【ベトナム・インドシナ】メコンで存在感薄れる日本:ミャンマー開発で「乗り遅れ」も

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110701-00000007-nna-int

 中国や韓国企業、米国政府の存在感が高まるメコン地域5カ国で、日本の存在感が薄くなっている。ミャンマーとのコネクションが豊富なタイ工業連盟(FTI)のタニット副会長は、日本の官民がミャンマー・ダウェー深水港や経済特区開発計画にあまり関心を寄せていない現状について、「乗り遅れることのないように」と警告する。日本政府は先週末、各国も参加しての「グリーン・メコン・フォーラム」をバンコクで開催したが、メコン地域をどう発展させるかの明確な青写真はなく、メコン本流ダムなど地域の抱える問題に関与していく姿勢も見られなかった。【遠藤堂太】

 バンコクから西へ陸路で300キロ弱のダウェー。道路建設や港湾、工業団地の開発が進めば、タイやメコン諸国にとって新たな輸出港としての拠点になるほか、タイでは反対運動が起きて難しい石油化学プラントや火力発電所の建設を行い、石化製品や電力をタイに供給できるようになる。タイ投資委員会(BOI)が5日からの派遣を予定するダウェー視察団への申し込みは早々に締め切られるなど、タイ企業にとっても関心が高い。FTIのタニット副会長は、旧日本軍が建設したというタイ国境からミャンマーに伸びる道路でダウェーを訪問したこともある事情通。同副会長は、米国、ドイツ、中国、インドなど製造業を含め多くの企業がすでにダウェー開発への参加の意向を示している中で、「日本はダウェーにあまり関心を寄せておらず、乗り遅れることのないように」と警告した。とりわけ、雲南省からインド洋へ複数の出口を求める中国の企業が熱心だという。

 ■円借款は想定せず

 ダウェーの開発権をミャンマー政府から獲得したのは、タイのゼネコン最大手イタリアンタイ・デベロップメント(ITD)。開発には80億米ドル(6,400億円)の巨費が投じられる見込みだが、タニット副会長は、円借款の活用や政権が交代するたびに方針がブレるタイ政府の資金は考えていないという。タイはもはや民間の開発資金が大きいことが、その理由のようだ。また、民間企業の方が対応が早いこともある。

 「タイやベトナムでは円借款でインフラを整備し、それが日系製造業進出の呼び水となったが、ミャンマーではそのモデルは通用しそうもない」。6月に日本貿易振興機構ジェトロ)が東京で開催したITDの説明会に参加し、ダウェーに関心を寄せている企業の反応だ。説明会前後にジェトロがアレンジした商談会では、10社が商談を行った。ただ、どの企業も積極的にダウェー開発に参画しようというよりも、まずは話を聞く、といった感じのもよう。日本企業にとってダウェーの攻略は、進出・投資しようとするタイ企業をどう取り込むかがポイントとなりそうだ。

 昨年11月の選挙を経て、今年3月には軍事政権から新政権に移行したミャンマーだが、日本政府が円借款供与を再開するめどは立っていない菊田真紀子外務政務官が6月27〜29日にミャンマーを訪問したが、円借款再開に関しては日本からもミャンマー側からも発言はなかった。野党が議席の25%を占めるなど、共産党一党体制のベトナムに比べても民主化の度合いは一見高くなったミャンマーだが、欧米の経済制裁が続く限り、円借款の再開は難しいようだ。なお再開に際しては、ミャンマーが日本に対して滞納している円借款を何らかの形でいったん返済するか債務帳消しとする必要がある

 ■グリーンフォーラム、日本は見識不足

 外務省の石兼公博参事官が議長役となり行われたグリーン・メコン・フォーラム。昨年10月の第2回日メコン首脳会議で採択された今後10年間の行動計画の6項目の進展状況をフォローアップするというふれ込みだった。6項目は
(1)持続可能な森林経営
(2)水資源管理
(3)災害予防および災害への対処
(4)都市環境の改善
(5)生物多様性
(6)温室効果ガスの排出抑制・削減。

 ただ行動計画自体に目標設定がない上、文字だらけのプレゼン資料を読み上げるだけで時間をはるかに超過という国も多いほか、限られた質疑応答の時間も、質問には答えず自国の主張をまくしたてるといった場面も見られた。

