金泰栄(キム・テヨン)国防長官は同日の国会国防委員会で「北朝鮮の2回目の砲撃は明らかな戦争行為で、発射地点に対しF15機で爆撃すべきだった」という金鶴松(キム・ハクソン)議員=ハンナラ党=の質疑に対し、「現在の交戦規定には、敵が射撃してきた時、対等な武器体系により2倍で(対応)することになっている。今後は交戦規定を修正・補完し、強く対抗できるようにする」と答えた。

 しかし、北朝鮮が23日に2度にわたり計約170発を射撃したのに対し、韓国軍の応射は80発ほどで「対等な武器体系により2倍で対応することになっている」という交戦規定に達しない消極的な対応をしたではないか、との批判も出ている。李明博(イ・ミョンバク)大統領は同日、これに関連し、「昨日のような局地的な挑発状況が起きた場合、より積極的な対応が可能な方向に交戦規定を修正する必要があるかどうか検討をするように」と指示した。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

権大烈(クォン・デヨル)記者

朝鮮日報朝鮮日報日本語版

倍返しが基本な訳ですね。軍事アレルギーをすぐ起こしてしまう日本の一部メディア(全部?)に比べて、好戦的ともいえる内容だと思います。日本の新聞だと産経新聞が韓国の聯合ニュースを元に
北朝鮮砲撃】空中戦の一歩手前

http://sankei.jp.msn.com/world/korea/101125/kor1011250031000-n1.htm
 韓国の聯合ニュースは24日、北朝鮮が韓国の延坪島を23日に砲撃した際、南北の間で空中戦が発生しかねない一触即発の状況だったと報じた。

 韓国軍当局などによると、北朝鮮が砲撃を始めた直後に、韓国空軍は現場上空に向け戦闘機F15とF16それぞれ4機を相次いで緊急出撃させた

 うち2機は射程250キロの空対地ミサイルを装着し、北朝鮮のさらなる挑発に備え北朝鮮側のミサイル基地への攻撃の準備をしていたという。

 周辺空域では北朝鮮も砲撃前にミグ23戦闘機5機を哨戒飛行させていたといい、同ニュースは両軍の戦闘機が空中戦を交える可能性があったと伝えた。

 一方、韓国の金泰栄国防相は24日、同国が北朝鮮の砲撃に応戦した際、韓国軍の自走砲6門のうち、2門が故障していたことを明らかにした。(共同)

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と危機をつたえたり、もう一つ
北朝鮮砲撃】コンクリートを貫通する特殊爆弾を使用か 韓国軍、不発弾回収して分析

http://sankei.jp.msn.com/world/korea/101125/kor1011251313012-n1.htm


北朝鮮の砲撃で被害を受けた韓国・延坪島のコンクリート壁=24日午前(地元行政機関提供・共同)

 韓国の聯合ニュースは25日、北朝鮮が韓国・延坪島を砲撃した際、コンクリートを貫通する威力がある特殊爆弾を使用したと報じた。韓国軍消息筋の話として伝えた。

 同ニュースによると、北朝鮮が発射した砲弾のうち、不発弾20発余りを韓国軍が回収して分析した結果、爆発時に高熱と高圧で人を殺傷し、コンクリート施設を破壊する威力を持つ特殊爆弾の一種であることが判明した。

 消息筋は「砲弾は(熱風と衝撃波を伴う)サーモバリック爆弾に類似している」とした上で「北朝鮮は多くの人を殺傷し火災を発生させて混乱を引き起こそうとした」と述べた。(共同)

とは北朝鮮の非道さを伝えたりしていますが、まぁ所詮他人の国のことだからでしょうか、もっとやるべきだったとは言いませんね。

ただ、読売新聞はそんな感じの事を伝えていますね。
韓国、北武力挑発に積極交戦…規則見直し決定へ

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101125-OYT1T00491.htm
北朝鮮

 【ソウル=仲川高志】韓国の李明博(イミョンバク)大統領は25日、青瓦台(韓国大統領府)で、緊急の安全保障経済点検会議を開いた。北朝鮮の近接海域で、砲撃を受けた延坪島など5島の戦力配置を増強することなどを決めた。

 青瓦台の洪相杓(ホンサンピョ)広報首席秘書官によると、会議ではこのほか
〈1〉北朝鮮の武力挑発に積極的に対応できるよう、韓国軍の交戦規則の見直し
〈2〉民間団体による対北朝鮮支援の許可の是非を検討
〈3〉対中外交の強化
――などの方針を決めた。開城(ケソン)工業団地を除く南北交易・交流の中断措置を維持することも確認した。会議には外交、安保、経済関連の閣僚らが出席した。
(2010年11月25日13時21分 読売新聞)

