死刑囚最後の晩さんは、ホームレスに贈ったピザ 米国

http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200705110010.html

2007.05.11
Web posted at: 19:14 JST

  • CNN

(CNN) 2007年5月9日午前2時。米テネシー州ナッシュビルの刑務所で、1人の死刑囚が薬物注射により処刑された。この男性死刑囚は刑執行前、最後の晩さんとして「野菜ピザをホームレスの人々に贈りたい」と希望。しかし、刑務所側は「最後の食事を他人に寄付することはできない」とこれを拒絶した。この経緯を報道などで知った多くの人々が、刑執行のニュースを聞き、死刑囚の名前でピザ店に注文、ホームレス収容施設へ配達を頼んだ。
フィリップ・ワークマン死刑囚(53)はコカイン中毒だった1981年、薬物購入資金を奪うため、ハンバーガー・チェーン店ウェンディーズに押し入った。この強盗事件で、メンフィスの警官1人を射殺。強盗殺人の罪で死刑判決を受けた

強盗殺人事件を起こした当時、ワークマン死刑囚はホームレスだった。そういった経緯もあってか、最後の食事をホームレスに贈るということを考えたとみられる

しかし、この願いを刑務所側が「寄付はできない」として拒絶。「最後の晩さん」がホームレスに届くことはないかのように思えた。

ところが、この話を聞いた人々が、ワークマン死刑囚の名前で多くのピザを注文。ナッシュビルのホームレス支援施設では9日夜、800人以上が届けられたピザを手にしていた

ダナ・スパングラーさんも、ピザを注文した1人だ。ワークマン死刑囚の願いを聞いて、すぐに友人たちに声をかけ、1200ドルで150枚のピザを注文。ナッシュビルのホームレス支援施設に届けさせた。

クレジットカードで支払いを済ませたスパングラーさんは、「夫がこの金額を見てびっくくりするだろう。でも、支払いはなんとかなると思った。何か、出来ることをしたいと思った」と話している。

スパングラーさんのほかにも、大勢がワークマン死刑囚の名前でピザを注文していた。動物保護団体PETAのイングリッド・ニューカーク会長も9日朝、15枚の野菜ピザを注文して、配達先をナッシュビルのホームレス支援施設と指定した。

ナッシュビルのホームレス支援施設では、あまりにも大量のピザが到着したことに驚いている。施設の職員は、翌朝にも他の施設に連絡し、ピザを分け合いたいと話している。

ホームレス支援施設のほか、ナッシュビルの少年支援施設にも、同日夜にワークマン死刑囚の名前で注文されたピザ17枚が到着。約260人の若者が暮らすこの施設では、職員がピザの経緯を説明し、ワークマン死刑囚がホームレスの問題を知らせるために取った行動だと語ったという。

遠く離れたミネソタ州ミネアポリスからも、ピザの注文があった。ミネアポリスの地元ラジオ局が、死刑執行日の朝からワークマン死刑囚に関する番組を放送。このラジオ局が、ナッシュビルのホームレス支援施設へ向けたピザを注文した最初の客だったと見られる。

ラジオ局のディレクターは、今回の件で、ピザ以上のことがあったと話す。「死刑執行が、すばらしい行動につながった物語だ。多くの人々が、知らない人に寄付するという行動を起こしたのだから」としている。

犯してしまった罪は消えませんが、単純にいい話だと思います。