【環球異見】オバマ米大統領のアジア歴訪 中国紙「失敗、これほどの冷遇はない」

http://sankei.jp.msn.com/world/america/101122/amr1011220800004-n1.htm


 オバマ米大統領が10日間に及ぶアジア4カ国(インド、インドネシア、韓国、日本)歴訪を終えた。歴訪中はインドや中国、日本など各国首脳との2国間会談だけでなく、20カ国・地域(G20)首脳会議やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にも出席。中間選挙での敗北を受け、名誉挽回(ばんかい)とばかりに意気込んで臨んだオバマ氏だったが…。

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 ▼ヒンズー(インド)

狙いは中間層の親米化にあり

 オバマ大統領のアジア歴訪を高く評価しているのは、3泊4日とオバマ氏が今回最も長く滞在したインドだ。

 インドを「地域的、世界的な大国」と持ち上げ、さらには国連安全保障理事会常任理事国入りを支持したオバマ大統領に対し、インド紙ヒンドゥスタン・タイムズは9日付社説で、「オバマ氏の訪問は期待に応えるものだった」と米印関係の深化を歓迎した。

 こうした中で、必ずしも歓迎ムードに終始していないのが10日付のヒンズー紙だ。社説で「米国経済の状況や、パキスタンを拠点としたテロリストの脅威、そして米中間の緊張によって、インドが米国の戦略に再び必要になった」と、オバマ政権がここにきてインド重視を強調する背景を冷静に解説する。

 自主外交を重んじる国、インドとしては米国の同盟国のように見られ、扱われることを好まない。米国一辺倒との印象を国際社会に与えたくないのだ。

 このため、ライバル・中国と米国の関係がぎくしゃくしているからといって、インドの外交目標を「米国の要請に合わせるのは極めて愚かだ」と同紙は論じ、国内で進みかねない米国傾斜の雰囲気にクギを刺す

 ヒンズー紙はまた、15日付の論評記事で、「オバマ氏の狙いはインドの経済界と若者、つまり中間層にあった」と“喝破”。今後のインド経済の鍵を握る中間層を抱き込めば、インドの将来は親米国になるに違いない−との計算が米国にはあるとの見方を示した。

 そして同時に、「国防や経済のつながりはインドの思考に依存症を起こす」可能性についても指摘し、特定の国と関係重視を進めればインドの外交政策にも影響を与えかねないと、警鐘を鳴らしている。(ニューデリー 田北真樹子)

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 ▼ウォールストリート・ジャーナル(米国)

厄介なセールスの旅だった

 「オバマ大統領は、米国ビジネスのチーフ・セールスマンという新たな役割を試した」。15日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルはオバマ氏のアジア歴訪をこう総括した。

 就任から2年、大統領とビジネス界との緊張関係が続いてきた。ところが今回、アジアの先々で「海外の市場開放により、数百万の米国の雇用が創出されると訴え、アジア太平洋の首脳らに米国製品を買うよう迫った」と指摘する。

 同紙によると、中間選挙での民主党の大敗をきっかけに、大統領は「急旋回した」(東アジア専門家)。米国の輸出促進と国際競争力の向上には、ビジネス界との関係改善が不可欠と悟ったのだという。

 ただし、大統領にとって「厄介(やっかい)な旅だった」との見方を同紙は示す。

 実際、G20首脳会議では、米国が提案した貿易不均衡是正の具体策に同意するよう各国を説得できず米連邦準備制度理事会FRB)による追加緩和を他国から批判された。米韓自由貿易協定(FTA)の交渉も決着できなかった。

 とはいうものの、今回のアジア歴訪は過去2年間の大統領の「闘争的な口調」とは打って変わり、ビジネス界に歩み寄る印象を与えたとも指摘。「問題は、その転換が政策の実行を伴うかだ」と問いかけている。

 経済面のみならず政治面の評価も厳しい。同紙は、オバマ大統領がインド訪問を終えた後の10日付電子版で、米シンクタンクAEIの日本部長、マイケル・オースリン氏のコラムを掲載。同氏はオバマ氏の歴訪に欠けているのは、アジアの将来と米国が果たす役割についての大局的な展望だ」と厳しく批判した。

 歴訪中の2国間会談、多国間協議を振り返っても、オバマ氏がリーダーシップを発揮できたとは言い難い。(ワシントン 渡辺浩生)

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 ▼環球時報(中国)

これほどの冷遇はない

 中国共産党機関紙、人民日報系の国際情報紙、環球時報は16日付の1面トップで、「アジア太平洋の旅は失敗」などの見出しを掲げ、オバマ大統領のアジア歴訪を特集する記事を載せた。

 記事はまず、「政治的な挫折感が米国に蔓延(まんえん)する」として、オバマ大統領がソウルで開かれたG20首脳会議の場で、中国に人民元の切り上げ要求を拒否されたほか、各国に米国製品を売り込もうとしたがほとんど相手にされなかったと紹介。その上で、「米国の指導者が国際舞台でこんなに冷遇されたことは少なく、米国人にとってショックだったに相違ない」と解説した。

 その次に、「オバマ大統領と米国の将来は不透明」として、今回の外交失敗により国内における大統領の求心力がますます低下し、2年後の再選戦略にも影響すると予測。「外交実績で内政の失点をカバーしようとしたが、残り2年の任期で、アフガニスタン、イランのみならず、中国、北朝鮮ミャンマーなどの問題で結果を出すことは決して容易ではない」と分析した。

