中国、日本の東南アジア外交の、民主主義や人権(さらには法の支配)を否定。

まずは2013/01/18の日経新聞から図だけお借りしましょう。

そして2013/05/03の人民日報の記事なのですが、この内容を否定しています。

日本の「価値観外交」は東南アジアでは通用しない

人民網日本株式会社事業案内 更新時間:16:56 May 03 2013

 日本の安倍晋三首相は今年1月にASEAN3カ国を訪問した際、「東南アジア外交5原則」を発表した。これは今後一定期間の日本の東南アジア外交政策の柱と見られる。5原則で最も際だっているのがいわゆる「価値観外交」、すなわち自由、民主、基本的人権といった普遍的価値観を日本とASEANが共同で打ち固め、拡大するというものだ。

 記者の取材した東南アジア各国の学者は、いわゆる「価値観外交」は1970年代以降日本政府の遂行してきた「福田ドクトリン」に背くだけでなく、排他性が明確であるため、東南アジア諸国では通用しがたいとの認識を示した。

 安倍氏が東南アジア諸国で推し進めようとする価値観外交」の念頭にあるのは明らかに中国であり、日本メディアはこの点を隠し立てしていない。産経新聞と読売新聞は今年初めの論説で、強大化する中国に共同で対処するため、東南アジア諸国との協力を強化すべきとの考えを示した。

 日本外交を専門とするタイ・チュラロンコーン大学アジア研究所の研究員は「米国と日本は東南アジアで自らの利益に沿う政治と経済のルールを制定することを望んでいる。『価値観外交』は政治ルールの一部だ。だが東南アジアの人々は外部勢力の介入に慎重な姿勢だ」と指摘した。

 シンガポール国際問題研究所の戴尚志所長は4月9日、タイの英字紙ネイションへの寄稿で「日本が東南アジアへの関心を大幅に強めた背景には中国要因の後押しがある」と指摘。「東南アジアの政府や経済界に強い関心を示すことは、日本が東南アジアで新たなパートナーシップを築く助けとなりうるが、中国に焦点を当ててはならない」と戒めた。

 シンガポール国立大学東アジア研究所の趙洪シニアフェローは「東南アジアの大多数の国々は日本に付き従って騒ぐことを望んでおらず、いくつかのASEANの加盟国は中国との良好な関係を望んでいる。東南アジア諸国は東南アジアで日本の影響力が低下する一方で、中国は一挙手一投足が全局面に影響を及ぼす地位にあることをすでに意識している」と指摘した。

 安倍氏の「価値観外交」に対する印象は東南アジアの学界でも良くなく、「価値観外交」は政治的道具だと考える学者が少なくない。「東南アジアは日本からの投資も中国からの投資も必要としている。経済分野での中日の競争は東南アジア諸国に利益をもたらすかもしれない。だが東南アジア諸国は政治分野での中日の競争に巻き込まれることは望んでいない。これは東南アジア諸国の利益に合致しない。したがって価値観外交は東南アジアでは歓迎されない」と前出のチュラロンコーン大学の研究員は指摘。「東南アジアで中国は日本より多くの『文化資本』を持つ。タイを例に取ると、多くのタイ人は中国人を祖先に持ち、中国に対して一体感を抱きやすい。一方、日本との関係は商業分野に限定されやすく、深まっていくことがない」と述べた。

日本の「価値観外交」は東南アジアでは通用しない (2)

 1977年8月、東南アジア5カ国を歴訪した日本の福田赳夫首相はフィリピンの首都マニラで東南アジア政策の3つの基本原則「福田ドクトリン」を発表した。福田ドクトリンは1970年代以降の日本の東南アジア政策の柱となった。福田ドクトリンは「日本は軍事大国とならず、世界の平和と繁栄に貢献する」「日本は政治、経済、社会、文化など各分野でアジア諸国との交流を強化し、真の友人となり、心と心の触れあう信頼関係を構築する」「日本は対等な協力者の立場で東南アジア地域全体の平和と繁栄の促進に努める」との3点からなる。