しかしこれも抽象的で、朝鮮日報と同じようなことを伝えようとしてるんだろうと想像はつくんですが、危機感の伝わり方は違う印象です。

毎日新聞は米中を責めています。中国を責める各国の声は今までのエントリで伝えてきましたが、とりあえず記事の内容
社説:北朝鮮砲撃事件 米中の責任は重大だ

http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20101125k0000m070151000c.html?inb=ra
 何をするかわからない个ア个ア。韓国に対する北朝鮮の砲撃は、この国の度し難い脅威を改めて浮き彫りにした。今後、3度目の核実験を行う可能性もあるし、ミサイル発射などで日本を威嚇することも想定外ではない。浮足立つことなく、日本の安全を真剣に問い直したい。

 まずは米国と危機感を共有することが大切だ。欧米の主な関心事はイランであり、イランの核開発に対して国連安保理は何度も制裁決議を採択した。しかし、北朝鮮の核をめぐる6カ国協議は、米国のブッシュ政権末期の08年12月に宙に浮き、再開のめどは立っていない

 他方、北朝鮮は09年5月に再核実験を行い、今年3月の韓国哨戒艦沈没事件では、多国籍調査団が北朝鮮魚雷の爆発が原因と判定した。しかし、46人が犠牲になった大事件にもかかわらず、中国が安保理での北朝鮮非難決議の採択に反対し、弱い文言の議長声明にとどまった

 北朝鮮に甘い態度では禍根を残す。中国に対して私たちはそう忠告してきた。いかに中国の友好国でも北朝鮮の脅威を看過すれば、国際社会を危険にさらすことになる。今回の砲撃事件でも中国は慎重な姿勢だが、安保理常任理事国として、6カ国協議議長国として、北朝鮮に厳しい態度で臨むべきである。

 米国にも注文したい。日本は韓国同様、北朝鮮の脅威にさらされているが、米国が同盟国・日本をどう守るつもりか、必ずしも明確ではないブッシュ政権大量破壊兵器という幻を追ってイラク戦争を行い、オバマ政権はイランへの対応に忙しい。だが、いまだ核疑惑の段階のイランより北朝鮮の方が、はるかに現実的な脅威であるはずだ。

 クリントン政権は00年、「ペリー・プロセス」に沿ってオルブライト国務長官北朝鮮に派遣した。北朝鮮との戦闘は現実的でないとの認識に立つ訪朝だった。しかし、北朝鮮が06年に最初の核実験をしてから、同プロセスをまとめたペリー元国防長官は、北朝鮮に対する限定爆撃に言及するようになった

 次のブッシュ政権北朝鮮を「悪の枢軸」と呼びつつ、後に融和姿勢に転じた。歴代米政権の対応は一貫性を欠いていよう。「軍事力を背景にした外交」が通用しにくい北朝鮮問題は、米国の不得意な分野だろうが、継続的で戦略的な外交努力が望まれる。

 潜在的危機の大きさを思えば、米国は北朝鮮問題にもっと力を入れていい。具体的にどうするかという問いに答えるのは難しいが、日米が強い危機感を共有して中国を動かさなければ、何事も始まるまい。

毎日新聞 2010年11月25日 2時30分

うーん。僕もアメリカはもっと日本周辺で力を発揮して欲しいと思ってきましたが、毎日新聞がいいますか?という感じがします。アメリカに要望するならアメリカからの要望にも当然答える義務があると僕は考えます。

たとえば
思いやり予算「米に言われる筋合いない」 防衛相反発
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20101002/p1
に書いた思いやり予算増額の要望と

20〜30代で多かったのは日米同盟を「強化すべきだ」との意見

という事実。毎日新聞はなかなかチェックしづらいので、見落としてるだけかもしれませんが(というか今リンク先見直したら毎日新聞思いやり予算増額関連の記事もありましたが)、毎日新聞はそういう道を行こうと強く主張してたかなぁという気もするのですが。

それにそもそも中国は日本の同盟国ではありません。日本の固有の領土を自国の領土だと平気で主張してくるような国ですし。ガス田の問題も未解決です。それに対して要望をだすのは虫が良すぎるという言い方は変かもしれませんが、ナイーブ(英語のバカ正直なというようなニュアンスでの)過ぎると言われてもしょうがないんじゃないかなと思います。

うまく話がまとまってる感じがしないでもないですが、北朝鮮、中国に対するには、韓国のようにもっと覚悟を決める必要があるのではないでしょうか。

追記:
北朝鮮制裁で、この記事を取り上げようとしていた事を忘れていました。
「不正資金調達」北朝鮮2社に金融制裁…米
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20101119/p5
アメリカは北朝鮮への制裁について積極的に動いたと言えると思います。それに比べて、続き3の最後で書いた、
・日本: 独自の追加制裁を検討する考えを表明
ですが、まだ形を現して無いように思うのですが、見落としているだけでしょうか。アメリカは原子力空母ジョージ・ワシントンを出してきています。日本の方がやるべきことがあるのではないでしょうか。