コラム:入植非難決議にかんするイスラエルの論調 (al-Quds al-Arabi紙)

http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20110222_101622.html
コラム:入植非難決議にかんするイスラエルの論調
2011年02月21日付 al-Quds al-Arabi紙

オバマよ、仮面を外してくれてありがとう
ヘブライ語紙より

2011年02月21日『クドゥス・アラビー』

同日付『ハアレツ』

ノーベル平和賞受賞者オバマ大統領は、和平努力に対する破壊活動の停止をイスラエルに呼びかける決議に拒否権を行使した。それは、超大国の国内政策が外交政策に勝利したことを意味する。入植地での建設を非難することは「ピースプロセス」に抵触するという彼のみすぼらしい言い訳は、ご都合主義が倫理に勝ることを意味する。エジプトのタハリール広場でのデモが最高潮だったほんの二週間前、クリントン国務長官は、「全ての人間が自由の下で暮らすという普遍的な権利」を合衆国が支持すると明言したはずだが。「愛国派」のオルメルトイスラエル首相でさえ、そ著書の中で、入植が市民の権利や生活の質、パレスチナ運動の自由を侵害していると主張している。

しかし、もしスーザン・ライス米国連大使が、他の安全保障理事会メンバーらと共に入植政策非難決議に賛成票を投じたとしても、どうなるものでもないネタニヤフ首相・リーベルマン外相・バラク防相らで構成されるイスラエル政府が、入植を凍結するであろうか?ジョージ・ミッチェル[中東和平担当]米国特使はその答えをよく知っている。10年前、同特使率いる国際委員会は、強圧的な入植政策は、その地域の住民を虐げ彼らの生活をかき乱すと断じた。ミッチェル特使と委員会メンバーは、入植を将来の交渉の切り札とするのか、あるいは、交渉開始を妨げる挑発とするのか決めるよう、イスラエル政府に呼び掛けた。ミッチェル委員会は、「自然な拡張」とされるものを含む入植地拡大の凍結をアドバイスし、政府はミッチェルレポートを採用した。その時以降、入植者人口は5万以上になった

入植完全凍結ならびに2001年3月以降の入植拠点解体というミッチェル委員会の提案は、2003年4月カルテット[米国、ロシア、EU、国連]がイスラエルパレスチナ両政府に提示したロードマップの第一段階に該当する(当時のシャロン政権はこの条項をロードマップ案の14の留保案件には含めなかった)。その数ヶ月後、安保理は全会一致で(安保理決議1515採択により)ブッシュ大統領決議案を支持した。ブッシュ大統領の決断とはイスラエルパレスチナにロードマップ案の履行を求めるものであった。それ以降何がおきたか?入植地も入植拠点も成長を続けているのが現実だ。2009年6月、ネタニヤフ首相がクネセットで、イスラエル政府は無認可の入植拠点解体計画を前進させる意図があると報告したことも、ここで言及しておこう。

アメリカの主張に反し、安保理の最新の非難は和平前進の機会を縮小するものではなかった。そしてアメリカ人が行使してきた拒否権は、ネタニヤフに、本質的な問題についての立場を明らかにする機会を与えない。1967年以来国際社会、特にアメリカは、パレスチナ人にリップサービスしかしてこなかった。近年では資金援助もするようになったが、このようなことから彼らのための国ができることはないだろう。もしタハリール広場で勇敢に警官隊に立ち向かったエジプト人たちがいなかったら、エジプトの人権状況に関する重要な国務省の報告書をみていながら、アメリカは言葉遊びを続けていただろう

ムバラクの時代が終わりを迎えたと理解したとき、「中東には機会を求める若者の世代がいる。指導者たちは、民衆の要求に対し後れを取るべきではない」とオバマ大統領は述べた。それならばきっと、彼は、ナーブルスや東エルサレムの若い世代のことも念頭にあるに違いない。43年以上、占領から解放され、自由と尊厳を得る機会を求めている人々である。

アッバース大統領は、オバマダブルスタンダードを批判する代わりに、スーツを脱いでこぎれいな彼のオフィスから出て、ラーマッラーのアル=マナーラ広場で抗議テントの設置を人々に呼びかけるべきだ。国連がパレスチナ国家を承認するという幻想にひたるのではなく、ネタニヤフ首相が恒久的な国境線を示す地図の提示を拒否した場合には、パレスチナ政府は支援国にその門戸を閉ざしイスラエル軍事政権に鍵を渡すと宣言すべきだ。このとき、おそらくイスラエルの左派は、「世界」のダブルスタンダードを嘆くのをやめ、外国の政治家が我々を救うためにその地位を危険にさらしてくれるという幻想から目を覚ますだろう。ありがとう、オバマよ。君は仮面をとって我々に素顔をみせてくれた。我々も鏡をみるべき時だろう。

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(翻訳者:松尾 愛)
(記事ID:21594)

イスラエル労働党が分裂、和平交渉に暗雲
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20110118/p2
で、パレスチナの状況はさらに悪くなったみたいですね。

パレスチナでもデモが行われたことは
中東・北アフリカに広がる混乱、国別の状況は今(+αでまとめ)
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20110216/p3
でも触れました。

追記:
一週間くらい前の記事ですが、とりあげようと思って忘れてました。
パレスチナで若者のデモ 派閥間の結束訴え

http://www.cnn.co.jp/world/30001851.html
ヨルダン川西岸・ラマラ(CNN) エジプトとチュニジアの革命やアラブ全域に広がる民衆デモに刺激を受け、パレスチナの若者たちも声を上げ始めた。パレスチナ自治区ラマラで17日、数百人が広場に集まり、対立する政治派閥間の結束を訴えた

インターネットのソーシャルネットワーク・サイトや学校、大学などでの呼びかけに応じ、集会には「対立は腐敗を生む」などのスローガンを掲げた大勢の若者が集まった。参加した16歳の学生は、家に閉じ込められて何も言えない生活はもうこりごりだ、自分たちの権利のために戦う、と話した。

パレスチナでは、自治政府アッバス議長率いるファタハ勢力と、ガザ地区を支配するハマスとの間で政治的な対立が続いている。アッバス議長は12日、9月に選挙を実施すると発表した。これに対しハマスは、アッバス議長は09年に既に任期が切れており権限を持たないとして、選挙のボイコットを表明。アッバス議長は17日、ガザ、エルサレム、西岸地区のすべてのパレスチナ人が投票できる状況でなければ選挙は実施できないと述べた。

パレスチナでは他のアラブ地域にみられるような大規模な抗議活動は起きていない。自分たちの問題はイスラエルによる占領であると多くのパレスチナ人が考えているためだ。

パレスチナの議員で、議長選に立候補した経験のあるムスタファ・バルグーティ氏はCNNに対し、「パレスチナには)真の政府がない。すべての政府は占領下にある」「我々には真の政府、真の自由が必要だ。それは占領が終わるまで実現しないが、我々が団結して民主主義を推進しない限り、占領を終わらせることはできない」と語った

これを読んだアメリカ人はどう思うんでしょうね。両方の記事をアメリカ人に読んでもらいたいです。