内戦再燃、市街地から人影消える レバノン

http://www.asahi.com/international/update/0510/TKY200805090304.html

 【ベイルート=川上泰徳、カイロ=平田篤央】15年にわたる内戦が90年に終わったレバノンが、再び危機に直面している。親シリアのイスラムシーア派野党ヒズボラと反シリアの与党連合の支持者の衝突は本格的な市街戦に発展、死者は10人を超えた。首都の路上から人影が消え、国際空港は閉鎖された。


ベイルートで9日、与党側支持者を拘束するヒズボラ民兵=ロイター

 8日夕の戦闘開始から一夜明けた9日も、自動小銃の連射音や対戦車ロケット弾の爆発音が市中心部ハムラ通りでも響いた。すべての商店がシャッターを閉め、歩く人はいない。レバノン国軍の装甲車が巡回。わきの通りでカラシニコフ銃を持った野党系の民兵が道路を封鎖している様子が見えた。

 市民の間には、15万人の犠牲者を出したとされる内戦の再燃への恐れが広がっている。スーパーは食料を買いだめする住民で混雑し、パンは昼前に売り切れた。

 ヒズボラは9日午後に首都の大半を制圧した模様だ。与党連合を率いる故ハリリ首相の息子サード・ハリリ氏のテレビ局や新聞社を占拠。ハムラ通りから1キロ南のクレイトン地区にあるハリリ氏の自宅を包囲している。

 戦闘の背景には、与野党の根深い相互不信がある。

 05年に反シリアのハリリ元首相が暗殺され、シリアの関与が疑われた。ヒズボラなど野党は、反シリア政権の打倒を目指し昨年1月に数千人規模のデモを行い、その後も小規模な武力衝突や与党政治家の暗殺が散発的に続いた。与野党の対立で、昨年11月から大統領不在が続いている。

 国連のラーセン中東特使は8日、「内戦終結以降、見られなかった規模だ」と危機感を表明、「地域全体に深刻な悪影響をもたらしかねない」と警告した。レバノン国内の対立には米国対イラン、シリアの代理戦争の側面もあるからだ。

 米国のカリルザード国連大使は「レバノンは再びがけっぷちだ」と述べ、「国家内国家をつくっている」ヒズボラと、支援するシリアとイランを非難した。06年夏にヒズボラと約1カ月にわたる戦闘を繰り広げたイスラエルのペレス大統領は「中東全体を握ろうとするイランがあおっている」と主張した。

 これに対しイラン外務省報道官は米国とイスラエルを「混乱の主因」と名指しした。シリアのアサド大統領は「純粋に内政問題」だと述べ、レバノンに介入しているとの批判に反論した。

 エジプトとサウジアラビアは緊急のアラブ外相会議を一両日中にカイロで開く方向で調整に入った。ただ、アラブ諸国の間でも親米の両国とシリアの溝は深く、問題解決につながるかは不透明だ。サウジ、アラブ首長国連邦クウェートなど親米国はレバノンから自国民の避難を始めた。

読売新聞にも記事あります。
レバノンで内戦懸念高まる、ヒズボラら激戦で11人死亡
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080509-00000034-yom-int

 【カイロ=宮明敬】レバノンの首都ベイルートで、シリアやイランの支援を受けるイスラムシーア派組織ヒズボラなど野党系武装組織と、親欧米・反シリアでスンニ派主導のシニオラ政権を支持する与党系武装グループの衝突が激化し、9日朝までに少なくとも11人が死亡、30人が負傷した。

 ヒズボラは9日、政権側の中心人物サアド・ハリリ氏が所有するテレビ局や新聞社を占拠・威嚇攻撃し、放送や発刊を停止させたほか、イスラム教徒住民が大半を占める西ベイルートスンニ派拠点を制圧、実効支配下に置くなど、1990年まで15年間続いた内戦の再来を懸念させる情勢となっている。

 西ベイルートでは現在、ヒズボラなど野党側が、占拠した与党側政党事務所などを、中立的立場をとってきた軍に引き渡し始めているが、住民は依然、銃撃戦を警戒して自宅にこもっている。アラブ首長国連邦など自国民にベイルート退去を指示する国も出始めた。

 衝突の発端は、政府が6日、ヒズボラの軍事通信網を違法と断じ、閉鎖に向けて捜査を開始したこと。これに怒ったヒズボラが7日、空港に通じる主要道路を閉鎖する対抗手段に出て、衝突に発展した。8日には、ヒズボラの指導者ナスララ師が、政府の決定は「宣戦布告に等しい」と非難し、銃撃戦が激化した。

 ハリリ氏は「政府の決定が誤解されている」と語り、反政府側との和解を試みたが、ヒズボラ側は拒否した。ヒズボラの強硬な態度には、北朝鮮との核協力を米国に暴露されたシリアの意向が働いている、との指摘もある。

 レバノンは、米国、フランス、サウジアラビアなどが支持するシニオラ政権と、シリア、イランの意向を受けたヒズボラなど野党側の対立で、昨年11月以来、大統領を選出できない事態が続いている。

昨年の11月以降大統領不在と言う事ですが、
2007/12
レバノンベイルート近郊で将軍候補ら4人暗殺
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20071212/1197460846
で、

 レバノンの反シリア派と親シリア派はスレイマン将軍を次期大統領候補とすることで大筋合意した。だが、選出手続きや新内閣の陣容を巡って対立を続けている。

と言う事でずっと対立が続いていたんですね。
『シリア寄りとも言われるスレイマン氏』という事だったので、将軍も軍もシリアよりなのかなという気がしますが(ただ、シリアよりなら、将軍候補ら4人暗殺は誰が何のためにというの疑問もあるんですが。シリアが何らかの警告のために行ったと説明がつけば一番分かりやすいのですが)、上の記事のヒズボラなど野党側が、占拠した与党側政党事務所などを、中立的立場をとってきた軍に引き渡し始めているというのも軍が中立的立場なら、なぜヒズボラは、軍に占拠した施設を渡すのかよく分からないところではあります。

まぁ今後に注目と言う事で。

追記:
昨年1月のデモはちょっと情報紛失してしまったようですが、今年の1月にもデモがあったようで、
レバノン>デモが暴徒化、軍と衝突 8人死亡
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080128-00000012-mai-int

 【カイロ高橋宗男】レバノンの首都ベイルート南部で27日、電力供給制限に抗議するためデモを行っていた親シリア派支持者らが暴徒化し、政府軍と衝突した。ロイター通信によると8人が銃撃を受けて死亡、29人が負傷した。

 政府軍はデモを解散させるため上空に威嚇射撃したと説明しているが、混乱を狙う勢力が周辺の建物から狙撃した可能性も指摘されており、詳細は不明だ。抗議行動はその後、同国南部や東部などのイスラムシーア派地域に拡大した。

 レバノンでは反シリア派と親シリア派の対立で新大統領を選出できず、大統領不在の異常事態が2カ月以上続いている。政府軍はこれまで中立な立場を保ってきたが、今回の事態で親シリア派の間に軍への不信感が高まると国内の混乱に拍車がかかる恐れがある

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と政府軍が中立かシリアよりかというのも、簡単には判別できない状態のようです。