「イラク・イスラム国」指導者、米軍撤退をオバマ氏に要求 +イラク・イスラム国は現実か

イラクイスラム国」指導者、米軍撤退をオバマ氏に要求
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081108-00000029-yom-int

 【カイロ=福島利之】AP通信によると、イラクで国際テロ組織アル・カーイダなどの武装組織が一方的に樹立を宣言した「イラクイスラム国」の指導者アブウマル・バグダーディ容疑者は7日、ウェブサイト上に声明を出し、オバマ次期米大統領に対し、「米軍の撤退」と「テロとの戦いをやめる」よう求めた。

 声明では「米軍の撤退は、米国にも我々にとってもより良いこと」とした上で、「我々の国々の問題に介入してはならない」とけん制した。

CNNでも同様の報道ありますね。

オバマ氏にイラク駐留米軍の撤退要求、アルカイダ系過激派
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200811080007.html

バグダッド――国際テロ組織アルカイダ系のイスラムスンニ派の過激派「イラクイスラム国」は、米大統領選に勝利したオバマ上院議員に対し、イラクからの米軍撤収やテロ戦争の中止を求めた。AP通信によると、過激派組織の動向を追う情報サービス団体SITEが7日、報告した。

イラクイスラム国のアブオマル・バグダディ指導者と名乗る人物は声明で、イスラム教国への干渉を止めれば、米国がこれら諸国と石油などの商取引をすることを妨害しないとこれまでにない譲歩の姿勢も示している。米国発の国際金融危機にも触れ、イスラム諸国で起こした戦争が原因でもあると主張した。

オバマ氏当選を受け、アルカイダ系組織が声明を出したのは初めてとみられる。

イラクイスラム国は2006年10月、外国人を中心とするアルカイダ系組織を核に発足したとみられる。以前に、バグダッドを含む中西部のスンニ派8州を「国土」とし、国家元首となる「首長」も発表したことがある。

また、同じスンニ派の過激派「ムジャヒディン軍」も声明を発表し、オバマ氏に対しイラク駐留米軍の撤退を要求した。応じなければ、「前任者が経験した以上の悪夢に直面することになる」とも警告した。

こちらではアブオマル・バグダディは容疑者ではないようです。

しかし、イラクイスラム

---あるとすれば14のニーナワー(古い名前でニネベ)が中心だと思うのですが--- は本当にあるのでしょうか。

最近その名前をあまり聞いていなかったので、ちょっと過去を振り返って調べてみました。特にその指導者とされる、アブオマル・バグダディ(アブウマル・バグダーディなどとも)を中心に追ってみました(と言っても新聞報道だけなので、実体にはせまれないのですが)。

まず始まりは、
2006/10
イラク武装勢力イスラム国家の「建国」宣言 ウェブで
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20061017k0000m030003000c.html

 イラク聖戦アルカイダ組織などの武装勢力でつくる「イラクイスラム戦士評議会」を名乗る組織は15日、ウェブサイト上で声明を出し、イラク内部でのイスラム国家の「建国」を宣言した。

 同評議会は、イラクでは少数派のイスラムスンニ派シーア派クルド人勢力が進める連邦制論議に反発した動きの可能性がある。ただ、宣言した「国家」は実体をまったく伴っていないとみられる。

 声明は、建国した「国家」に「シャリア(イスラム法)を適用する」と主張。同じサイトに出された報道官のビデオ声明では、指導者としてアブオマル・バグダディ師の名前を挙げスンニ派が多数を占める州などイラク中部を中心とした地域を「領土」と主張している。(カイロ共同)

毎日新聞 2006年10月16日 17時04分

だと思います。

その実体をともなっていないという主張を裏付けるように翌年
2007/07
ビンラディン容疑者との連絡役拘束=「イラクイスラム国家」は架空−米軍
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070718-00000246-jij-int