 日本の多くの学者は、福田氏が日本は決して再び軍事大国にならないと約束し、世界の平和への貢献に専念する意向を表明したことで、日本と東南アジアとの協力が真に促進されたと指摘。今日の多くの日本企業の東南アジアでの発展も、依然福田ドクトリンの恩恵を被っているとの認識を示した。

 シンガポール国立大学東アジア研究の陳剛研究員は「福田ドクトリンは日本が再び軍事大国の道を歩むことへの東南アジア諸国の懸念を打ち消し、日本企業の東南アジア進出を助けた。福田氏は東南アジア諸国との関係を修復するため、軍事大国にはならない方針を表明した。だが安倍氏の打ち出した価値観外交には中国と領土紛争を抱える国を抱き込み、中国を牽制し均衡を図る意図がある」と指摘した。

 日本のある学者は、福田ドクトリンの登場は、1974年に田中角栄首相が東南アジア5カ国を歴訪した際に大規模な反日デモに遭ったことと直接関係があると指摘した。福田氏のマニラ演説の起草に参加した枝村純郎元駐インドネシア大使は「田中角栄が東南アジア訪問時に遭った反日デモによって日本人は問題の深刻性を認識した。福田ドクトリンはトヨタ車が焼かれる洗礼の中で生まれたものだ」と指摘した。

 日本が東南アジアを侵略した歴史について日本国内には2つの全く異なる見方がある。1つは東南アジア諸国を助けて欧米植民地主義者を追い払ったという「解放史観」。もう1つは東南アジア侵略は罪だとする「贖罪史観」だ。東京大学の保城広至准教授によると、田中角栄氏の1974年の東南アジア歴訪までは「解放史観」が主流だった。例えば吉田茂元首相はフィリピンと戦後賠償問題を話し合った際、賠償金は贖罪ではなく日本経済発展のための投資との考えを堅持した。「田中角栄が東南アジアで遭遇した出来事によって、日本は東南アジア諸国に強烈な反日感情があることを目の当たりにした」。その後の日本が東南アジア政策を策定する際に、贖罪意識は大きな影響を与えた。

ちょっとここで切りますけど1974年までは解放史観しかなかったって本当ですかね。生まれる前の話なのでよく分かりませんが。

 趙氏によると、現在日本は1970年代の福田ドクトリンに背いている。福田ドクトリンには排他性がないが、安倍氏の打ち出した「東南アジア外交5原則」は攻撃性を持つ。「もし日本が福田ドクトリンに立ち戻ることができれば、東南アジアの平和と安定、および東南アジアでの日本の発展の双方にメリットがある」。趙氏は「安倍氏の推し進める価値観外交は実行レベルで大きな困難を抱える。東南アジア各国には各々自らの利益があり、価値観外交によって抱き込むことはできない」と指摘した。(編集NA)

 「人民網日本語版」2013年5月3日

まぁ中国側は日本と中国どちらか選べと言われると(ってそうは言ってないと思うんですけど…)ASEANは困るという意見を集めているようですね。しかし日本が言っているのは「力でなく法が支配する自由で開かれた海洋は公共財で全力で守る」という事なのですが。
2013/01/18

首相が東南アジア新5原則 中国をけん制海洋紛争巡り「法の支配」前面に
 【ジャカルタ佐藤賢安倍晋三首相は18日、インドネシアのユドヨノ大統領との共同記者会見で、東南アジア外交の新しい5原則を明らかにした。民主主義や人権といった普遍的価値観を拡大する「価値観外交」を推進する考えを表明。中国の海洋進出を念頭に海洋をめぐる紛争解決方法として「法の支配」を訴え、中国をけん制した。

 首相は5原則の第1として「東南アジア諸国連合ASEAN)と共に自由民主主義、基本的人権などの普遍的価値の定着と拡大にともに努力する」と強調。第2に「力でなく法が支配する自由で開かれた海洋は公共財で全力で守る」と述べ、「米国のアジア重視を歓迎する」とした。(1)貿易・投資の促進(2)多様な文化・伝統(3)次世代交流の活発化――も挙げた。