 そうした中、水資源管理に関する質疑応答は流域のメコン5カ国(タイ、ラオスカンボジアミャンマーベトナム)と日本の代表が意見を交わす貴重な場だったが、日本のメコン地域に対する勉強不足を露呈する格好となった。メコン川の水質管理・汚染対策など各国共通の対策が必要な点について、日本側から「共通の規制はあるのか」という質問が出され、日本の外務省がメコン地域を研究していないとの印象を与えた。質問に対しては、カンボジアが「それがメコン流域の全ての国にとっての大きな課題だ。ただ実現には、時間がかかるだろう」と答えた。

 一方、ラオスメコン本流に建設を予定しているサイニャブリダムについて、カンボジアが質問。ラオスが「貧困削減のために必要だ」と発言したのに対し、タイが「カンボジアトンレサップ湖ベトナムメコンデルタの水位に大きく影響する」と述べて議論が白熱するかと思われた。しかし議論はそこで遮られ、日本企業のインフラ売り込みの宣伝に時間が費やされた後、次のセッションに移った。

 コミュニティー単位で雨水を飲料水などに利用するシステムをオーストラリアで実用化した日本企業は、水資源をダムのみに頼らず、資源を分散でき、ダム建設や海水の真水化よりも環境への負荷が少ないなどの利点を挙げたが、日本の都合による「インフラ輸出」の宣伝はいささか唐突な感を残した。

 ■メコン本流ダムに見解なし

 フォーラム終了後、外務省の担当者は「各国が問題を抱えていることが分かり、有意義だった」とコメントした。フォーラムの“成果”は今年の日メコン外相・首脳会議で報告されるという。「サイニャブリダム建設に関して日本政府の立場は」とのNNAの問いに対しては、「日本政府は、事業についての見解を言う立場はない」と述べるにとどめた

 同ダムはメコン下流国にとっては死活問題ともいえる事業で、東京電力も出資している。また、フォーラムには国際協力機構(JICA)や日本貿易振興機構ジェトロ)の代表者はおらず、オールジャパンとしての問題意識が共有されていない印象を持った。

 ■エリアワイド視点欠く

アジア開発銀行(ADB)は、メコン域内の国境をまたぐ観光開発や電力融通、国境までの鉄道や高速道路といったエリアワイド視点で事業計画を大メコン圏(GMS)の枠組みで進めている。中国も高速鉄道ラオス・タイまで開通させる方針が伝えられている。

 これらに対し、日本も民主党政権発足直後の2009年11月の第1回日メコン首脳会議では、グリーン・メコン構想と同時に、「3年間で5,000億円の政府開発援助(ODA)をメコン地域に投じる」と発表したが、これまでに具体的な案件は決まっていない。外務省担当者によると、「いくらをメコン地域全体の事業に供与したか現段階で計算していない」という。

 ベトナムだけでも高速鉄道や地下鉄、港湾、空港と大型案件が目白押しで、年間1,500億円のペースで円借款供与が約束されている。だが、域内連携の目玉となる円借款事業は、06年末の東西経済回廊(ベトナムラオス国道9号線)のラオス・タイ国境の第2メコン国際友好橋の開通が最後と言っても良い状況だ。ただ、バンコクハノイを陸路で結ぶルートの一部なのだが、日系企業による活用が期待ほど進んでおらず、見捨てられる恐れさえある。

 今年11月にはタイの一般財源で建設中の第3メコン国際友好橋(タイ・ナコンパノム〜ラオス・タケク)が開通する予定だ。ベトナム北中部ハティン省に抜けるベトナムラオス国道12号線もすでに整備されているため、「東西回廊=国道9号線を走行する車は今でも少ない。(ラオスの外港として期待される)ブンアン港に直結する12号線ルートの方がより有望だ」(タニット副会長)という。

 メコンの情勢が日々変化する中、日本の官民が最新情報を追いながら、東京本省・本社の判断で新たな戦略を構築していくことができるのか、その限界が見えつつあるようだ。

メコンに関しては2008年から出てました。
日本、メコン東西回廊に2000万ドル “南進”中国に対抗
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20080101/1199211678

2009年の頃は、第2メコン国際橋も調子がよかったようだったのですが。
【橋がつなぐ経済圏】(上)国際橋は経済統合の試金石
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20090411/1239419093

ミャンマーの制裁は解除されそうにもないという気がしています。でもよく知らないんですが、国連の制裁ではないと書いてありますね。
ASEANミャンマー制裁の解除か緩和を要求
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20110117/p1
置いていかれなければいいのですが。