エジプト 憲法修正きょう国民投票 人権侵害、消えぬ懸念

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070326-00000010-san-int


 【カイロ=村上大介】宗教に基づく政党禁止や「反テロ条項」を盛り込んだエジプトの憲法修正案に対する国民投票が26日、実施される。政権側は「民主主義拡大の重要なステップ」と強調するが、イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」を中心に野党勢力は反発を強め、米国や国際人権団体からも民主化後退や人権侵害を招くと懸念する声が出ている。

 憲法修正は、ムバラク大統領が昨年12月末の演説で発表し、1月に人民議会(定数454)と諮問評議会(定数264)が修正案の討議を開始。与党・国民民主党(NDP)が議席の約4分の3を占める議会での論議は、政権側のペースで進められた。

 修正項目の中で野党側の反発や人権団体の批判を呼んでいるのは、
(1)人民議会で3%以上の議席を持つ政党に所属しなければ、大統領選に立候補できない
(2)1981年のサダト前大統領暗殺以来続いている「非常事態宣言」に代わり「反テロ条項」を盛り込み、治安当局に令状なしにテロ容疑者拘束や家宅捜索、盗聴を認める
(3)宗教に基づく政党を認めない−などの点だ。

 穏健原理主義組織とされるムスリム同胞団は、エジプトでは非合法ながら活動を黙認されてきた。だが、事実上の長期独裁を続けるムバラク政権に対する国民の不満を吸収し、一昨年秋の総選挙で同胞団系の無所属候補が88議席を獲得。政権側は脅威を感じている

 また、政権側の超法規的権限の根拠となってきた非常事態宣言は欧米から批判されており、国際的な“時流”に乗った「反テロ条項」の明文化で治安機関は合法的に強大な力を手にする。

 健康不安説がつきまとうムバラク大統領は二男のガマル氏への権力禅譲を狙っているとの見方が国民の間で広がっており、憲法修正は「親米穏健派のエジプトにイスラム政権樹立」という米欧の“悪夢”を逆手に取りながら、国内的には同胞団を封じ込め、政権基盤強化を狙ったものとみられている。野党勢力は投票ボイコットを呼びかけているが、“圧倒的賛成”で修正案は承認される見通しだ。

 ただ、ムバラク大統領がガマル氏への政権禅譲に成功しても、軍人だった大統領とは異なり、ビジネス畑出身のガマル氏が軍や秘密警察など強大な治安組織を掌握できるのかといった疑問もあり、現体制の将来は必ずしも安泰ではないとの見方も根強い。

エジプトも大変なんですね。対テロ戦争以来民主主義が後退してる国は結構ありますよね。