 【カイロ18日時事】イラクからの報道によると、駐留米軍報道官は18日の記者会見で、今月初めに拘束された「イラクの聖戦アルカイダ組織」の幹部ハリド・マシュハダニ容疑者は、同組織の指導者であるエジプト人アブアイユーブ・マスリ容疑者と、国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディン容疑者やナンバー2のザワヒリ容疑者との連絡役を務めていた人物だと主張した。

 マシュハダニ容疑者は聖戦アルカイダ組織内のイラク人としては、最高位の幹部とみられるという。

 同報道官によると、マシュハダニ容疑者は取り調べで、昨年10月に同組織など国内のイスラムスンニ派武装勢力諸派によって「建国」されたとされる「イラクイスラム国家」は、外国人が率いる聖戦アルカイダ組織がイラクに根を張っているよう偽装するための見せ掛けであると供述。その指導者であるイラク人のバグダディ容疑者も架空の人物だと述べたという。

とありました。

しかし悪いイメージの象徴としてはいろんな報道機関で彼の名前は使われているようです。
2007/09
ムハンマド風刺画作者殺害に10万ドル=イラクアルカイダ系組織
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070915-00000129-jij-int

 【カイロ15日時事】国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力であるイラクイスラム国家」の指導者バグダディ容疑者を名乗る人物の音声声明が15日、イスラム系ウェブサイト上に掲載された。この中で同容疑者は、最近イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を描いたスウェーデンの漫画家を殺害した者に10万ドルの賞金を提供すると語った。ロイター通信などが伝えた。

イラク武装勢力スウェーデンの風刺画家殺害に報奨金 
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20070917k0000m030025000c.html

 イラクイスラムスンニ派武装勢力が樹立を宣言したイラクイスラム国」の指導者アブオマル・バグダディ師を名乗る人物は15日、スウェーデンの新聞にイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を載せた同国の漫画家を殺害した者に10万ドル(約1150万円)の報奨金を与えるとの音声声明をウェブサイトに出した。

 同師は、風刺画を掲載した新聞の編集長を殺害した者にも5万ドルを与えるとした。

 また、イスラム過激派掃討で米軍と協力するスンニ派部族長らを非難。イスラム教で最も神聖な月、ラマダン(断食月)中のテロ攻撃を増やすよう支持者に呼び掛けた。

 風刺画は先月掲載され、各国のイスラム教徒から「ムハンマドを侮辱している」と抗議の声が上がっていた。(カイロ共同)
毎日新聞 2007年9月16日 17時59分

「侮辱にあたらず」ムハンマド風刺画、画家が正当性主張
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070918i211.htm

 【ロンドン=本間圭一イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱する風刺画を描いたとして、イスラム教過激派から懸賞金のかかった殺害の脅迫を受けたスウェーデン人画家、ラルス・ビルクス氏(61)は18日、本紙の電話取材に応じ、「宗教と政治の分離を訴えた作品だ」と述べ、風刺画が侮辱にあたらないとして、脅迫に屈しない姿勢を示した。

 一方で、ビルクス氏は警察当局の指示で滞在場所を頻繁に移動しており、「身辺には最大の注意を払っている」と語り、不安な心理ものぞかせた。

 ビルクス氏は風刺画のテーマについて、「私はイスラム教に反対していない」とした上で、「宗教は個人が私的に実践すべきものだ」と主張。イスラム世界では宗教が政治に関与する傾向が強い点を、今回の風刺画で皮肉を込めて描いた点を明らかにした。

 過激派は関係者から謝罪がなければ、同国の大手企業を攻撃すると警告しているが、ビルクス氏は「表現の自由への冒涜だ」と反論した。また、風刺画を掲載し、同様の脅迫を受けるスウェーデン紙ネリケス・アレハンダ紙編集幹部のウルフ・ヨハンソン氏(49)も本紙に、「掲載は正しい判断だった」と語っており、過激派の反発は必至だ。

 ビルクス氏は、犬の体をしたムハンマドの姿を描き、同紙に先月掲載された。これに対し、イラクに独自に「イラクイスラム国」を樹立しようとする指導者アブウマル・バグダーディ容疑者を名乗る男が今月15日、ウェブサイト上で、風刺漫画家と同紙編集幹部の殺害にそれぞれ10万ドル、5万ドル(1ドル=約115円)の懸賞金をかけると表明した。この後、スウェーデンの警察当局はビルクス氏に対し、「脅迫は非常に深刻」と伝えたという。