 オバマ大統領はアジア歴訪を通じ、域内で影響力を高める中国を牽制(けんせい)するため、これまでより強硬姿勢をのぞかせつつ友好国・同盟国のてこ入れを進めようとした

 これに対し、同紙は「太平洋政策の転換を図る米国」として、米国人評論家の言葉などを引用しながら、大統領の対中政策転換を「過ちだ」と批判した。

 その理由として、「中国はかつてのソ連と違い、欧米諸国に対し侵略的ではなく、軍事的な脅威でもない。周辺国とも密接な貿易関係を維持している」と強調。「中国と対抗するために、米国と一緒に冷戦的な軍事同盟を組もうとするアジアの国はない」と断言した。(北京 矢板明夫)

うーん、さすがに中国紙の主張には同意しかねますけどね。でも時事通信でもオバマ大統領には批判的でした。
「赤っ恥」「三振」=オバマ大統領の歴訪酷評―米メディア

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101115-00000064-jij-int

 【ワシントン時事】オバマ米大統領は14日、中間選挙での与党民主党の歴史的大敗の衝撃が収まらぬ中で出発したアジア4カ国歴訪から帰国した。今回の歴訪では、選挙での手痛い敗北の失点を外交で挽回(ばんかい)できるかが注目されたが、米メディアの報道では「大統領への世界の視線が、この2年間でいかに厳しくなったかが示された」(ワシントン・ポスト紙)など酷評が相次いだ。

 「米国の大統領と財務長官が、ここまで総スカンを食らった経済サミットがかつてあっただろうか」。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は13日付紙面に「ソウルでの赤っ恥」と題する社説を掲載。大統領がソウルでの20カ国・地域(G20)首脳会合で、輸出拡大のため金融緩和によってドル安誘導していると非難を浴びたことや、米韓自由貿易協定(FTA)の批准に向けた合意をまとめられなかったことを厳しく批判した。

 ABCテレビもソウル訪問では、米韓FTA合意、中国の人民元安政策の転換、G20での対中包囲網形成という三つの目的を達成できなかったとし、「三振でアウトだ」と報じた。

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確かに産経新聞にこんな記事がありました。
「1対19」のG20 米“逆包囲網”で四面楚歌、深まる対立

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101111/fnc1011112020023-n1.htm


11日、首脳会談で握手するオバマ米大統領(左)と中国の胡錦濤国家主席(ロイター)

 11日にソウルで開幕した20カ国・地域(G20)首脳会議は、欧州と新興国による包囲網で、米国が「1対19」(中国国営新華社通信)という四面楚歌(そか)の状況に置かれている。前哨戦では追加金融緩和によるカネ余りを背景に、ドル安に誘導し、原油や金など資源高騰でインフレを世界に輸出しているとの批判が噴出。通貨安競争の回避と不均衡是正に向けたG20協調の不安要因となっている。

 米中対決は、軽いジャブで幕を開けた。

 「(両国には)世界経済の成長に特別な責務がある」。オバマ米大統領は11日の中国の胡錦濤国家主席との首脳会談の冒頭で、こう語った

 割安な人民元を武器に輸出で黒字をため込む中国を牽制(けんせい)する一方で、米国への批判も強く意識した発言とみられる。

 米国は当初、経常収支の「参考指針」を通じ、黒字国の中国に人民切り上げを迫る包囲網の構築を狙っていたが、そのシナリオはいまや完全に崩壊した。

 米国批判の急先鋒(せんぽう)は中国だ。財務省の朱光耀次官は8日に北京で行われた会見で、米国が3日に決めた追加金融緩和について、「主要な準備通貨の発行国が国際資本市場を安定させる責任を負っていることを米国は気付いていないようだ」と痛烈に批判

 11日付の共産党機関紙「人民日報」は、G20に参加する首脳に「米国の無責任なドル大量発行を制限する国際通貨枠組みを構築すべきだ」と提言した。

 新興国では、ブラジルのマンテガ財務相も10日にソウルで会見し、「米経済は世界で最も力強い経済だったが、もはやそうではない」と、ドル離れののろしを上げた。

 欧州からは、ドイツのメルケル首相が本国での同日の会見で、「新たなバブルを望んでいる人はいない」と牽制した。

 これに対し、オバマ大統領は9日付でG20首脳に書簡を送り、「(米経済が)力強く回復することが、最も重要な貢献だ」などと語り、ドル安誘導の意図を否定し、追加緩和への理解を求めた。その一方で、ドイツを名指しして、「輸出に大きく依存する国は、(米国経済の成長の)恩恵に浴している」と、反論「米国VS新興国」に加え、「米国VS欧州」の対立も深まるばかりだ。

 議長を務める韓国の李明博大統領は11日、首脳会談を前に、「依然として見解の相違が解消されていない」と危機感を表明。「現状のままでは世界経済は後退するしかない」と、各国に歩み寄りを要請した。

 G20内で孤立化するオバマ大統領は、G20首脳会議の成功に楽観的な見通しを示している。

 だが、他の新興国や欧州を巻き込み、対米包囲網を強いた中国と、人民元切り上げで成果をアピールしたい米国の溝は深い。G20の首脳声明で形だけ取り繕っても、再び「通貨安競争」が火を噴く懸念はぬぐえない。(ソウル 橋本亮、北京 矢板明夫)

赤字部分
「TPPに参加しないと日本は孤児になる」経団連会長、政府・与党に要望http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20101027/p1
のエントリの最後でとりあげた、
「日本はお人よし」G20“参考指針”で円高、輸出に足かせも
と関係ありそうですね。