軍政、軟化の兆しなし スー・チーさん解放1カ月

http://www.asahi.com/international/update/1213/TKY201012130308.html
2010年12月13日21時31分

 【バンコク=古田大輔】ミャンマービルマ)の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが、軍事政権による自宅軟禁から解放されて1カ月がたった。スー・チーさんは軍政との対話を模索し、シグナルを送っているが、軍政はまったく動きを見せていない

 解放後、スー・チーさんはほぼ連日、最大都市ヤンゴンの自宅から自身が率いる国民民主連盟(NLD)本部に行き、活動に関して幹部らと会合。自宅で各国の外交官と会ったり、メディアの取材を受けたりと精力的に日程をこなしている。

 人々の前での演説は解放翌日の11月14日に行っただけだが、ミャンマーでも受信できる米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)のビルマ語放送に週1回出演して聴取者の質問に答え、国民とのつながりを保とうとしている。直接的な軍政批判は口にしないが、「(軍政が示す民主化プロセスには)満足できないところもあります」「大切なのはみんなが協力することです」などと語りかけている

 スー・チーさんは解放直後から何度も「軍政側と話し合いたい」と対話の用意があることを示唆してきた。また、軍政が神経をとがらせる地方遊説は当面しない考えを示し、さらに、欧米諸国が科す経済制裁について「人々を苦しめているのであれば、再検討しなければならない」と述べるなど、軍政に対する柔軟姿勢を強調している。

 だが、軍政に応じる気配はない

 軍政は、11月7日に実施した20年ぶりの総選挙の結果に基づいて来年2月に議会を招集する。選挙管理委員会の最終結果発表はまだないが、各党集計によると、軍政翼賛政党連邦団結発展党(USDP)が上下院とも選挙議席の約8割を獲得。最初から軍人に割り当てられている議席を合計すると全国会議員の約85%が軍政系という盤石の体制づくりに成功した。

 選挙を巡っては、投票強制など数々の不正疑惑が報告され、欧米諸国は批判している。しかし、中国や東南アジア諸国連合ASEAN)など近隣諸国は選挙結果を認めたヤンゴンの外交筋は「選挙を乗り切ったと考える軍政側にしてみれば、譲歩する理由がない」と話す。

 スー・チーさん側のカードと見られてきた経済制裁緩和への協力に関しても、「軍政側はスー・チーさんの協力を必要としていない」(外交筋)。中国などとの経済関係が抜け道になっているうえ、スー・チーさんの「協力」なしでも制裁見直しは始まっているのが実情だという。

    ◇

 〈ミャンマー情勢に詳しいNGO「ビルマ情報ネットワーク」の秋元由紀ディレクターの話〉  アウン・サン・スー・チーさんの解放は、軍政の柔軟化や民主化を意味しない。軍政は、今回の総選挙への国民の不満や国際社会の批判をスー・チーさんの解放によってかわそうとしている。解放に目を奪われて茶番選挙のことを忘れては、軍政の思うつぼだ。残念ながら、短期的には何も変わらないだろう。

 解放時や翌日の演説に集まった人々の様子を見て分かる通り、彼女の人気は今も高い。彼女は国民の精神的な支えであり続け、存在感は大きい

 3年前の反政府デモが示す通り、国民の不満は今も解消されていない。彼女はまず、「国民に耳を傾けたい」と強調した。この作業を通じ、民主化を望む国民や政治団体をまとめようとしている。軍政は彼女の存在感を警戒しており、いつ再び軟禁されるか分からない。国際社会は、彼女の身の安全と行動の自由を制限しないよう軍政に働きかけ、彼女を助ける方向で具体的に行動して欲しい。

 また、約2200人の政治囚人がいまも獄中にあることを忘れてはならない。

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ミャンマー>米が方針転換、スーチーさん、孤立化の恐れも
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20091118/p1
に書いてあった通りアメリカが軍事政権制裁から対話に舵を切ったことでスーチーさんは難しい立場に置かれているようですね。アメリカにしてもそうしないとミャンマーの利権を中国にみんな持っていかれてしまうというような、判断もあるのでしょう。短期的には全くいいほうに行く気がしません。