(2007年9月18日18時32分 読売新聞)

これは別の事件ですが、
イラクアルカイダ組織、スンニ派指導者暗殺を新たに警告
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200709160010.html

2007.09.16
Web posted at: 15:49 JST

  • CNN/AP

バグダッド──イラク西部アンバル州で親米派イスラムスンニ派指導者アブドルサッタール・アブリシャ氏を殺害したアルカイダスンニ派武装組織「イラクイスラム国」が15日、今後も米国を支持した同派指導者を殺害するとの警告を出した。

ウェブサイトに掲載された声明によると、同組織は「特別治安委員会」を設立し、米国やシーア派主導のマリキ政権に屈服して「名誉を汚した」指導者を追跡、暗殺する方針。暗殺対象者の名前を公表する意向にあるという。

別の声明は、同組織の指導者とされるアブ・オマル・バグダディ氏イスラム教の断食(ラマダン)に合わせ、イラクアルカイダ勢力の創始者で、昨年米軍の空爆で死亡したアブ・ムサブ・ザルカウィ容疑者の追悼攻撃を行うと発表している。

同州のスンニ派有力聖職者アリ・ハテム・スレイマン師はAP通信に対し、アルカイダの脅迫に屈せず、今後もテロ対策に取り組むと明言。ただ、アルカイダの脅迫や、国内で最も保護されていたアブリシャ氏の殺害は、他州のスンニ派指導者のテロ対策に揺さぶりをかける可能性がある。

余談ながらアブドルサッタール・アブリシャ氏は2007/09/13に路肩の自動車に仕掛けられた爆弾で殺害されています。しかし、「アブ・オマル・バグダディと名乗る」という表現が多いですね。しかし架空なら容疑者という肩書きはなんなのかという気がします。まぁ「アブ・オマル・バグダディ(仮)」とかでもおかしいでしょうけど。

話は変わって、イラクイスラム国は、あるとすればどこにあるんでしょうか?
2008/01アルカイダの状況は
アルカイダ組織の「最後の退避地」を空爆イラク駐留米軍』って本当?
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080112/1200111768
に書きました。「最後の退避地」は上の地図上1のバグダッド周辺とのことでしたが、ここではそれに疑問を呈しました。

そして
2008/06
ついこの間まで、イラクのモースルはアル・カーイダ支配下にあった
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080619/1213892937
では、
その前月の5月には

アルカイダ拠点として全国最大かつ最後のモスル一帯

とあったモスルが支配下あったと書かれていたことに驚きました。

その後イラクアルカイダ武装勢力などで、軽く調べたところ、出てきた記事は、
イラクアル・カーイダ幹部“ナンバー2”、米軍が殺害
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081016-00000018-yom-int

 【カイロ=福島利之】イラク駐留米軍は15日、国際テロ組織アル・カーイダ系のイラクにおける武装勢力ナンバー2とされるモロッコ人、アブー・カスワラ幹部を北部モスルで殺害したと発表した。

 同幹部は昨年6月以来、イラク北部の責任者を務め、米軍やイラク軍への攻撃指揮のほか、アラブ諸国イスラム過激派をイラク流入させる役割を担っていたという。モスルでは武装勢力の掃討作戦が続いており、米軍は「カスワラ幹部の死は組織の分裂につながる」としている。

アブー・カスワラについては朝日新聞、読売新聞も同じように報じてますが、手持ちの過去記事あさっても、以前からマークされていたというような記事もありませんでしたし、その後なにか新事実がカスワラに関して出てきたという記事もありませんでした。

ともかく彼が殺されたのはモスルです。また上の地図で14です。やはり、まだモスル周辺の状況は油断ならないという事でしょう。

つづいて年内のイラクでの外国軍駐留について別エントリで書く予定です。