焼身自殺連鎖 アラブ諸国、非難と同情 チュニジア政変後

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110119/mds1101191848020-n1.htm
2011.1.19 18:41


チュニジアのベンアリ大統領(AP=共同)

若者の焼身自殺に端を発したチュニジアの政変後、エジプトをはじめとするアラブ諸国焼身自殺を図る者が相次いでいる。自殺を宗教上の大罪と考えるイスラム教徒が多数派の国々で、抗議の手段として自殺を選ぶことはどう受け止められているのか。(カイロ 大内清)

 「イスラムでは、いかなる理由があっても自殺は許されない」

 カイロにあるイスラムスンニ派最高権威アズハル機構は18日、声明を出し、イスラム教徒にとっての常識を強調した。

 しかし現実にエジプトでは17、18日の2日間で3人が生活苦などへの抗議から自身に火をつけ1人が死亡。アルジェリアでは19日までの1週間余で7人が、モーリタニアでも1人が同様の方法で自殺を図った

 アズハルがわざわざ声明を発表したのも、自殺の連鎖とそれによって引き起こされる社会不安を懸念しているからにほかならない。

 焼身自殺を図った人たちの心情についてカイロ大のアマニ・マサウード助教授(社会学)は「不正に対する抵抗として死ぬことは、いわば『殉教』だと考え正当化しているのではないか」と分析する。

 エジプトでは約30年間にわたりムバラク大統領と与党・国民民主党が権力を掌握、強大な警察力によって治安維持におおむね成功してきた半面、しばしば恣意(しい)的な逮捕や拷問も指摘される。経済自由化が加速した2000年代以降は貧富の差が一段と広がり、人口増加や急速な都市化で失業問題も深刻化している。

 同様の問題はアラブ諸国の多くが抱えており、国民には閉塞(へいそく)感が漂う。そんな中での自殺は強権的な政権に対する正当な「対抗手段」というわけだ。そこには、多くのイスラム過激派組織が、自爆テロ実行者を自殺者ではなくジハード(聖戦)の殉教者として称賛する心理に通じるものがある

 実はイスラム社会でも自殺は珍しくない、とする向きもある。エジプトの野党系紙アルワフド(電子版)は、結婚資金が作れないことを悲観し自殺した若者の例などを列挙し、自殺のニュースは「一時的に紙面をにぎわしても、じきに消えるものだ」と論じた上で、エジプトで自殺問題が大規模な暴動に発展する可能性は低いとの見方を示した。

 ただ「やっかいなのは生活苦を訴えての自殺の場合、一方的に批判はしづらいことだ」とマサウード助教授は指摘する。「多くの人が同じ境遇にあり、自殺者への同情も生まれる。(一連の焼身自殺に対する)人々の気持ちは非難と共感が入り交じったものだろう」と語り、今後どのような反応が生まれるかは予想できないとしている。

関連ニュース

・ 日本語学科記念しシンポ 1000人の卒業生輩出したカイロ大
・ エジプトでまた焼身自殺未遂 チュニジア政変の影響か
・ 【チュニジア政権崩壊】アラブで抗議デモ連鎖 焼身自殺未遂も続発
・ 暫定大統領と首相が与党を離党 デモ沈静化図る チュニジア
チュニジア新政権「変化」アピール 野党指導者、ブロガーも入閣

中東でチュニジアの影響?何系の人が何を主張しているのか?
http://d.hatena.ne.jp/navi-area26-10/20110119/p2
では、イエメンとエジプトの例をとりあげました。