 首相は当初、5原則を外交演説で明らかにする予定だったが、アルジェリア人質事件を受けて演説を取りやめ、代わりに共同記者会見で説明した。

 首相周辺によると、就任後初めての外国訪問となった東南アジア歴訪で首相が最も発したかったメッセージは、日米同盟の強化をテコにアジア各国との多国間連携を深める外交戦略だ。首相は各国首脳との会談で、日米同盟強化の方針を伝えた。2国間関係を主軸としていたアジア外交に域外の米国を絡ませると同時に、多国間の視座を加えることに主眼を置く。

 共同記者会見で首相は「台頭する中国は経済面では日本に間違いなくプラスになるが、同時に、国際社会で責任ある行動を取っていくことも求めたい」と中国をけん制。ユドヨノ大統領も「軍事力による解決はあってはならない」と同調した。

 中国と経済関係が強まる東南アジア各国には中国を刺激するのを避ける傾向もあり、日中の摩擦拡大を懸念する声もある。

 日中関係について安倍首相は会談で「日本にとって最も重要な2国間関係の一つだ。引き続き冷静に対応し、意思疎通を維持、強化していく」とも強調。中国との関係改善にも配慮する姿勢を見せて理解を求めた。ただ沖縄県尖閣諸島の問題で対立して改善の糸口はなお見えず、対中関係の修復は大きな課題だ。

 首相が目指す日米同盟の強化でも具体策が問われる。首相は集団的自衛権の行使容認に向けた検討を近く再始動させる。だが米国が望む環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加は自民党内の慎重論が強く、早期の参加表明にはハードルが高い。歴史認識見直しの検討を急げば、米国が首相に不信感を抱く可能性もある。

まぁ日本は中国に対して人権問題で発言したことはおそらく今までなかったようですので、それだけで中国がピリピリ来ているというのがあるんでしょうね。
2011/11/07

日本も人権問題で発言を=追徴課税に反発、当局を訴え―艾未未氏インタビュー・中国

 【北京時事】中国税務当局から巨額追徴課税の支払いを迫られている著名芸術家で人権活動家の艾未未氏(54)が7日までに北京市内で時事通信のインタビューに応じた。艾氏は「日本は民主国家であり、人権問題を対話の基礎にすべきだ」と語る一方、「私はこれまで中国の人権問題に対して日本がどういう態度なのか聞いたことがない」と述べ、日本政府も欧米と同様に中国の人権問題で発言するよう求めた。

 ネット上で政府批判を展開し続けた艾氏は4月に公安当局に拘束された。「81日間で、50回以上の尋問を受け、主に国家政権転覆扇動に関して聞かれた」(艾氏)。しかし解放後に問われたのは拘束中に2回しか聞かれなかった脱税問題で、今月1日になって北京の税務当局が同氏の関係する会社に追徴課税や罰金などとして1522万元(約1億8700万円)の支払いを命じた。

 艾氏はインタビューで「会社の帳簿を見たことがない」と関与を否定。しかし「支払わないと納税拒否罪になる」とし、著名な詩人である父親(故人)の住まいを担保に支払い、税務当局の決定を不服として訴えを起こすことを決定した。

 同氏は「税務、公安両当局と裁判所は『一家』だ」として、訴えは無意味だとしながらも、「全世界に誰が間違っているか知らせなければならない。私が声を上げなければ、多くの人が同じ危険な目に遭う」と述べ、「(中国当局の)下品なやり方」と徹底的に闘う方針を示した。

 ネット上では艾氏を支援するため、若者らが同氏の債権者になって「艾未未に金を貸そう」運動が巻き起こり、7日午前時点で振り込みや郵送などで1万7598人から466万2800元(約5700万円)以上が集まった。 

自由民主主義にしても選挙がある国をあげると、タイ、インドネシアミャンマーベトナムカンボジア、マレーシア、ラオスなど。ブルネイも国王の権力が強いようですが、公選議員も居るようで。全くないといえるのは中国くらいのようです。