テロ容疑者殺害は合法か 米地裁が親族の訴え却下

http://www.cnn.co.jp/usa/30001140.html
ワシントン(CNN) 米政府が国民を裁判にかけずに国外で殺害の標的とするのは合法なのか・・。米国がテロ容疑者として行方を追っているイスラム指導者アンワル・アウラキ師の父がこう問いかけた裁判が7日、米連邦地裁で門前払いになった。

裁判はアウラキ師の父ナセル・アウラキ氏がオバマ米大統領、ゲーツ国防長官、中央情報局(CIA)のパネッタ長官を相手取って起こしたもので、無人機によるアウラキ師の殺害を防ぐ訴えを起こしていた。

しかし、米連邦地裁のジョン・ベイツ裁判官は手続き上の理由から「厳しく、困難な問題」を含む今回の訴えを却下した。アウラキ氏には当事者適格がなく、そもそもこうした裁判で政府当局者の責任を問うことはできないと指摘。米政府の権限については、裁判所でなく選挙で選ばれた機関が決めることだと判断した。

原告側の弁護士を務めた米自由人権協会(ACLU)のジャミール・ジェファー氏は「裁判所の判断が正しいとすれば、政府は大統領が国家に対する脅威とみなした人物であれば誰であれ、独断で殺害の標的とする権限を有することになる」と批判した。

これは興味深い訴えですね。アウラキ師については
イエメン軍、アルカイダ掃討で部族との共同作戦を開始
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20101026/p2
イスラム教指導者アウラキ師の肉声か 対米聖戦を呼びかけ
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20100319/p2
イエメン政府、北部の反政府武装勢力との停戦を発表
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20100213/p2
を参照してください。

まぁ裁判にかければ殺していいのかと言う時点ですでに意見が分かれる問題だとは思うのですが、アメリカは裁判所が権力者に利用されないように陪審員の制度を持っていると思っていたので、この権力者よりの門前払いは驚きましたね。

裁判にかければ殺していいというのは普通の死刑の事ですが、EUなどでは廃止していますよね。僕はこの判断は正しいと思っています。国家が万人の万人に対する戦いから脱却するためには、国民は暴力を使う権利を国家に預け国家が国民を守ることを保障する必要があります。暴力を使う権利を受け取った国家が戦争や警察といった暴力を管理するわけです。

これは極論すれば悪い奴なら殺していいという事で、その小さいものが死刑、大きなものが戦争だと思っています。戦争をする権利を世界中からなくす事は容易ではないというか僕が生きてる間は多分そんな事は起こらないんだろうけど、悪い奴なら殺してもいいんだという事を小さなところから、なくしていく事は重要だと思っています。

ただ、国際社会を見る場合、

国際政治とは何か―地球社会における人間と秩序 (中公新書)

国際政治とは何か―地球社会における人間と秩序 (中公新書)

のp32によるように、「主権国家体制」「国際共同体」「世界市民主義」(上出の本の定義による用語)と言う考えがあり、左側から右側に徐々に移っていくのではないかと思うのですが、今のところせいぜい国際共同体(以前アメリカを非難する時国際共同体を無視したユニラテラリズムだという言葉が盛んに使われましたね)だと思います。これは国際共同体が認めるなら、国家主権を侵しても致し方ないという考えです。

ともかく悪い奴なら殺していいという考えは当分なくならないと僕は考えているわけですが、国際社会を見るとき上出の三つの見方が共存しうるという事を常に心がけ、場合によってつごうよっく使い分けることは避けなければいけません。まぁそうするとせいぜい出来るだけ多数の同意の下で殺していい奴を決めようという事になってしまうのかな。その意味では選挙で選ばれた機関が決めるべき事というのはそちらの方がまだましという程度のものでしかありません。しかも無人攻撃機はCIAも使っていたと記憶しているのですが…

以前書いたエントリ
<国連>米軍空爆による市民の犠牲増を懸念 非協力も批判
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20091029/p1
にあるように国連も不当な殺人ではないかと懸念し、米国は説明を拒否しているという状況です。せめて国連の支持のもとで殺す人間を決めて欲しいと言う願いはあります。